ませたせうぢよたち 其の弐
私は至極普通の家庭に生まれた者でございます。
頭の出来は並。顔立ち、運動の能力に至りては滅相もなき有様。
ただ一つ、繪ばかりは他より些か長けて居りましたの─
ただ小さき頃より、ずっと筆を握りて描いて居りましたゆゑ─
私の良き友には、繪を描く者が多く居ります。勿論上手な者が多くございますわ。けれど其のやうな友によく云はれますのは、繪の上手なのが羨ましいだとか、如何やうにすれば上達するのか、などと云ふことでございます。其のやうな人には軽く助言を致したりもしますが、大概は描き続けること、で片して居ります。いえ、実際それが一番なのでございます。
ただ能く思ふのは環境は私より勝りて居るはずなのに、骨を折らずして羨む人が居ることです。
私は近所のお店の價値のお安い帳面と筆で描いて居りますが、其の子はお家が富裕で、親は其の子に質の宜しい帳面に書き心地の善き筆を渡して居ります。努力を積めば善き繪描きになれますのに、腹立たしくと能く思ふのです。
もう一つ腹が立ちますのは自分が努力してゐぬのに親が金持ちなるが故に毎月お小遣ひを沢山貰ひたり、美しき簪をたくさん買って貰うて居る子が居ることです。
私にも欲しき物はございます。別にお家が貧しい訳ではございませんが、沢山貰へると云ふことに腹が立つのです。私は家でお手伝ひを致さねば毎月お小遣ひを貰ふことは無いに。
だから私は決心いたしましたの。決して其のやうな努力してゐぬのに幸せな子を恨みて終はるのではなく、其のやうな、私の腹の立つやうな子にはならぬやう、大人になりましたなら私は働き過ぎと云はれる位には沢山働き、自分で手に入れましたお金で幸せになりませう。と、質の宜しい帳面も書き心地の善き筆も美しき簪も、すべて自分の努力で買い求め、自分の努力で繪を上手になって見せませう。と。




