表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
晴霞の王  作者: 瀬戸榛名
第2章|揺れる世界

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

37/54

第36話 エリとセフィ(1)

「……全く、減らないわね」


 書類の山を前に、エレニアはそっとため息をついた。

 机の上には、各地の被害報告や、復興支援の進捗書類が積まれている。


 ペンを動かしながら、ふと視線が止まる。

 戦地へと向かうセフィリアの顔が浮かんだ。何度も、何度も見た姿。


 セフィリアはは今も戦いと復興のために、休みなく国中を飛び回っている。彼女は、相変わらず強い。──自分と違って。


 そう考えて、またため息をつく。

 疲れているのだ、と言い聞かせる。毎日多くの負傷兵を迎え、被害報告を見続ける日々は、静かに彼女に疲労を蓄積させていた。無力な自分から、目を背けたくなる。


 今は、自分にできることをやるしかない。エレニアはまた、積まれた書類の山に目を戻した。

 紙の擦れる音と、ペンの走る音だけが、静かな部屋に響く。


 コンコン、と扉がノックされる明るい音が聞こえた。


「どうぞ」


 エレニアが顔を上げると、セフィリアが扉の向こうからこちらを見ていた。


「エレニア、久々に一緒に出ないか?」


 エレニアは驚いた表情を見せる。セフィリアが自分の部屋を訪ねて来るのは珍しい。多忙な彼女は大抵誰かにことづけを頼むか、あるいは自室にエレニアを呼びつけるばかりだった。


「セフィ? 珍しいわね、どうしたの?」


「たまにはいいだろう、体が空いたんだ。息抜きだよ」


 セフィリアは部屋に入りエレニアのデスクの前に立つと、エレニアが書いていた書類を一枚手にとって眺める。


「……ハレか。復興にはまだかかりそうか?」


「そうね、あそこはかなり被害が大きかったから。予算のやりくりが大変よ」


 セフィリアの頭には、地下牢で対峙したリヴェルの姿が浮かぶ。そしてそれをすぐに打ち消す。


「それで、どうだ? 忙しいか?」


「いいえ、行きましょう。一緒に街に行くなんて久しぶりね。近頃のあなたはずっと忙しくしてたから」


 エレニアはデスクの上をさっと整えると席を立った。


***


 王都は晴天だった。二人は、国民に気づかれないよう、フードで顔を隠し市場を歩く。


「ねえ、覚えてる? 初めて会った時のこと」


「ああ、もちろんだよ。同じ年頃の子供とは初めて話したから、嬉しかったな」


 セフィリアは楽しそうに笑う。


「そんなふうには見えなかったけれど。あの時から、セフィは落ち着いていたわよね、驚いた」


「そうかな。戸惑っていたんだよ。友達の一人もいなかったからね。今でも、友達だなんて言えるのはエリだけだけれど」


 そう、あの頃は、『友達』というのがなんなのかも分かっていなかった。

 一人きりだった幼いセフィリアにとって、エレニアは自分の前に現れた、まさしくただ一人の救いだった。

 何があっても、彼女だけは守らなければならない。今でも彼女は、セフィリアの心を支える確かな光だ。


「光栄なことね」

 エレニアは笑顔で応える。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ