表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
晴霞の王  作者: 瀬戸榛名
第2章|揺れる世界

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
38/66

第37話 エリとセフィ(2)

 エレニアとセフィリアが初めて出会ったのは、二人が六歳の頃。

 ロゼルトによる侵攻の翌年、セフィリアの教育係を務めていたゼドが、親族であるエレニアを城へと連れてきたのだった。


 レティシアの従妹弟にあたる彼女の両親も、先の戦いで命を落とし、エレニアもまた遠縁の親戚の元に預けられていた。

 そんな彼女たちが、良き話相手になればというゼドの思いだった。


 王城の庭園。生い茂る木の間、エレニアはゼドに連れられ、中庭へと続く小道を歩いていた。

 緊張しつつも、彼女は背筋を伸ばす。

 視線の先、庭の中央には、白銀の髪を持つ少女が一人、すっと立っていた。


「あなたがエレニア?」


 庭に立つ少女は、エレニアに静かに問いかけた。


 セフィリア。初めて会う彼女は、次代の女王として生まれ、母レティシアを失った今は、王位を継ぎ、壊れた王城に、独りで暮らしていると聞いている。


 エレニアは、両親の訃報を受け、泣き暮らしていた少し前の自分を思い出す。

 こんなところに一人きり、それはどんな気持ちだろう?


「そうよ。あなたはセフィリアね?」


「……ああ」


 セフィリアはエレニアを見つめる。

 瑠璃色の、綺麗な瞳。しかしその目は、どこか冷たい雰囲気を宿していた。


(なんだか……大人みたい)


 同じ年のはずなのに、セフィリアは落ち着きすぎている。その不思議な感覚に、エレニアは興味を持った。

 少し戸惑うものの、気にせず一歩近づく。


「ねえ、友達になりましょう!」


「……友達?」


 セフィリアの瞳がわずかに揺れる。そんな言葉は、自分には関係のないものだと思っていた。


「私には、分からないんだ、友達というのがなんなのか」


 エレニアは驚いて目を丸くする。


「セフィリアは、今まで友達はいなかったの?」


 セフィリアは、ゆっくりと首を横に振る。


「友達って……一緒にお話したり、遊んだり、助け合ったりするものよ!」


「遊ぶ?」


「そう! じゃあ、私があなたの初めての友達ね!」


 エレニアはにっこり笑って、セフィリアの手を取った。

 この落ち着いた新しい友人のことが、もう好きになりつつあった。


 セフィリアは驚いたようにエレニアの顔を見つめる。ゼドはその様子を、少し離れたところから微笑ましく眺めていた。


「でも私は、遊んでなんていられない」


 セフィリアはなおも険しい顔を崩さない。

 遊ぶ時間があったら学ぶようにと、言い聞かせられてきた。

 それに今、この国はぼろぼろだ。城も政治も、立て直さねばならない。遊んでいる暇はない。


「何言ってるの、私と遊びましょう!」


 エレニアは気にせずにセフィリアの手を引いた。


「まずはかくれんぼ! 私が鬼ね! セフィリアはどこかに隠れて!」


 セフィリアはまだ少し戸惑ったような表情をしていたが、やがて小さくうなずいた。


「……分かった」


 それが、二人の始まりだった。


 以来、エレニアはたびたび城を訪れ、二人で多くの時を過ごした。エレニアの明るい性格にセフィリアは次第に心を許すようになる。

 同じ歳の二人は、瞬く間に仲良くなった。


 十年間、エレニアは、いつも一番近くでセフィリアを見てきた。国を背負って戦う彼女の姿を、見守ってきた。


 二人はお互いに一番の友人にして、一番の相棒。そして孤独な王であるセフィリアにとって、彼女の存在は、大きな支えだった。

 彼女はセフィリアの心の唯一の光。守るべきこの国の象徴、一番の指針。


 セフィリアは、隣を歩くエレニアの横顔を盗み見る。

 今でも、戦いから城に帰って彼女の顔を見るたびに、彼女は国を守る決意を確かにする。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ