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可愛いい弟を愛でるには  作者: ダイフク
9/14

9.とある女子生徒の決意



この学園には、女子の人気を二分する存在がいる。


レイモンド・ベキャモント様

キース・サバティーニ様


レイモンド様は、氷の貴公子と呼ばれる美形で、輝くプラチナブロンドが、月の光のよう。

かたや、キース様は、艶やかな黒髪は、光を弾いて、紫の色をするみせる。まるで黒豹のように野性的な魅力溢れる方。


入学当時から、同級生はもとより、先輩達にも注目されているお二人。

ベキャモントとサバティーニと言えば、この国で名門中の名門。

サバティーニは一時期傾きかけたとの噂もあったけど、現在は順風満帆。

女子の注目が集まるのは当然だ。



レイモンド様は、夜会では、穏やかな笑みを浮かべる、白薔薇の令息なのに、学園内では、ニコリともされない、氷のような方。


1目でいいから、夜会での笑顔が見てみたいと、何人の令嬢がチャレンジして、散っていったか。

その夜会すら、ほとんど参加が無いと言うのに。


それでもふとした拍子に上を見上げ、前髪をかきあげて、唇に笑みを浮かべる姿を見てしまった令嬢は、彼の下僕となるしかない。



キース様は、レイモンド様ほど冷たく凍った感じでは、ないが、私たちに対する無関心さでは、レイモンド様に勝るとも劣らない。


男子生徒と、休み時間に興じている姿は、まるで少年のような初々しさがあり、私達の胸はその笑顔に高鳴るばかり。


それなのに、女子生徒には、つれなくて、やはり何人もが玉砕した。彼の返事はいつも同じ。


好きな人がいるから。


婚約もしていない彼が好きな人は誰なんだろう?




そして、進級を前にしたある日、私は見てしまった。



水色の鳥を肩に乗せたキース様に、誘われるように近寄るレイモンド様。

そして、二人の距離が近づき、レイモンド様の手が伸びて、キース様の肩へ。


するりとかわすキース様、追うレイモンド様。

ついには、両手で鳥ごとキース様を抱きしめるその姿。

ああ、そういう事だったんだと、目の前の素晴らしいお姿に感動した。


私達が入り込めない世界を、お二人は共有されていたのだ。私はこの姿を心に留め、お二人を応援しよう。

それだけが私達に許される全てなのだから。



*****



お兄様とキースの姿が見たい私は、図書室で見つけた、マナで作り出す鳥を必死に練習した。


それが鳥の形を取るまでに2週間。


やっと羽ばたき、空を飛べるようになるのに1ヶ月を要した。

そして、鳥の目を通して、映像を私に届けるには、更に2ヶ月。


ついに、ついに鳥が完成した。


私は、その水色の鳥を離れた学園に飛ばし、ベッドに横になって、鳥と視界を共有する。

大空を飛び、上から見下ろす、初めて見る景色は素晴らしかった。


大きな木の上に羽を休め、キョロキョロと見回す。


あ、お兄様。


すぐそばの気の下に腰を下ろし、本を読むお兄様。

私の視線に気づいたのかしら。前髪をかきあげながら、鳥を見上げて、笑みを浮かべられた。


これは、絶対にバレてるわね。

お兄様ったら、鋭すぎます。

でも、気づいて貰えたのは嬉しい。もっと練習しよう。



お兄様達が2年に進級する時が近づいた。

あとまだ一年、同じ学園に通う事ができない。


でも、私の鳥は画期的な進化を遂げた。なんと、喋ることができるようになった。


これで、見ているだけでなく、寂しくなったら、お話もできる。なんて素敵なんでしょう。



キースの元に飛ばした鳥を、彼の肩にとまらせた。


「キース、レイラよ。」

「姉さん、見るだけじゃなくて、話せるようになったの?」

「やっぱり見てるの、気づいてたのね。」

「もちろん。」


「レイラの声がする。」


いつの間にか、お兄様がキースの側に来ていた。


「レイラ、どうして、私じゃないの?」


そう言いながら、手を伸ばす。


「触るなレイモンド。今日の姉さんは、俺のもの。」


するりと逃げて、お兄様の手をかわす。


「レイラの全ては私のもの。初めての会話なのに酷いじゃないか。」


キースが逃げるので、結局、捕まえられて、私の鳥は、お兄様の手の中へ。

奪われまいとするキースとの攻防がおかしくて、私はベッドの中で、一人大笑いをしてしまった。


「今度から、キースの所に行く前に、私の所に来ること。約束してね。レイラ。」


お兄様のおねだりに私は笑いながら頷いた。


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