エピローグ 動き出す者たちと翠色の夜明け
船が炎上している。
「えろう気張りはるなぁ」
「くっ! まだ、負けてません!」
騎士甲冑の女性が立ち上がろうとするが、
「さいなら、騎士はん」
海に放り投げられる。
「おっしょはんおらんなすって自由さかい、楽しまな損やわぁ」
狐のモフモフとした耳と尻尾を揺らして佇む、着物を着た少女。
〈やるじゃない〉
「たぬきはんは着いてくるけ?」
〈たぬきでもないし、メロスって名前があるわよ。まあ、行くあてもないからね。ご主人を探すついでにね〉
「そりゃあ、まあおおきに。メロスはん」
傍らにはアライグマが。
一人と一匹だけになった船は、進路を変え、人の大陸へ向かう。
行く先を見据えながら、ヤンチャな弟子狐は妖艶に微笑んでいる。
◇ ◇ ◇ ◇
どこかの路地裏。
「少年はあっちに連れてかれたか。まあいい。もう少し布石を打ってからヘンテも行くかね」
怪しい老婆は小さな子供に姿を変える。小さくなった体で、荷台を引く。
荷台には点滅している実や、古びた装備品が並んでいる。
◇ ◇ ◇ ◇
「お父様……」
暗い牢屋の中に、少女が鎖に繋がれている。
「必ずやこのわたくしが救ってみせます。どうか、ご無事で……」
魔王の娘は悔し涙で顔を濡らしながら、脱獄の作戦を脳内で練る。
「誰か、たすけて……」
不可能に近いという結論に至り、助けを求める。しかし、その声は誰にも届いていない。
◇ ◇ ◇ ◇
「号外! 号外!」
王都にて、新聞が配られている。
「おいおいまじかよ」「うわ、俺らの出番だな」「プレイヤーが多い方が勝つだろ、これ」
新聞には、デカデカと『王国VS連邦国か?』と見出しになっている。
戦火は、留まることを知らない。
◇ ◇ ◇ ◇
帝国の執務室で話している人間が。
「そろそろ動かねばならないのじゃ」
「では、単騎で?」
「いや、供を選定しようと思っているのじゃ」
青く長い髪をかき上げる。
「皇帝御前試合いや、御前大会を開催するのじゃ!」
凛々しい声が執務室に響き渡る。
◇ ◇ ◇ ◇
「ええ!? 皆さんが、あの、竜の天敵ですか!?」
「いいから、早く通行証頂戴な」
「藍色の髪、貴方が、竜殺しのマリーさんですね! ファンです!」
よくあるギルドの受付でマリーは手をにぎられる。
「いいから、はーやーくー」
後ろでマリーの仲間が急かす。
「あ、すみません。…………え!? これって」
「何よ、ランク的に問題無いはずよ?」
「そ、そうですね。本当に、お気をつけてください」
「分かってるわよ」
マリーは受付嬢から通行証を受け取る。
難易度SS・大図書迷宮と書かれた通行証である。
◇ ◇ ◇ ◇
クロが大図書迷宮に閉じ込められ、クラン対抗型の第三回イベントができずに、ついに第四陣の参入の日になった。
窓から日が昇るのを眺めながら、一人の少女が専用機器を被る。
少女の名は、椙江 翠。
新たな時代の幕開けが、彼女のスイッチ一つで始まる。
「ふんふん♪」
様々な者の意思が錯綜する世界へ、無邪気に飛び込む。
◇ ◇ ◇ ◇
「ゲームは始まったばかりだ」
誰かが、そう言った。
・【Alternative World Online】翠の天使、VR世界で徘徊中【ミドリ】に続きます。
・完結にしますが、気が向いたらターニングポイントからのifルート書くつもりです。
・主題〈過去〉
ここまで読んでくださり、ありがとうございます!
今作は現在を軸に過去を主題とした作品でした。次作品では、今作少なかった会話や観光パートを増やす予定です。
本作は大体30万文字、本だと三冊分なので、量的には次作品の番外編みたいな感じです。
大量に伏線や謎を残していますが、ちゃんと今後回収していきます。
今のところ、次作品が終わり次第クロの父を主人公とした運営の方も書こうと思ってます。
つまりAWOシリーズとして三作品になる予定です!
お楽しみに!




