137話 黒幕と黒幕(仮)
「ああ、忘れていたよ。ほいっ。どうだい?」
「何の用だよ?」
ソフィが伏せさせられている俺の前にしゃがむ。
「当分会えなくなるだろうから、お仲間に挨拶するぐらいの時間は作ろうと思ってね」
なるほどね。今度は囚われのお姫様ポジションになるのか。連れて行くって言ってたしな。
「そりゃどうも。ついでに動けるようにもして欲しい」
「ほいほーい」
拘束が解かれる。立ち上がって、皆の前に行く。
「今度こそ自力で何とかする」
マツが凄い剣幕で睨んでくる。最後まで聞けや。
「って前までなら言ってたけど、今は仲間にも頼るよ。一人の限界も、仲間がいる背中の安心感も、合わせた力の強さもよく知れたから」
右手の拳にありったけの魔力を込める。
「ありがとう。そして、また頼むよ。今度はゆっくりでいい。もっと強くなって、こいつを倒すぞ!」
振り向きざまにストレートを。
「はあ、つまらないね。もっとギスギスすればいいのに」
やっぱりダメか。見えない壁に防がれている。
だか、まだ切り札がある。
ストレージから布都御魂を取り出し、突き出す。
「まだそんなところに入っていたのか。道理で見えなかったわけだ」
止められ、刀身に触れられ、砕け散る。これも無理か。
「【スリップ】」
せめて転けさせるぐらい……だめか。一瞬で背後に回られた。
「南の孤島に来れば、僕のところまで来れるから、精々頑張るといいよ」
もう転移させられるか。
最後に、
「また会おう」
景色が変わる。
階段の踊り場だろうか。
――PIPI
『リスポーン地点が更新されました』
いつの間にか手を取られ、無理矢理更新されていた。速すぎて見えん。
「ここは僕の国の大図書迷宮。難易度SSの、世界で二番目に難しいダンジョンだよ」
ダンジョンとかあったのか。俺が知らないだけなのか?
「ダンジョンは僕の国にしか無いよ。僕が作ったものだからね」
「何のために?」
「教えてもいいけど、それはつまらないだろう? 自分で答えを見つけなよ」
いや、そんなに興味は無いけど。
「ともかく、君はここから出て僕を見つけて殺せば勝ち。それだけだよ」
そりゃあ、分かりやすくていいな。こいつを倒せば、真の黒幕になれる。
中途半端な、黒幕(仮)的なのを終わらせられる。
「いい殺意だよ。頑張りたまえ」
「うっざ」
上から目線きらーい。
「ちなみに、ここは最下層の前の階段だから、ここを下りるとボスがいて、倒すと出れるよ。上に上がって戻るのもいいけどね」
「ご親切にどうも」
下一択だ。
「じゃあねー」
ソフィは消えた。ボス攻略といきますかー。すぐ出て、ギャフンと言わせてやんよ。
階段を駆け下りる。
下りきると、だだっ広い部屋が広がっていた。
真ん中には巨大でカラフルな蝶がいる。種類は分からないが、虫を置いたのは失敗だったな。瞬殺だ。
部屋に足を踏み入れ――
「は?」
戻っている。リスポーン地点に。
「死んだ?」
意味が分からない。こっちが瞬殺されたのか?
もう一回行ってみよう。
「いや、おかしいおかしい」
まただ。何されたかも分からないし、痛みすら感じなかった。
「レベル差かな?」
下は諦めて、上に行こう。
階段を上る。出てたのは本当に図書館のように本棚が並んだ、複雑そうな部屋だ。
「お、いるいる」
正面に骸骨がいる。剣を持ってるので、近接か。ここは混沌魔術で牽制しつつ――
「え?」
景色が逆さまになる。
気づくとまたリスポーン地点に戻っていた。首をはねられたのか?
残像すら見えんかったぞ。
「ちょっとヤバい場所に連れてこられたかもなー」
黒幕への道はまだまだ遠いとでも言いたいのかねー。
「なめんなよ。強いからこそ、こっちももっと強くなれるんだ。こんなのさっさと乗り越えて、後悔させてやる」
こんなにRPができないと、逆にやりたくなるわ。意地でも黒幕の座を奪ってやる。
「待ってろ! クソが!」
階段を上る。上った遥か先に因縁の相手がいる。それなら、何回死んでも辿り着いてやる!
「過去はもう乗り越えた。それに比べれば、今を頑張るなんて余裕だ!」
今を生きて、未来に繋げる。
黒幕の椅子で胡座をかく未来に。




