第2話・コンプリケーション少年編
少年は無残な姿となった彼女をまじまじと見ていた。
決して足が動かなくなったからではない。
そのことだけは少年にも理解が出来た。
「……はぁ、はぁ」
少年は息を荒げ不規則に呼吸をとると脳内の思考を落ち着かせるために動かない足を無理矢理に動かしまずは、その場に座り状況を確認する。
彼女の眼球は右しかなく体の所々が喰いちぎられていること。
それに、一番の疑問がなぜ自分の手は汚れてなく口周りだけが紅く奇麗になっているのか?
「…ふぅー」
一息ついてどうにか心を落ち着かせる少年。
こうして取り乱すことなく冷静に対処できている自分自身に怖気がするが今は状況を確かにすることがなによりだ。
けど、そんなことはとっくに冷静に考えればわかりきっていることだった。
少年が人食をした。
つまりは、彼女を喰った。
「やっぱ、そうなるよな」
しかし、少年は吐き気を覚えたり無理やりにでも吐き出そうとは決してしなかった。
少年曰く、
「やってしまったことだ。今はどうでもいい」
だそうだ。
つまり少年は彼女を喰ったことよりも、なぜ自分の手が一滴の血もついていないのか? と言うことがなによりも疑問だったらしい。
「……どう考えても不可能なんだよな」
少年は考えた。
手元に手袋があったわけでもないし、着けた記憶もない。
摩訶不思議な神様の悪戯にでもあっているかのような何とも言えない気分だ。
「ま、いいんだけどさ」
少年はきっと冷静になり過ぎたのだろう。
最早、その落ち着いた様子からは冷静よりも冷徹があっているかのように見えた。
「もう、帰るか」
その少年の言葉は耳を疑いたくなるものだった。
目の前には惨死体とも呼べる無残な姿の彼女の死に体があり、その姿にさせたのが少年であるとゆうのに当の本にである少年はなぜか紅く染まった口元はニヤニヤと笑みをうかばせ鼻歌を歌い立ち上がっていた。
「ふふーん。わかったよ」
少年は上機嫌になりながらその場を後にする。
口元を腕でふき階段を一段一段おりていく。
「答えがやっとわかったよ。ありがとな」
少年は階段を下って行くさなか、誰にも聞こえない大きさの声で彼女に礼を言った。
そして、数日が経った。
「やっぱ、一人が一番だよな」
少年は昼休みにいつものように学校の屋上にいた。
あの後、クラスでもとりわけ存在感のあった彼女の死を知ったクラスメイトは騒ぎに騒いだ。
そして、友達でもない人の死を悲しむような真似をして胸糞が悪くなるような辛気臭い自己満足の空気感が三日ほど淀んでいた。
無論、少年はいつも通りに過ごしていたのでまた、クラスメイト達からは意味の全くない自己防衛も兼ねた怪訝な目を向けられることとなったが、今となっては向けられることもなくクラスには元の活気づいたあの能天気でバカでくだらない友達ごっこな楽しい空気感になっていた。
「ここが、一番落ち着くな」
そう誰に向けて言うわけでもなくただ一人でつぶやいた少年の前に、ある一人の少女が訪れる。
「あの、----君だよね? ----から聞いたんだけど」
「……おう。そうだけど」
彼女の名前を耳にして少年は一瞬、体の全神経が尖るように鋭くなるように敏感になり、体自体は硬直した。
「----君に頼めば、殺してくれるって聞いたけど本当?」
「ぶはっ!?」
少年は思わず飲んでいた玉露を吐き出してしまう。
自分に頼めば殺してくれる? 彼女は一体何を目の前の少女に行ったのだろうか。少なくとも、人殺しに関して少年は一度も………。
「なるほど、そう言うことかよ」
「えっとー………」
「あれだな。俺は人殺しはしない」
「え? でも」
そこで少年は考えた。
もうこうなってしまえば後戻りはできない。
今考えればすべてが彼女の掌の上だったと言うことになる。
ならば、彼女が死んだ今だからこそ少しは彼女でも考えられなかったことを考え驚かせてやろうではないか。少年はまるで無邪気な子供の用に笑いながらそう考えた。
そして、ある一つの考えが浮かんだ。
「ただ、自殺を手伝うだけさ」
「は…い?」
「僕が君を殺すんじゃなくて、君が君自身を殺す。…で、その時の演出をつまりは自殺を簡単になおかつ派手に、地味に、するために俺が君の自殺をサポートすんの」
「………」
「だから俺は人殺しなんかしない。ただ、自殺を手伝うだけの人間さ」
少年はドヤ顔で目の前にいる少女に向かって言う。
すると少女が突然、腹を抱え笑いだした。
「ははは! なにそれ、すっごく面白そう。……ねぇ、それって私にでもできるかな?」
そんな少女の言葉が以外すぎて少年は思わず目を見開いてしまう。
しかし、すぐに意地悪い笑顔をして少女に言う。
「そうだな」
少年はなぜか空を見て懐かしそうに言う。
「人助けが好きだったらできるんじゃないかな」
少年がそう言うとまるでタイミングを計っていたかのように小風がびゅーっと吹いた。
「そっか。じゃあ私、死ねなくなった」
「ほう」
「君と同じでその面白いことしたくなっちゃった」
そう言って目の前に立っていた少女はバリケードに寄り掛かる形で座っていた少年の隣に座った。
「じゃ、自殺の手伝いはしなくていいんだな」
「あったりまえじゃん。これから楽しそうなことが起きるんだからさ」
少女はまるで太陽のようににかっと笑い少年もそれにつられて笑顔になってしまう。
「あ、そうだ。私、----。よろしくね」
「よろしく」
「あと、コレ、私のメアド」
「おう。これが俺のだ」
そう言って、交換する少年と少女。
「あー、楽しみだな。これからが」
「あぁ。楽しみだ」
少年と少女は未来を知っているかのように未来を無邪気に楽しみにしていた。
そして、少年と少女はその日を境に人生を大きく変えることとなる。




