第3話
「ちゃんと持ってきたかなぁ~」
「持ってきましたよ。五千万」
「えらいぞぉ~。5000千万確かにもらっちゃいま~す」
ここ、コロシヤにはかつてない重い空気感が漂っていた。
その理由は歴然としている。
今、少年の目の前にいるエイミンと客であるリーマンのなかなかにくだらないであろう不仲が原因である。
ちなみに、少年はエイミンがなぜ千を2回言っているのかがよくわからなかった。
ぶりっ子キャラでも狙っているのだろうか?
「で、エイミンは決めてんだろうな」
「うん。もちのろん」
「なら、いいんだけどな。俺はこんなざまだし」
「まぁーまぁー。今回のところは私に任せてちゃんとなおすんだぞ」
「わかってくれているのなら早くここから出ていってくれよ」
「ほ~い」
少年はそう言ってソファーに寝てしまう。
当初はただの熱だと思っていたが2日目あたりで「これ、おかしい」と、女性が言い病院へ連行され、そこで様々な検査と言う名目を借りた拷問が少年を襲いそれから時間が経ち検査結果が出たところ結果は今はやりのインフルエンザだと判明した。
それから約1週間が経ち熱も下がり普通にスポーツをできるだけの体力に回復はしたのだが医者からの外出禁止と言う名の自宅監禁をくらい少年はその有り余る体力と精力を持て余していた。
「じゃ、早速だけど現場に向かうよ」
「……はい」
リーマンとエイミンは静かにコロシヤを出ていく。
出て行くと下には運び屋が待機していた。
「やっほー、はっこび~ん」
「久しぶりだなエイミン。いつ以来だ?」
「確か、あの時だよ。ほら撲殺の」
「あぁー、あん時か」
エイミンと運び屋はそんな物騒な話をまるで修学旅行の時の思い出を語る同窓会の時の大人の様に喜々として話している。
以上にもほどがある風景。
リーマンは生唾を飲み込む。
「そうだそうだ。こんなとこで話してる時間がないんだったな」
「あ、そうだった」
「で、そっちのが」
「うん。今回の商品」
「……え?」
「まぁ、気にすんな。ほら、早く乗れ」
リーマンはエイミンが言った“商品”と言う普段から使う何気ない単語が頭から離れなかったが運び屋に急かされ車に乗ってしまう。
その後に続きエイミンも車に乗る。もちろん助手席に。
「はぁ、でも本当に久しぶりだよな」
「そうだねぇ。久しぶりついでに今夜一緒に」
「オッケー。楽しみだわ」
運び屋とエイミンは後部座席に座るリーマンにお構いなしにそんな話をしている。
「あ、あのー。これは一体どこに向かっているのですか?」
リーマンは何か話そうとしてとっさにエイミンと運び屋にそう尋ねる。
「あー、えっとどこだっけ」
「うん? あの交差点の真ん中でしょ」
「あ、そうだった」
「交差点の真ん中」
「そう。そこで燃えて自殺すんの」
「………」
リーマンは言葉を失ってしまった。
自分がそんな大胆な死に方をするなんて想像をしていなかったし考えもしていなかった。
「あ、そろそろ着くぜ」
運び屋が言ったその言葉はまだ心の準備ができていないリーマンにとって悪魔の言葉のように聞こえた。
車の中からでも聞こえてくる都心の繁華街ならではのこの人の行きかう声の中のど真ん中にその車は止まる。すぐに笑い声だった人々の声はざわめきの声と変わる。
「ほら、到着」
「うん。じゃあ、後は君一人でやってね。ほら早くっ!」
エイミンはそう言ってドアを開けリーマンを車から蹴りだす。
「ちょっ!? 待って」
そんなリーマンの声は届かずに車はその場から走り去ってしまう。
注目の的にさらされているリーマンはパニックになりその場から一歩たちとも動けずにいた。
「どうしよう。どうしよう。どうしよう」
ブツブツと誰にも聞こえない声で言っているとある2つの音が同時にした。
1つはパトカーのサイレンの音だ。きっと誰かが通報したのだろう。
キチガイがいます。的なことを。
そしてもう1つは空から聞こえてくる。轟音。
その正体は、
「ヘリ?」
だった。
その姿に思わず全員が上空を見てしまう。
その隙に卑怯な国家権力の犬である極悪非道なクソ警官がリーマンとの距離を縮める。
「おい! 今すぐ投降しろ!」
国家の犬からの押しつげがましい警告はリーマンと観衆の耳には入らず上空に、リーマンの頭上上空に留まっているヘリから落ちてくる謎の紙切れに夢中だった。
「おい、まさか落ちてくるのって」
リーマンが気づくと同時に観衆も気付き始める。
「俺の集めた五千万じゃん。……ははっ。ははははははははははははは!!!」
リーマンは思わず高笑いをしてしまう。完全にネジが外れたようだ。
「マジかよ! 燃えるってこういうことかよ! なんか金は濡れてるし」
濡れているその万札からは嗅がなくてもわかるほどのガソリンの臭いがした。
そして、リーマンのズボンのポッケからあるものがタイミングよく落ちる。
「なんだよ。計算されてたのか」
地面に落ちたのはジッポだった。
それを地面から拾い、全てはエイミンの計算だったことを悟るリーマン。
「きっとよ、万札はあの時のあの男に渡したんだろ? コロシヤにいた。いいじゃん。ここまで来たら最後まで計算通りでいてやるよ」
そう言ってリーマンはジッポを火をつける。
そして最後の一枚が振り落ちたその瞬間にジッポを地面に落とす。
その瞬間、得体のしれない炎がリーマンを包む。
「ほら!! まだあんだろぉぉ!!」
リーマンはそう叫ぶと今度は液体が降ってきた。
もちろんその液体の正体はその場にいた誰しもがわかっていた。
ガソリンだ。
そして炎は竜巻をつくるように勢いを増しリーマンを焼き尽くしていく。
「はははははははははははははははははははは!!!!!」
リーマンは最後まで高笑いをやめなかった。
なぜだかは、その場にいた観衆や警察もそしてエイミンたちでさえ知らない。
そして数分もしないうちにリーマンは死んでいった。




