第1話
とあるビル群の奥にある雑貨ビルの4階にあるドア
そのドアにはカタカナで“コロシヤ”と書かれた紙が乱雑に貼ってある
そのドアを開けて中へ入ると少年と女性がいつものようにいる
「さて、三が日も今日で最終日」
「お年玉は今年ももらえずじまい」
「いや、それは大人じゃん」
「私思うんだよね。お年玉もらうのってさ大人子ども関係ない」
年が明け三が日も最後の日。少年と女性は室内にいると言うのになぜか着物姿でいる。
「はぁ。いいか大人はな、特に俺たちのような自営業はな年中無休にしなきゃやってられないの」
「貯金は化け物じみたほどにあるのに?」
「うっ、それは・・・。ほらアレだ勤労意欲を忘れてはいけないだろ?」
ソファーに座りながら送られてきた年賀状を数えながら話す少年と女性。
「私に勤労意欲なんて毛頭ないけど?」
「ニート予備軍か」
「その言葉ニートにはいいけど私には失礼じゃない?」
「そうか? じゃあそうだな」
少年が言いかけた時ドアが勢いよくバタンッ! と開き商人とその後ろから運び屋がにぎやかに入ってくる。
「ハッピーニューイヤー! 謹賀新年! あけおめ、ことよろ、そしてあけおめだよー!」
「すまん。商人のテンションを下げることができなかった」
商人は女性物の着物で運び屋は普通の男物の着物でやってきてが運び屋はなぜか物凄くつかれた顔で商人は物凄く楽しそうな顔でそれぞれパソコンがある机の椅子に座る。
「おい、何があったんだ。運び屋」
「いやそれがさ、商人から電話が来て今と同じテンションを耳元で聞かされた後に車を出せとか言われて今に至るかな。本当に新年早々なんでこんなに疲れなきゃいけなんだ? 俺は」
「お疲れ様。だがもう安心しろ。こっちはアイツがいて商人が来たんだ」
「あぁ、出番は終わったのか」
「きゃぁーーーーー! 綺麗」
「商人は可愛いですねー!」
少年と運び屋が見やるとすでに商人と女性が互いを褒め合っていた。本当にここまで来ると商人が女にしか見えない。
「よし! お前ら外に言って来い」
「はーい。行こ」
「はい、行きましょう!」
少年の鶴の一声ともいえる一言で商人と女性は外へと出て行った。
「だーーー! ちかれた」
「多分、午後にならないと帰ってこないと思うから寝るなりテレビ見るなり好きにしろ」
「サンキュな」
そう言って運び屋が机にうつぶせになって寝ようとしたときドアの方からコンコンとノック音が聞こえた。
「おいおい、マジですか」
「多分、マジですね」
「かーっ! 今日の俺って不運な男じゃね?」
「言ってろ言ってろ」
少年は運び屋のやる気のない愚痴をながしつつドアを開ける。
「あ、初めまして」
「初めまして」
ドアを開けるとそこにいたのは綺麗な黒髪が特徴的な女性だった。
「あの、ここって自殺を手伝っていただけるお店で大丈夫ですよね?」
「はい。そうですよ」
黒髪さんはおどおど落ち着かないようだった。
「あの、その」
「中に入りますか?」
「はい!」
少年がそう言うと黒髪さんは元気よく返事をした。
「ちょっと散らかってますけど気にしないでください」
「全然。そんな」
黒髪さんは滑らかな動きで大和撫子と言う言葉が合うような綺麗な仕草で靴を脱ぎ少年の案内の元、中へ入って行く。
「あ、そこのソファーに座ってください」
「失礼します」
黒髪さんがソファーに座ると運び屋の隣の椅子に少年が座る。
「あの、そちらの方は」
「あぁ、同業者? になるのかな」
「どもー」
黒髪さんが運び屋をみて聞いてきたので少年が紹介すると運び屋はやる気なさそうに手を振り黒髪さんは納得いったかのように「なるほど」とつぶやいていた。
「では早速なんでけどアナタが死にたい理由を教えてもらえませんか?」
「え? 私の名前とかは」
「そんなの聞いてどうするんですか? これから死ぬ人間の名前、住所、電話番号を知ったところで何をしろと? 自宅に行って好きなだけ私の下着をオカズにしてヌイてかまいません? 私の家族を好きなだけ強姦してください? 家にある通帳とカードっでお金をおろして使ってください? そんなの興味なんてわいてこないね。だってそんなの時間の無駄じゃん。だから俺は名前なんて聞かないし住所や電話番号も聞かない。だってその方が知りもしない赤の他人の死にざまを見れて最高じゃないか」
「・・・いい趣味してますね」
「だろ?」
黒髪さんが皮肉を交えて少年の壮大そうな理由に賛美を送ると少年はニヒルにクールにニヤッと笑う。
「で、どうする? 理由は言ってくれる」
「えぇ。言わせてもらいます」
黒髪さんはいたって普通の家に生まれた。下に妹が二人に上に兄と姉が一人ずついる5人兄妹のちょうど真ん中に生まれた。
両親ともに仲が良く平穏に静かに普通に暮らしていた。
そんな生活が崩れたのはつい1ヶ月前のこと。
兄と姉が性的な間柄であること一人の妹が友人を殺してしまいもう一人の妹が売春を働いていた、そして父が横領の罪にとわれ母が6人の男と不倫関係にあったことが露見した。その日を境に家族は崩れていった。
姉のお腹には兄との間に出来た子供がおり友人を殺害してしまった妹は部屋の隅で一人でぶつぶつと言い、もう一人の妹は今日も売春にいそしみ、父はいまだに横領の事実を消そうと死力を尽くし母はばれたのをいいことに言えに堂々と不倫相手を呼んでは性行為をしている。
そんな中なにもなく普通な黒髪さんは気持ちと考えが追い付かずに日々苦しんでいた。
人は苦しみすぎると極端な考えになるとよく言うが黒髪さんはそのいい例なのかもしれない。
突然だった。
あ、死んじゃえばいいんじゃない? 私も家族も。
「なんて教科書になりそうな仮面家族」
「ふふっ。で、受けてもらえますか?」
「えぇ、断る理由が何一つない」
少年は黒髪さんの依頼をニヤニヤとしながらそう言い受けた。
「そうだな、4日後ぐらいにまたここに来て。いろいろ道具を渡すから」
「はい。わかりました」
「因みにその間に死んでもらっても構わない。その時はその時だから」
「死にませんよ。絶対に」
黒髪さんは微笑みながらコロシヤを出て行った。
その後ろ姿は孤独感にかられ、憎悪に飲み込まれた悲しい人独特の雰囲気を放っていた。
「うわっ。ありゃすごいな」
いつの間にか少年の隣にいた運び屋が階段を下りていく黒髪さんを見てそう言った。
「こんな仕事をしているとわかっちゃうんだよね。お前もだろ?」
「ふっ。それはどうかな」
「ちょっ、おま」
この時、少年と黒髪さんはきっと同じ顔をしていただろう。
酷く脆くけど力強い不敵な笑みを浮かべていたに違いない。




