第3話
「ひゃっはーーーー!」
「おい、静かにしろよ」
その日コロシヤは珍しく騒がしかった。
別に少年と女性がケンカしていたわけでもなく商人と運び屋はいるがその2人とも少年は今話してはいない。なので騒がしくなる要因が一つもなかった。
ただしそれは普段・通常と言う条件がつけばの話であり今このコロシヤには全身黒ずくめのイレギュラーな存在、つまりはお客様がいる。それはもうテンションがおかしく頭もおかしいお客様が。
「久しぶりにボクの出番って思って出てきたら。なんか凄いね」
「最初見たときは俺の同族かと思ったけどアレはちと違うな」
「あ、私はノータッチで」
「おいお前ら! こっち来て手伝えや」
「きゃっしーーーーん」
少年は目の前で脳細胞ごと脳みそが壊れていて謎の踊りをしている黒ずくめを両腕をがっちりつかんで動きをセーブしている。
ちなみに言ってしまえば黒ずくめはまだ薬も何も飲んでいなかったりする。
ただ単に自殺ができて最高にかっけーーと喜んで舞っているだけである。
「コレ以上変な踊りをすると自殺手伝わねェぞ! こらぁぁぁ」
「むっ、それはやべぇな」
「だろ? よし、そのまま落ち着いて」
少年は焦りつつもそれを覆い隠すようにして冷静にふるまう。一方で正気を取り戻した黒ずくめは今度は気味が悪いくらいに静かになる。
「今回のお客さんは随分と極端なアレなんだね」
「俺はアレを運ぶのか? 物凄く嫌なのだが。生理的に」
「それを、私に言われましてもね。今回はノータッチを決め込んでいるので」
「お前ら、すでにアレを人間扱いしていないな」
「アレ? 人間なの」
「おいおい冗談は見た目だけにしとけよ。コロシヤ」
「おい、運び屋。ちょっと表でろや」
「あ、俺ヒッキーだから太陽とか他人のすった息が混じっている空気とかある外界とか無理だわ」
少年が商人、運び屋、女性がまとまっているソファーに行くと今度は運び屋と少年が騒ぎ出す。
「はいはい、二人ともそこまでだよ。時間ないんでしょ?」
「あ、そうだった」
「おっといけねぇ。いつも通りにやってしまった」
少年と運び屋は商人の注意を受けお互いにやっと一笑いした後に真面目な表情に戻り黒ずくめを見る。
「よし、じゃあ早速はじめるか」
「うん。おっけー」
少年がそう言うと商人がやけにいやらしい仕草でしゃがみ置いてあったバックから得体の知れない量の薬を上目づかいで少年に渡す。
「うっわ。特別に作ってもらった薬でもこれだけの量が必要なのか」
「まぁ、市販の薬の半分を飲んだら死ぬようにはなっているよ。その際の苦しみがなくなるかは保証しかねるけど」
「嘔吐は?」
「しないようにしておいたよ。現代技術の最先端をとことん詰め込んだ薬だからね。それぐらいはしておかないと」
「しないならいいさ。よし、お前ちょっと来い」
少年がそう言うと黒ずくめはゆっくりのらりくらりと近づいてくる。その様はまるで何かの剣術のような歩き方の様で嫌な不気味さがあった。
「これ今から全部飲め。そうすれば死ねる」
「飲めばいいんだな?」
「そうだ。飲むだけだ」
少年がそう言うと黒ずくめは何の抵抗もなく薬を飲み始めた。
その姿に商人と運び屋は「わぁお」と軽く驚き少年は「ほう」と何かが納得いったようだった。
「お前、さすがだな。伊達に自殺かっけーとか言っている奴じゃないわ」
「っんく、たっりめーだろ。人生の最後ぐらい最高にかっけーにしたいだろ」
「こんなシンプルでもいいのか?」
「simplethebestだろ。真のかっこよさはsimpleだ」
「そうなのか?」
「そうなんだよ。ほら、邪魔だから話しかけんな」
黒ずくめはごきゅりごきゅりと音をたてながら薬を飲んでいく。そしてラスト10粒程度になっとき黒ずくめの調子がおかしくなってきた。
「っ・・・ぁっぁ」
「始まったね。それ最後まで飲まないとずーーーーっと苦しむだけだよ」
「随分とした鬼畜設定ですね。商人さんよ」
「えっへっへ。最先端技術ですから」
「そりゃまぁ、天才の中に随分と変態がいたのかな」
「それは企業秘密だよ」
少年と商人が世間話をするかのように淡々と薬について話している中で黒ずくめは全身の穴と言う穴から透明な液体を流し眼球は今にも零れ落ちそうなほどになっていたり体毛はすでにいくつか抜け始めていたりした。
「ぁっ・・・・ぅぁぉぃ」
「おいおい、これ全部飲み終わる前に死ぬんじゃねェのかよ」
「それはないよ。そう言うようになっているからね。なにせ世の中の天才さんたちの好奇心とイタズラ心がつまりに詰まっている期待の自殺薬だからね。こんな鬼畜にもなるよ」
「本当にどこの天才さんなんだか」
「そんなに気になるなら今度連れて来よっか」
「連れてこれるんだったらな」
黒ずくめはそんな少年と商人をよそに今あるすべての力を持って最期の10粒に手を開け一気に口の中へ入れ水を滝のように飲み、薬を飲み込む。
「ぁぁぁっぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・・あれ? 普通に話せる」
「・・・おい商人。これは」
「うん。成功だね」
商人はニヤッとすると黒ずくめが急に心臓部をえぐられたかのような声をだす。
「ぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」
「・・・はぁ、エグすぎんだろ。もはや鬼畜とかの所業じゃねェぞこれ」
「だから言ったでしょ。成功だって」
黒ずくめは白目になり立っているのがやっとだった。しかしなぜか笑っていた。その姿を見てその場にいた誰もが不気味に思うが少年だけはしてやったりと二やついていた。
そんな少年のしてやったりの期待を受けるかのように黒ずくめは黒のコートをバサッとなびかせ両腕を多き広げる。その様はまるで鴉のように漆黒で、鷲のように勇ましいものだった。
「今の俺かっけーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」
黒ずくめはそうさけぶとそのまま床へばたんと倒れた。
そんな黒ずくめに少年以外の全員がぽかんとしている。
「おい、運び屋。こっからはお前の仕事だろ」
「・・・あ、あぁ。そうだったな」
運び屋は少し間を開け少年男急かすような言葉でハッと気づき黒ずくめを車まで運ぶと運転席に乗った。
「じゃ、頼むわ―」
「お、おう」
ブロロロと音をたて運び屋と死に体の黒ずくめをのせた車は行った。
「よし、仕事完了」
「ねぇ、まさかこうなることわかってたの?」
気を取り戻した商人が階段にいた少年のところまで来て話しかける。
「さぁな。それこそ企業秘密ってやつだな」
「え? なにそれ少しは教えてよぉ」
「やなこった」
少年はふっと笑いながらコロシヤへと入って行った。




