第1話
とあるビル群の奥にある雑貨ビルの4階にあるドア
そのドアにはカタカナで“コロシヤ”と書かれた紙が乱雑に貼ってある
そのドアを開けて中に入ると少年と女性はいる
「お前さいつまでそう落ち込んでるんだ?」
「落ち込んでなんかいない。ただ考え事しているだけ」
女性は先日の仕事に関していまだに引きずっていた。あの時の女性は考えもしなかった。自分が誰かの死に対してこんなにも心動かされるなんて。
(私も弱くなったかな。それとも人間らしくなったのかな?)
「おーい。昼ごはんまだー」
「ねぇ。今の私ね感傷モードなの。わかる?」
「そう言えている時点で感傷モードじゃなくね?」
「うん?」
「・・・あー、カップ麺でも食べるわ」
「うん。そうして」
少年はまるで妻に相手をされなくなって仕事場でも上司と部下の間でストレスが溜まりにたまる中間管理職のリーマンのような寂しい背中を見せながらキッチンに行き特売で買ったカップ麺とこれまた特売で買った冷凍食品の焼きおにぎりを温め始める。
「なんで俺。こんな悲しい食事してんだ」
少年はブツブツと言いながら沸いたお湯をカップ麺に注ぐ。その間も女性はやはり下を向きながら感傷に浸っていた。きっとしばらくの間はこれが続くのだろう。
「はぁ。いただき」
カップ麺ができて少年が食べようとした瞬間にドアの方からノック音が聞こえてきた。
「マジかよ。あぁ、出てもらえますか?」
「・・・」
「ですよねー」
女性からの無言の圧力に負け箸をおきドアへと向かう少年。かなり近い距離なのに早足で向かう。ドアへと足早で行ったためすぐにつきドアを開ける。
「どうも」
ドアを開けると類を見ないほどのイケメンがそこには立っていた。
「当社はイケメンはお断りです♪」
そういって少年はドアを閉めようとしたがイケメンが閉まろうとしていたドアを両手でつかみ全力でそれを拒んでる。
「いやいやいや!待ってくださいって」
「お客様。往生際が悪いですよ。とっとと小屋に帰ってオナっとけヤリチン!」
「客にたいしてそれはないんじゃないかな?しかも俺はヤリチンじゃねぇしむしろ経験ゼロの童貞じゃボケェ!」
イケメンが童貞宣言すると少年は急にドアを閉めるのをやめた。その反動でイケメンは後ろに勢いよく転ぶ。転んだイケメンが何かに気付いて上を見ると少年が手は差し伸べていた。
「悪かったなイケメン。ほら中へ入れよ」
少年はなぜか同情したような何とも言えない表情をしていた。イケメンはその少年の手をつかみ立ちあがる。
「お、おう」
少年とイケメンは中へと入って行く。中に入るといまだに雰囲気重めで絶賛感傷中の女性がいた。そんな女性を見てイケメンがぎょっとするが少年が無言で顔を横に振る。ダメだ何も疑問に思うな。と言わんがばかりに何も語らず目で語っていた。それを感じ取ったイケメンがこれまた目で、わかったと語っていた。
「あー、そこに座れよ」
「わかった」
少年はイケメンに仕事机の椅子に座るように促し、イケメンを座らせ自分も座ったところで話を始める。
「早速話をはじめよう。まず最初にここがどんなところかわかってきたんだよな?」
「あぁ。自殺を手伝ってくれるところだろ」
「わかって来てるんだな」
「そりゃもちろん」
「ならお前は自殺をしたいんだな」
「ここにわかって来てる客にそれを聞く?」
「だな。じゃあ早速だけど聞いてもいいか?死にたい理由」
「もちろん」
そう言ってイケメンは何の抵抗もなく話し始めた。
イケメンはまぁとにかくかっこよかった。それはもう絶世の美男子と言われんがばかりにとにかくかっこよかった。しかもイケメンは口が上手くその場その場をうまく切り抜けてきた。そんなイケメンは中学、高校、大学と上手く上手く生きていた。そんなある日イケメンはある人と出会う。それがイケメンの人生を大きく変える。その人は俳優業を生業としていくつもの映画、ドラマにも出ている大御所と言われる人だった。イケメンはたまたま街中で声をかけられ芸能事務所には所属していたもののいまいちやる気がでなく時々くる仕事を軽くこなす程度だった。今回の仕事もそのはずだった。けどその人に出会い仕事に対しての意欲が変わった。こんな大御所がこんなちっぽけな仕事に全力を出している。その姿を見てイケメンは勝手ながらになにかを感じ取りそれを活力とし今まで以上に頑張った。その結果今ではドラマ、映画に出るわ出るわの売れっ子になっていた。その中でたくさんの人と出会い、親友と言う中の人までできていた。
そんなある日。ある一人の女優と出会う。その女優はイケメンに好意を持っていたらしく毎日言い寄って来ていた。しかしイケメンはそれをただの迷惑行為と受け取っていて拒み続けていた。それが続いた3ヶ月経った日。ある週刊誌にイケメンの有りもしない悪態が唇裂な言葉とともに書かれていた。その情報源は明らかにわかっていた。自分に毎日のように言い寄って来ていた女優だ。自分になびかないのがイラついたのだろう。明らかにイケメンに対しての態度がその日から変わっていた。白々しく大声で週刊誌のことについて言ったり、いろんなスタッフに言い寄りイケメンの居場所をなくして行った。業界からも干され始め仕事が今撮影中のドラマだけとなってしまった。かつてない試練にイケメンは耐えられなくなりある日ある人から聞いた自殺を手伝ってくれる店に行こうと決心した。自分が心がこんなに弱いこと、それに金に困って足掻くのならいっそのこと死んだ方がマシだ。そんな決心でイケメンは今日やってきたのだった。
「随分とした力説どうも」
「あ、どうもどうも」
イケメンはなぜか照れくさそうにしていた。一歩の少年は一瞬考えイケメンに告げる。
「お前、有名人だったんだな」
「知らなかったの!?」
「おう。テレビなんて基本ニュースしか見ないし」
「おっさんか!」
「中身は立派なおっさんだお」
「語尾がだおの時点でおっさんではないよ」
2人はそう言って笑った。この1時間程度の時間ですっかり友人ほどになったみたいだった。
「で、話し戻すけど。お前は今どんなドラマの撮影してるの?」
「時代劇だね。今度俺の最後のシーンの切腹の撮影で最後だけど」
「切腹か。それはいつ?」
「確か明後日だったはずだけど」
少年はふむ。と言った様子でまた考え込む。その様子をイケメンが不思議そうに見ていると少年が突然話し出した。
「よし。明後日に撮影前にここに来い。自殺方法とその手段に必要な道具を用意していてやる」
「ってことは、手伝ってくれるのか」
「当たり前だろ。お客様」
「いまさらお客様とかマジないわ」
2人はケラケラと笑い出た。そしてイケメンは一通り笑った後に帰って行く。
「じゃ、明後日な」
「おう。またな」




