第98話:【錬成妃】の担い手?
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「ケイン、獄焔剣レヴィアートは首尾良く手に入れられたみたいだね」
「ああ、だけど基礎の聖霊剣に吸い込まれてしまったんだが、どうやって使えば良いのか判らないんだが」
使い方が判らないから素直に訊くしかないな。
「それなら、抜剣してから思い浮かべれば選択が可能になるよ」
「ふむ、抜剣して」
ミスティに言われた通りに、腰の聖霊剣を鞘から引き抜き……
「選択……」
頭に浮かべると聖霊剣と獄焔剣の選択が可能と成って、現在進行形では聖霊剣が選択を成されていた。
「成程、こういう事か」
故に[獄焔剣]を選択してやる。
ブワッ! という鈍い音が耳朶に響いて瞬間、凄まじいまでの熱気が俺の顔を焼く勢いで伝わってきた。
刹那、身構えた俺だけど覚悟をしていた焼かれる痛みは伴わず、聖霊剣から獄焔剣に姿を換えたソレは正しく獄焔と呼べる焔を剣身に湛え、ちょっと上段から振り下ろしてやったら、轟っと焔の音がこのダンジョン内に大気を震わせ響き渡る。
「熱く……無い?」
熱気とその熱さは確かに有るのだろうけれど、先程みたいな茹だる様な熱や火傷をするみたいな焔では無く、心地の好い程度の熱波だった。
「大丈夫みたいだね」
「あ、ああ」
これなら充分に扱える。
「現状は基礎の聖霊剣と獄焔剣のみだろうけど、七王剣を集めていけばその属性や能力を使えていくんだ、最終的に“神剣”としての姿を取り戻したなら剣の姿を変えずに、総ての力を扱える様に成る筈だよ」
「へぇ、そうなんだな」
再び納刀してやると基礎たる聖霊剣に戻った。
「それじゃ、戻ろっか」
「ああ」
ミスティの言葉に頷き、ランスとスピアも構わないとばかりに首肯、俺達は上層階にまで戻るべく転移部屋を目指して進む事に成る。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
アルヴァン大火山のダンジョンを出て直ぐにも宿屋へ直行、デアポーションで治療をしたものの矢張り疲労感までは拭えないし休んでいた。
ランスとスピアは兎も角として、ミスティは汗を酷く流していたからだろう、服がピッチリ肌へと貼り付いてしまっていてちょっとエロい。
「フフ、ケイン見たい?」
「い、いや……」
ミスティにピラッと張り付いた服の襟を開いた見せ付けられ、俺は顔が真っ赤に成りながら明後日の方向を向くが、横目で彼女の僅かに露わとなるピンク掛かった白い肌に目が吸い寄せられる。
序でに云えば、俺の下半身にぶら下がる俺自身が少しだけ元気に。
後で元気な俺自身を鎮めないとイケないかな?
「ケ~イ~ン♪」
ガバッ! と、背後からスピアが俺に抱き着いてくる、防具を纏っていない胸部装甲はミスティには無い柔らかさが有ってか益々、俺自身が元気一杯に成ってしまった。
「むむ、私の時より元気なのは何故なのかな?」
「うぐっ!」
確りバレて~ら!
言い訳させて貰うなら視覚情報より接触情報の方が反応し易い、仮にミスティの素っ裸を魅せられたとしても、直接的にスピアが触れられたならそちらの方が元気一杯に成ってしまうだろうな。
その逆もまた然り、立派な肢体であるスピアの素肌を魅せられるよりは、ミスティに触れられた方が余程元気に反応をしてくれる筈だから。
取り敢えず後で処理しよう。
「ね、ね、ケイン!」
「どうした?」
「新しい武器はいつ出来る?」
「ああ、魔銀は武器が造れるだけの分は完成しているからな」
銀に魔力を通して馴染ませていく作業を自動化してあり、ユニークスキル【錬成王】で余り使わない魔力を存分に使って造り出す訳だ。
その分、精神力を常に銀に魔力を通す為に相当量を毎朝で確保しなければ成らず、それは戦闘にも当然ながら可成り影響を及ぼす事になる。
少しずつ少しずつ銀を魔銀に変換していく訳であり、今も魔銀には変換されていない銀を増やし続けてはスキルに投入していってるくらい。
「取り敢えず今のスピアが使っている手甲や脚甲を貸してくれりゃ、それを基にしてデザインとかサイズを調整して明日には完成させよう」
「え、それって大丈夫?」
「うん?」
「せめて、今日くらいは休んだら? ミスティちゃんから聴いていたけど、ケインって獄焔剣に触る時すっごい火傷しちゃったよね?」
「げっ! デアポーションで治していたのに?」
ミスティの方を見遣ると、んべっと意地悪そうな笑みを浮かべて舌を出しているではないか?
「一日くらいはゆっくり休めって言いたいのか」
この心遣いには溜息しか出ない、ミスティにはメイフェリア――メイの記憶も有るのだろうし、ひょっとしたら前世の俺――テンルィーも同じ様な性格だったのかも知れない。
「実際にお前の腕は大丈夫かよ?」
「ランス……デアポーションで確りと治しているからな。だから、火傷はちゃんと治っているさ」
「そうか、そいつぁ良かったよ。俺としても武器と防具は良いとして、アクセ系も欲しいからな」
アクセ系――指輪や腕輪やイヤリングやネックレスなど、それもランスが言っているのは魔装飾と名付けられている魔導具としての装飾品。
アルヴァン大火山で使った“冷却マント”も同じく魔装飾に当たり、単純に能力を引き上げるだけでは無いのも特徴と云えば特徴なのか。
冷気で身体の周囲を覆い、熱気や火炎を遮断するのと同時に、全身をある程度ながら冷やしてくれるから、大火山では刺さる魔装飾だ。
「どんな魔装飾が欲しいんだ?」
「そうだな、出来たら腕の突きの速度を上げてくれる様なのが有ればと思うぜ。脚の疾さよりはって感じでさ、今の俺じゃ少し足りねー」
「突きの疾さだけを上げるのか?」
「出来りゃーだがな。無理なら全体的に疾さを上げるので構わねーよ」
所謂、やれやれ的なオーバーアクションを以て笑ってくる。
魔装飾は本来だと造り難い、俺のユニークスキルがぶっ壊れなだけ……っていうか、ユニークスキルの全てがぶっ壊れいるんだけどな。
兎にも角にも、それだけに魔装飾に限らず魔導具や魔装具は総じて高額に成ってしまうんだ。
希少な代物を使うが故に需要と供給が追い付いていない、唯でさえ希少な物だから数が無いのもそうなのだが、造り主も多い訳ではない。
彼方で云えば父さんの【錬成術】もSSRというレアリティ、そのパーセンテージは多い訳では無いというか世界全体で視ても一%未満。
ユニークスキルは唯一技能だけあって俺しか持っていない……という訳でも無いが、それは異性たる誰かが持つ【錬成妃】という意味で。
俺の【錬成王】自体は完全に御一人様であると云う。
「……【錬成妃】か」
「会いたい?」
「へ?」
「ケインの【錬成王】と対を成す【錬成妃】の持ち主に……だよ」
俺は目を見開いてミスティの顔をガン見した。
「まさか、ミスティは何処に居るかを知っているってのか?」
「ゴメンけど知らない。知りたくないが正しい、でも数百年前に確かに居たんだよ。テンルィー陛下と共に【錬成妃】を使って活躍していた」
そう言って、自身の首から外したネックレスはいつも身に付けていた物、俺が渡した魔装飾の類いでは無かったから、気には成っていたよ。
事実、あれは魔装飾だ。
当人の魔力が高い、それに俺は魔力に疎いから直ぐには判らなかったくど、スキルで魔力の扱いに慣れるに従って理解をしていく様になる。
自分で買ったのかもと思っていたんだけどな、それは矢張り逃げでしか無かったんだろうか?
「それは?」
「形見……かな? シンリーの」
「シンリー?」
「うん、シンリー・アズライトって云うんだよ」
「シンリー・アズライト?」
シンリーという名前は彼方側で美衣奈から聴いていたが、アスィルート・マズルスの事を聴いた時にポロッと漏らしていた程度だったけど。
「アズライトっつったら、確かアズライト伯爵家のか?」
「そうだよ、ランス」
伯爵家だとか態々言うって事は、元マーレイア王国のって事だな。
「まぁ、性格にはシンリーには子供が居なかったから弟がアズライト伯爵家当主に収まったけど」
「うん? 何でだ?」
「……察しなよって、無理か」
無理って訳じゃないな、俺だってニブチンって程じゃ無い心算だ。
シンリーの想い人が、俺だったんだろうなくらいには理解るさ。
「あ?」
白くてボブカットな髪の毛、銀色の瞳にミスティより尚も真っ白な肌を持つ、そして何も無い所へ目を向けて何やら話す不思議ちゃん。
パッと見では確かにそんな風に見えたけれど、要するに俺が【錬成妃】を使っていたのであると理解が出来るし、脳裏に浮かぶシンリーらしき顔の表情、明らかに恋い焦がれた想いを視線でぶつけてきていた。
当時のテンルィー陛下は気付かなかったのか、メイフェリアを愛していたから気付かぬ振りをしていたのか? 記憶の無い俺には判らんな。
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