第85話:星号と真号
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「それで、名前は兎も角として称号ってのは? ひょっとして俺が銀の騎士ってのと同じか?」
「そうだね、さっきも話の中に出したから判ると思うよ。ケインは銀の騎士、その他に朱き騎士の日乃森シオン様。蒼き騎士の刻守クラン様。黒き騎士の砕牙カノン様。白き騎士の結城セレン様だよ」
「若しかして、俺を含むそれが五源将なんだな」
「そうだね」
八人の星騎士の内の五人、五源将と美衣奈が呼んでいたのが先程に名前の挙がった者達らしい。
そして卦韻もその一人。
「因みに、白き騎士の結城セレン様は紅一点なんだってさ」
「へぇ、そうなんだな」
紅一点は即ち女性という事だが、別に卦韻としては興味は無い。
「これまたどうでも良い話だけど、日乃森シオン様を除くと全員が地球の日本で生まれたみたいだね」
「え? 日乃森シオンって日本人に在りそうな名前なのに、日本人処か地球人ですら無いのかよ」
「確かに紫音とか詩音って在りそうな名前だね、姓は大正時代の日本に降り立った際、其処で出逢った女性との婚姻で婿養子に成ったみたい」
「成程な……」
そんな細かい事を知ってる辺り、気になったから美衣奈も星神テリアルに訊いてみたのだろう。
「抑々にして、何で俺には記憶が無いんだ?」
「私に記憶が残っていたのはイレギュラーみたいなんだけど、ケインの記憶が無いのは悪い意味でのイレギュラーだったみたいだよ」
「悪い意味で……ねぇ」
まさかのイレギュラーで、しかも美衣奈も同じくイレギュラー。
これには卦韻も驚くしかない。
「それで、脇道には逸れたけど……結局はケイン・ユラナス君と俺との関係が知りたいんだよ」
「転生をしたという意味では同一人物だろうね、だけど記憶の継承が成されていないから別人だと云っても良いよ。魂が同じなだけだからね」
「じゃあ、美衣奈とミスティは?」
「私には確かにメイフィリアの記憶もミスティとしての記憶も有るよ。だけど今の私は愛坂美衣奈に間違いは無いから余り心配しないで」
「べ、別に心配してる訳じゃ無いんだけどな!」
「クス、そう?」
そっぽを向く卦韻、美衣奈がそんな彼を可愛いと考えてしまうのは思考が大人だからだろうか?
ポリッと卦韻はクッキーを口にして、更にそれを流し込むかの様に紅茶を飲み干してしまうと、美衣奈が御代わりの紅茶を淹れてくれた。
「又々どうでも良いけどね、ミスティだった時と今の私は同じ容姿をしてるんだけど、メイフィリアだった時の容姿は違ったんだよ」
「そうなのか?」
美衣奈から卦韻が聴いたメイフィリアの容姿、それは髪の毛がピンクブロンドで前髪が翠のメッシュらしくて更に、後ろ髪は小さく結わい付けていたのだとか。
顔立ちに関しては大して違わないのだと云う。
何故? と訊ねると……
「だって、メイフィリア・ヴィナーシュ・マーレイアとアルフィリア・ヴィナーシュは姉妹だよ。その子孫なんだから女の子の顔立ちが似ていてもおかしくは無いよね?」
しれっと言い放ってくれた。
超が付きそうな隔世遺伝だけど。
ハイエルフの血が入ったからか、碧銀の髪の毛に成っていたし、メイフィリアの時よりも恐らく美少女に生まれていた気はするらしい。
「序でに云うとミスティはハーフエルフだった、だからケインが逝ってから更に数百年は生き続ける羽目に陥ったよ。まぁ、後は全部を後継者達に任せて、ミスティ自身はさっさと聖霊の森に引き籠ったけどね」
やれやれなポーズを執りながら首を横に振る。
「再婚とかしなかったのか?」
「ねぇ、ケイン。それは私にケイン以外を受け容れろと?」
「む、それは……」
ケイン・ユラナスとしての記憶は無いけれど、既に卦韻からしたならミスティとは仲間みたいなものではあった上に、美衣奈と瓜二つな彼女が自分で無い男と懇ろに成るなど、ちょっと戴けないと感想を懐く。
「それにハーフとはいえハイエルフな訳だから、別に早く子供を沢山子供をなんて話にも成らなかったんだよ。だからスローライフをしてる傍らで研究をする毎日だったかな?」
「そ、そうなんだな……」
それにミスティはハイエルフの血筋とはいえ、所詮はハーフだから流石にハイエルフの里の長を務める訳にもいかないし、子供を幾ら産んだ処で余り意味は無いと云う事で再婚を急かされたりはしなかった。
「それで美衣奈、結局俺は星騎士として何をしたら良いんだ?」
「地球に顕れたダンジョンの全てを突破していく事を。はっきり言ってそうしないと困ってしまうんだ」
「それだ! 抑々、何で地球にダンジョンが? 文字とか魔物とか理とか、明らかに彼方側ってかテラルのモノだよな? それが何で!?」
「そうだね、其処もそろそろ話しておこうかな」
美衣奈は頷きながら言う。
というより美衣奈からしたなら、初めからダンジョンの話をしていく心算だったのであろう。
「先ず、この時空樹の一次元世界に於ける地球はテラルと次並列的に重なってしまっているんだよ。結果、一万年を越えてテラルと地球が重なってしまう事が予見されてたんだ」
「重なる?」
「勿論、それで星々が衝突して消滅なんて話にはならないよ。というよりも、テリアル様が絶対にそうならない様に神力を割いてくれる契約だよ。それでも融合はしてしまうから、何とか調整をして彼方側の人間は少しずつ此方側に移住させて、死んだ者は転生させる事で混乱を招かない様にしてくれていた。一万年は時間が有ったから割かし簡単ではあったんだよ。そして私やケインの家系は古いとされているけど、マーレイア王家を元にしたものだったんだ。ケインが聖霊剣クリスタリオンを使える理由でもあるね」
「マジかよ……」
楠葉卦韻はケイン・ユラナスの転生体であるのと同時に、神王剣クリスタリオンを扱えていた神の血筋であるマーレイア王家の末裔だった。
だからこそ、七分割をされた七王剣の一振りでもある聖霊剣を手に出来たし、使い熟す事だって叶っていたのだと初めて気付かされる。
「そして一番、ケインが知りたかったであろう事なんだけど」
「此方側の俺が彼方側に意識を移している事と、唯一技能である【錬成王】がアイテム類は兎も角として、アーカイブなどの情報を共有しているって事実に関して……か?」
訊ねてみれば、美衣奈は静かに頷いてくれた。
「理由は簡単、テリアル様がそうしているから」
「いやいや、神様が万能過ぎじゃないかな~?」
「理由は簡単だけど、実際に遣るのは難しいと言っていたけどね」
確かにそれはそうだろう、正しく言うは易し、行うは難しを地で往くくらいには大変な筈だ。
話の通りならば、融合するしか無かった地球とテラルの融合をダンジョンのみが顕現する形に押し留め、テラル人を地球へと移住させたり転生をさせたりして、更には転生した楠葉卦韻と彼方側のケイン・ユラナスを一繋ぎにしたと云う事になる。
「抑々、星神テリアル様? は何だってこんな訳の解らん、ややこしいだけな事をしたんだよ?」
「条件、覚醒には転生をしないとイケなかった。だけど単なる転生じゃなく、記憶を保持した状態での転生が必要だったんだよ。何故なら魂の格を大幅に上げるには転生の際に記憶を保持しているのが必須だったからね。苦肉の策としてケインの意識を彼方側のケインに繋げて意識レベルの融合をさせたんだ。ややこしいかも知れないけれど、ケインにとっては彼方側も此方側も正しく現実なのだと考えて欲しいんだよ」
それだと気になるのは彼方側の自身の意識だ、自分が彼方側に居ない場合はどうなっているのかが判らないし、それ以前はどうだったか?
だけど、よく考えてみれば卦韻がケイン・ユラナスに成るのは起きている間、若しかしたら此方側で寝ている間が彼方側の意識として覚醒をしている感じなのか? 卦韻はそう考えて何と無くだが得心がいく。
再びクッキーを口に入れる卦韻、それを見ながら美衣奈もクッキーを摘まんで更には紅茶を飲んだ。
「何とか理解は出来たよ」
「それは良かった」
美衣奈は笑顔で頷いた。
「そういや、俺以外の星騎士って四人に関しては聴いていたけどさ、他の三人はどんな人だ?」
「あ~、私が知ってるのは一人だけなんだよね」
「一人だけ?」
「それは闇の騎士の星号を与えられた緒方優斗様、五人目であり秩序と混沌の意を受けた“天魔真王”だよ」
「闇の騎士は兎も角として、その天魔真王って?」
「えっと、真号。朱き騎士の日乃森シオン様にしても星号とは別に、【朱翼の天陽神】って真号を持っているらしいよ」
だとしたら、星騎士として働き始めたら卦韻もまた真号とやらを与えられるのだろうか?
ちょっとアレな気がするけど。
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