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銀の騎士と黎明の星  作者: 月乃杜
第一章:聖霊剣
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第12話:再び夢の世界へ

.

 翌朝、俺が木漏れ日で目を覚ますと美衣奈……じゃ無さそうだから、ミスティの顔が隣に!?


 普段はポニーテールに結わい付けていた髪の毛を降ろし、眠っている間に乱れていて凄く淫靡に映って、彼女の体臭が鼻腔を擽ってきた。


「あ、ヤバ……」


 唯でさえ朝の朝っぱらだから股間のアレが半ば硬かったが、ミスティの淫らな寝姿が目を通して脳に伝わったのと、肢体から香る匂いと直接的に自分への接触から柔らかさと温もりを感じてしまっては、これでリビドーを刺激されないのであれば男としては失格の烙印を押されても仕方ない。


 寧ろそんな輩が居たら不能だと叫んでやろう。


 俺の下半身にぶら下がるJr.は最早元気溌剌で、ちょっとした刺激を受けたら爆発でもしそうな程であり、そうなってしまったなら俺自身も下手をしたら野獣に成り果てそうでちょっと怖かった。


 だからこそ、ソッとベッドから脱け出すしか無かったのだと云う。


「意気地無しだな~」


 何だか声が聴こえた気がする。


「ね、寝言……か?」


 矢張りというか、外に出たら其処は昨日の俺の家では無く、近くに建てられたミスティの家だ。


 俺の記憶では昨夜は普通に眠りに就いてたし、美衣奈が添い寝をしていたなんて、嬉し恥ずかしな破廉恥行為にも及んではいない筈。


 ケインとしてはいまいちよく判らなかったが、幾ら何でもミスティと寝てはいないと思うが……


 庭に出ると衣擦れの音が家から聴こえてくる、恐らくはミスティが身仕度でもしてるんだろう。


 覗いたら、魔法が飛んで来るかも知れないな。


 俺は取り敢えず、滾る俺自身を鎮めてしまう為にも、トイレに向かってミスティの温もりや柔らかさが残る手でこっそり……


 数分後には自己嫌悪に陥りながら汚れた手を洗い流していた。


「お待たせ~」


 ヤる事をヤってたから特に待った感覚は無い。


「ちゃっちゃと御飯を準備しちゃうからね」


 言いながら自分の家に向かうミスティだけど、彼女の家はそれこそ隣接した土地に建っている。


 何がどうして、あんな添い寝なんて事になったのやら? 其処が俺は全く理解が及ばなかった。


 朝餉を終えて果実水で渇いた喉を潤すと愚痴が口を突いて出る。


「今日も俺は無能ムーヴ君に絡まれるのかね?」


「無能ムーヴ君?」


「ほら、俺を無能無能と詰って来た奴が居たろ」


「ああ、ガンパーね」


「ガンパー?」


「ケインが無能ムーヴ君って呼んでいる子の名前だけど?」


 そんな名前だったんだな。


「まぁ、絡まれるよね。ガンパーってどうも私に気があるみたいだし、こうしてケインの傍に居るのが気に入らないんじゃないかな?」


「ああ、そういう……」


 確かにミスティは村の中でも特に目を惹かれる美少女だし、何なら無能ムーヴ君改めガンパー君じゃ無くとも惚れる男は居そうだしな。


「……ねぇ、ケインは伝説みたいなの信じる?」


「伝説? 随分と曖昧なもんを」


「世界には捜せば伝説や伝承、何なら村の口伝みたいなのって幾らでも転がってるよ。デマばかりなそんな中でも真実は有る。正しく玉石混淆って処なんだよね」


「それで?」


 地球の伝説や伝承はだいたいがデマでしかないだろう、だけどこの地球とは言い難い世界でなら或いはそんなモノも有り得るのか?


「それで、伝説って?」


「聖霊の森と呼ばれる森の奥深く、小高い丘の上の“天零樹”の根へと突き刺さる剣ってヤツなんだけど」


「何処のグラムだよ!?」


 あれは確か、林檎の木だった筈だけれどな。


「グラム?」


「いや、何でも無い」


 プィッとそっぽを向く。


「兎も角、数百年前に『勇猛なる剣士様』が未来の為に天零樹の根に刺して、遺したという伝説が今現在に伝わっているんだよ。それを取りに行くのはどうかな?」


「そんな伝説が残されてるんなら、誰かしらが既に剣を取りに行ってるんじゃないのか?」


「勿論、誰かは取りに行ってる。だけどその誰も抜く事が出来なかったみたいだよ。だから今でも伝説の剣は天零樹に突き刺さってるよ」


 若しそれが本当なら、確かにその伝説の剣とやらは今も在るのだろうと思うけど、それなら寧ろ俺にだって抜けないんじゃないのか?


「ケインならきっと抜けるよ」


「そうかね?」


「そうだよ」


 けど仮に抜けたとして、それでどうなるんだ?


 その伝説の剣には下手くそを上手くする機能でも付いてるとかか? 俺は心の中で首を傾げた。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 今日の学校は昼で終わり、座学のみだったからガンパー君の絡みもネチッこい口撃くらいでしかなくて、更に明日は休みって事でミスティとランスとスピアで森に向かう。


 聖霊の森にはエルフ族が住まう村が存在するとか云われ、他にも小さな妖精族が村には共存をしているとも伝わる広大なる土地だ。


 聖霊の森の魔素は可成り濃密で、森の外に近い場所は兎も角としても、エルフ族でさえ住まない深部ともなれば強大な魔物も棲むらしい。


 ミスティからの情報だけど。


 幸いにも天零樹は魔素を討ち祓う聖なる樹で、森の外からでも見えるくらいの巨木であり、樹齢も何だか万年くらいは経っているんだとか。


「さて、ケイン」


「ああ……行こうか」


 ランスの言葉に頷くと俺達は森に入っていく。


 浅い位置だから未だに魔物は出て来ないけど、小鳥の囀ずりや虫の鳴き声、風に舞う木々の葉によるざわめきが耳に心地好く聴こえる。


「ケイン君は戦闘に参加しないでよ」


「判ってる」


 俺の剣の腕前は御察しだからだ、体幹のブレや肉体の重さにより、どうしても腕に響くからだ。


 魔物を斃せば存在力を吸収して自身の存在力が上昇、詰まりはレベルアップをするから肉体的には強化もされるのだろうが、戦闘経験が獲られないからこれで強く成れたとは言い難いと思うな。


 小川のせせらぎすら聴こえてきて長閑ではあるんだけど、魔物は確実に現れる筈なのだから周囲に気を付けていないといけなかった。


「ほら出たよ、ゴブリンソルジャーみたいだ!」


 スピアが構える。


 現れたゴブリンソルジャーは青銅製の剣を手にしているが、視るからにボロボロな刃、しかも混ぜ物をした純度の低さが見て取れる。


 予め聴いていた通りなら、普通のゴブリンに比べると存在力は上なのだと云う、武器も金属製の物を持ち始めるのだとか教えられた。


 他にも弓を持つアーチャー、杖を持つマジシャンなど武装によってバリエーションが有るとか。


 上位種としてロードやキングやエンペラーなんてのも存在すると聴くし、少なくとも今の俺だとバリエーションにも勝てないんだよな。


 スピアが先制して拳を叩き込み、ランスによる槍撃がゴブリンソルジャーのド頭を貫いた。


「天蓋より来たりて降り注げ」


 ミスティが呪文詠唱をする?


「詠唱?」


雷撃(ザ・グラ)!」


 聞き慣れないけど、力有る言葉に幾条もの落雷がゴブリンソルジャーに降り注ぐ。


 黒焦げに成ったゴブリンソルジャーがグロい。


(美衣奈は呪文詠唱なんてしてなかったのにな)


 美衣奈と同じ顔なミスティ、だけど魔法の使い方が違うのはいったいどういう事なんだろうか?


 魔法名も違うし。


 ゴブリンソルジャー共は割りとあっという間に殲滅され、俺達は再び森の奥へと向かって歩いていく事になるが他にも魔物が現れた。


 とはいえ、俺は手出しが出来ないけどミスティやランスやスピアは優秀だったから問題も無い。


 ミスティの魔法、ランスの槍撃、スピアの拳撃が魔法を屠るのだ。


 だけど……


「ミスティッ!」


「……え?」


「東の方から魔物だ!」


 巨大なサソリの魔物が現れた。


「デスコーピオンッ!?」


 それは、死の蠍と呼ばれるサソリ型の魔物だ。


「拙いっ! まさか奥から出てきたのかよ!?」


 ランスが驚愕をした。


 デスコーピオンは彼方側で美衣奈が覚えておく様にと、昨夜に家へ訪ねて来て魔物図鑑をじっくり見せられていたから嫌でも覚えている。


 昨夜に……偶然か?



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