44話 大英雄
解放軍は、破竹の勢いで帝国本土を進軍している。
帝国内の元セビャニ王国であった地域でも、次々と反乱が起きている。
帝国軍の抵抗は弱い。
理由は知っている。
帝国の北にある山岳地域から、魔王の軍勢が帝都マベイス・モルに向かって進軍を続けているからである。
おかげで帝国軍の大半が、そちらへと動員されているのだ。
ちなみに女神様情報ね。
女神様が帝国軍に八つ当たりしたい俺に気を使ってくれているので、魔王軍の侵攻ペースはゆっくりとなっている。
しかし魔王軍に帝国軍の多くが割かれている現状では解放軍に対する帝国軍の数が少な過ぎて、俺が何もしなくても次々に帝国軍が壊滅してしまい、八つ当たりをした気分になれてなかったりする。
あ、言い忘れてたけど、勇者さんは既に始末済みだそうだ。
まぁ、そんなコトはどうでもいい。
素人の民兵が多いこの軍を嘗め切って、兵力を小出しにしてきたから負け続けてるコトに、帝国は気付いているのだろうか?
ちなみに解放軍の数はモソーハソの街で志願してきた者を含めても6000弱である。
解放軍としては大成功を収めているのだが、個人的には八つ当たりした気分になれない現状には、正直モヤモヤしている。
つーか戦いに勝ち続けているうちに、そろそろ帝都が近づいちゃってんだよなー。
これこのまま、帝都陥落までやっちまうんじゃなかろうか?
解放軍を率いているのは、いつの間にやらヤイカゲさんだ。
さすが元将軍候補、用兵の上手さに加えて兵の掌握力がとにかくすごい。
民間人や他国の兵まで纏め上げ一つの軍隊として機能させるには並々ならぬ手腕が必要なはずだが、ヤイカゲさんはソレをあっさりとやってのけている。
コレ俺の装備無くても、十分強いんじゃね?
…………
帝都が遠目に見えるトコまで来てしもた……。
さすがにここまで来ると、相手も大軍を出してくる。
つか、もっと早く出せよ。出し惜しみしてるからここまで攻め込まれるんだぞー。
帝都の常駐兵や警備兵、近隣に配置していた兵をかき集めた帝国軍の数は、8万余り。
数にして10倍以上になるが、解放軍の士気は高い。
下手に破竹の連勝を重ねているので、テンションがアゲアゲになっちゃってるのだ。
当然兵を率いるヤイカゲさんも。
指揮官なんだから、もう少し冷静に兵力差を読めよな。
まぁ、八つ当たりをしたかった俺にとっては丁度いいさ。
民間人だった兵の練度も上がってはいるが、さすがに10倍以上はキツかろう。
魔法での障壁や、爆裂魔法でのかく乱なんかで支援してあげよう。
障壁で5000程度に分割しながらの各個撃破なら、たぶんこの数でも勝てるべ。
俺の八つ当たりタイムの本番が、ようやく始まろうとしていた。
……始まるよね?
…………
ヤイカゲさんの号令で、解放軍が進撃を始める。
「ゆけ! 正義の軍よ! 悪逆非道な帝国を今こそ叩き潰す! セビャニ王国を再興し、ソーミャット王国に平和を取り戻すのだ!」
ウオオォォォォ!! と全軍が雄たけびを上げ、帝国軍に突撃を開始した。
なんかこっちも気分が盛り上がって来たぞー。
そうだ! こんな時こそ『音楽』のスキルを使ってみよう! BGMで戦闘を盛り上げてやるのだ!
音楽スキル、オン!
効果範囲は戦域全体だ!
戦場全体に、勇壮な音楽が響き渡る。
BGMの一部が、こいつらが勝利の宴をする時によく歌う音楽になっている――よしよし、これでこのBGMが味方を鼓舞するモノだと判るな。
さぁ、燃え上がれ! 解放軍よ!
解放軍が勢いを増した――俺の支援がいらないくらい。
あれ? なして?
勢いを増した解放軍が、10倍以上の帝国軍相手に無双している。
八百屋のコビッチとか、飴屋のスチムタまで無双してやがるし。
いくら素人兵の実力が俺の装備で底上げしてあるからって、無双まではできないハズなのだが……。
念のためにあいつらのステータスを鑑定してみたら、全てのステータスに1000~2000のプラス補正が付いていた。
そして帝国兵の全てのステータスにも、1000~2000のマイナス補正が……コレはいったい?
まさか? コレはひょっとして、まさか!?
一度『音楽』のスキルをオフにしてみる――うむ、補正が無くなった。
途端に解放軍の勢いが止まる。
あ、いけね。戦闘中だった。
再び『音楽』のスキルを、オン!
解放軍が勢いを盛り返す――うむ、やっぱり補正が付いた。
まぢか……。
今までただ単に、エンドレスでBGMを流すだけの面白スキルだと思っていた『音楽』のスキルは、戦闘中の味方にプラスのステータス補正を、敵にマイナス補正を付加するという、超強力かつ超広域のステータス補正スキルだったのであった……。
イヤ、今まで戦闘中に使ったコト無かったから、全然気づかなかったさ。
これだけの補正がかかれば、相手が精鋭部隊でも勝負にならんわな。
一般兵と勇者が戦うようなモノだ。
そりゃ無双もするか……。
帝国軍は見る間に殲滅されていく。
なして逃げないんだ?
あぁ、そうか。帝都を背にしてるんだもんな、最終防衛線としては逃げるワケにもいかんか。
難儀なモンだ。
帝都をめぐる戦いは終わった。
あれ? これって八つ当たりが終わったコトになっちゃうのかな?
なんか解放軍についてきただけで終わっちゃったんだけど……。
…………
凱歌を上げる解放軍はその勢いで、次に帝都を目標に進軍を始めようとしていた。
「あー! ちょい待ち! ちょっと待って!」
魔王の軍勢が帝都の権力者を亡ぼすはずなので、先に殺っちゃうのはマズい。
「どうしたナミタロー、帝都に攻め入ると何かまずい事でもあるのか?」
「あ、イヤ、その……」
説明したいけど言えない、さてどうしよう?
「何だ? あれは」
一人の解放軍の兵士が、帝都の向こう側の上空を指さしている。
見ると小さな点がたくさん――イヤ、点じゃない、魔物だ。三つ首のドラゴンに巨大蛾やワイバーンなど、空飛ぶ魔物が大量に近づいてきて、大空を埋め尽くそうとしている。
なんか悪魔と合体したヒーローの話のコミック版で、こんな場面あったなー。
などとボーっと考えていたら、やがて地響きが伝わってきた。
魔王軍の地上部隊もやってきたようだ。
こっちが帝国軍の大軍を始末したから、女神様も魔王軍を動かしたのだろうか。
あれ? ひょっとして俺の八つ当たり待ちだった?
「なんて大量の魔物だ……ナミタロー、お前もしかしてこの事を知ってて止めたのか?」
「うん、知ってた」
というか、裏で繋がってる。
「まずいな、こんな魔物の大軍に襲われたら、帝国だけじゃない……ソーミャット王国だって滅ぼされるぞ! どうにかしないと!」
ヤイカゲさんのこの一言がきっかけで、解放軍に動揺が走る。
「ど、どうすればいいんだ? あんな数の魔物……」
「なんとかしないと……」
「あんなのどうやって何とかするんだよ!」
「そうだ! 勇者なら!」
「馬鹿野郎! 勇者は敵だぞ!」
「でも帝国が攻撃されてるのに、勇者が出てこないなんて変じゃないか?」
「まさか勇者はもう……」
「そ、そんな!」
帝都から煙が立ち昇る。
住民と思しき人々が、逃げまどいながら帝都から出てきた。
そのタイミングで魔王が姿を見せる。
帝都で最も高い場所である城の塔を、魔王がいとも簡単に破壊している。
「でかい! なんだあの悪魔は!」
「あの破壊力! ただの悪魔じゃないぞ!」
「これだけの魔物を率いる悪魔なんて……」
「まさか! 魔王!」
どうやら魔王らしいと気付いた解放軍の兵士たちは、動揺を隠せない。
「怯むな! 隊列をしっかり組みなおせ! 我々が破れたら、今度は我々の故郷が蹂躙されるのかもしれんのだぞ! 気持ちをしっかり持て! 覚悟を決めろ!」
ヤイカゲさんの檄でようやく隊列を整えた兵たちだが、どう見ても覚悟を決めた状態とは言い難い。
解放軍は固唾をのみながら、帝都が魔物に蹂躙されるのを見ているしか出来なかった。
帝都の城は跡形も無く崩れ落ち、魔物の軍団によって帝都は陥落した。
帝都を落とし終えた魔王が城への攻撃を止め、こちらへ近づいてくる。
女神様ー、権力者の始末はまだですかー。
その時、空にぽっかりと白い空間が開いた。
女神様だ。
「ナミタロー、終わったからもう殺っちゃってもいいよー」
と女神様。
うむ、了解した。
だけどさ女神様、こんな人前に出てきてもいいの?
一応『こんな大勢の前だよ? 出てきてもいいの?』と、アイコンタクトを送ってみる。
……伝わってないようだ。
女神様はキョトンとしている。
「だからもう、いいんだってば」
イヤ、だからさ……。
今度は身振り手振りも加えて『みんな見てるけど、いいの?』と、伝えてみる。
「女神様?」
「女神様だ!」
「女神アルミトゥシュ様だ!」
みんな気付いてしまったらしいので、もう手遅れのようだが。
「!?」
女神様がようやくやらかしに気付いたようだ。
うむ、動揺してパニクっているな。
パニクりながらどうやって誤魔化そうか考えて……。
おっ、何か閃いたようだ。
左手のひらを右手を握って叩いたし、頭の上に電球が灯ってる。
そして女神様は、この場を誤魔化すために次のようなお言葉を発しやがったのである。
「異界より召喚されし『大英雄』ナミタローよ! そなたの力の封印を今こそ解き放ちましょう! さぁ! そなたの使命を果たすのです! 魔王を倒し、世界を救うのです!」
ちょ! 待て! 封印ってなんだよ! そんなもんされた覚えねーぞ! あと大英雄とかふざけんなよオイ! つーか何だその設定は! 思いつきにも程があるだろーよ!
「大英雄……!」
「女神様が異界から召喚した大英雄!」
「大英雄ナミタローだ!」
うおおおぉぉぉ! と盛り上がってしまう皆様。
チーン! と頭の中に音が響く。
もしやこの音がするってコトは……。
恐る恐るステータスの称号欄を確認する。
やっぱしか……。
ステータスの称号欄には『大英雄』の三文字が、しっかりと増えていたのであった。
はぁ、もう溜息しか出ねーよ。
……仕事すっか。
俺はおもむろに神木刀タナカムラクンを構え、魔王の前に立つ。
魔王は後方に数えきれないほどの魔物の軍勢を率いている。
「ドラ吉、後ろの連中は任せる。今日は思う存分暴れていいぞ」
「ぴゅい!」
俺の左肩から飛び立ったドラ吉は、大きく光り輝きながら聖竜となる。
その体長30m……イヤ、いつの間にかまた大きくなってないかい? ドラ吉くん……。
さて、いくら魔王とはいえ全力でやったら後ろの帝都まで消えてなくなっちゃうから、それなりには手加減しないとなー。
このくらいかな?
軽~く大上段からタナカムラクンを振り下ろしてみる。
ズバシャァァァ!
ズゴウォォォン!
ガラガラガラ……
轟音が収まると、魔王は左右に奇麗に真っ二つとなってしまっていた……ついでに帝都も一緒に。
うむ、やっちまったな。
ごめんね、帝都の人。
「おお! 大英雄の勝利だ!」
うおぉー! と盛り上がりまくる解放軍の人たち。
だよねー。大英雄の称号、定着しちゃったよねー。
なんか気が抜けちゃったな―。
ボーっとしながら、ドラ吉が魔物の軍勢を駆逐していくのを眺める。
さすがに数が多いので、ドラ吉でも時間が掛かってるようだ。
だからと言って、手伝うのも面倒な気分……。
コーヒーでも飲みながら見物するとしますか。
自作のチョコをつまみながら、モソーハソの街で仕入れた豆で入れたコーヒーを飲む。
そして思った。
ドラ吉の駆逐している大量の魔物の素材って、俺が所有権主張してもいいんだよね? と……。
…………
魔物の駆逐が終わったとたん、解放軍が帝都へ攻め込もうとした。
それを見た俺は、さすがにそれを止める。
「おいおい、まさか攻め込むつもりか?」
「当り前だろう、我々の目的はルボッチ帝国の打倒だ! 今攻め込まなくてどうするんだ?」
ヤイカゲさんは何の迷いも無くこの言葉を口にした。
そうか、根本的にこいつらと俺では目的が違うんだ。
今更気付いたこの事実……。
俺はただ意趣返しをしたかっただけ、別に帝国そのものをどうこうしようとかは考えていない。
「攻め込むのはいいけど、一般住民には危害を加えるなよ」
こんな言葉しか思いつかなかったし。
「何言ってんだ?」
「俺たちがやられた事をやり返して何が悪い!」
「そうだ! 俺たちが、家族が、どんな目に遭ったのか分かってんのかよ!」
「あいつらにも地獄ってもんを見せてやる!」
「お前らは帝国には攻め込まれたんだろうが、魔物には襲われてないだろ? もし平等じゃないと気が収まらないというなら、これから悪魔とか魔王が出てきても、お前らの国の町や村は助けなくていいんだよな? だってそうじゃないと平等じゃねーし」
「でもそれは……」
「だけど……」
「お前らが帝都の住民に悪さするなら、俺は本当にそうするぞ。一応言っておくが勇者は魔王に殺されてるから頼れんからな……それでもやりたいならお前らの好きにしろ、さっきみたいな魔王が出てこないといいな」
さっき見たばかりの魔王と魔物の軍勢を思い出したのか、全員が黙り込んだ。
「まぁ、そうか……」
「考えてみたら、あいつらも可哀そうだしな……」
「勘弁してやるか……」
口ではこうは言ってるが、内心は不満なのだろう。
本当に魔王とか出てきたら困るから、こいつらは納得したふりをしているだけに過ぎない。
死んだ時の女神様との会話を思い出す。
――『そいつらの始末が終われば、その他の人は助けてもいいんだな?』
――『できるならね』
魔王からは助けてやれるけど、占領をした人間からは守ってはやれない。
今こいつらが大人しいのは、俺が見ているからだろう。
俺の目が届か無くなれば、どうなるか判ったモノではない。
国を動かしていた連中と兵士の大半を失ったルボッチ帝国は、まず間違いなく滅亡するだろう。
その領土は奪われ、占領される。
帝国の国民たちは帝国軍の今までの行いを、少なからず返されるコトになるのは間違いない。
その人たちの一人一人を助けるなど出来ないし、そこまでやる気も俺は無い。
戦争なんて、そんなもんか……。
「勝った負けただけなら、簡単なんだけどなー」
「ぴゅい」
撃破した魔物の素材回収を終えて、左肩に戻ってきたドラ吉も深々と頷いている。
ゲームだったら『勝ちました、ハイ占領』で終わりなんだけどねー。
戦争って面倒くさい。
それが俺の最終的な感想だ。
解放軍が帝都を占領して、鬨の声を上げている。
こいつらはもう用済みだな……。
そろそろ旅路に戻るとするかー。
ところでドラ吉、回収した魔物の素材ってどんなのがあった?
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
― 夜 ―
帝都に泊まるのは何かイヤだったので、結構離れた人気のない場所で野宿するコトにした。
晩メシはドラ吉が回収した魔物の素材の中に、良さげな肉があったのでそれをシチューにしてみた。
秋風も夜になるとひんやりするので、暖かいシチューが体に染みる。
「やっぱ戦争とか性に合わんみたいだなー」
「ぴゅい?」
「イヤ、お前は戦えりゃ何でもいいんだろうけどさ」
「ぴゅーいぴ?」
「人を殺すのが嫌とか罪悪感がーとか、そんなんじゃ無いんだよ。人だろうが動物だろうが魔物だろうが、俺にとっては同じような感じだしなー。必要があれば殺すし、無ければ殺さないしさ。ただつまんないんだよねー」
「ぴぴゅぴぃー」
「そうだな、今度戦争に関わるコトがあったら、お前に全部任せるよ。頼むわ」
「ぴゅいー」
すまんな、愚痴に付き合わせたみたいで。
愚痴と言えば……。
「いやー、大英雄のおかげで見事解決できたわねー。ナミタロー、良くやったわよ」
「あ、出た」
「出たって何よ、幽霊じゃないんだから」
噂をすれば何とやら。女神様だ。
「そんなコトより、大英雄って何だよ大英雄ってさー。それにもうちょっと誤魔化し方があるだろ? 異界より召喚って、まんまじゃねーか。まったく……」
「仕方ないじゃない、あれしか思い浮かばなかったんだしー」
「とにかくこの『大英雄』の称号、消してくんない?」
「それは無理、たくさんの人に認定されちゃったし。いいじゃない『大英雄』、カッコいいし」
「それ自分が思いついたヤツだから言ってるだけじゃんさ。てかホントに消せないの?」
女神様ならできるんじゃ?
「認定されちゃった人たちの記憶を、全部書き換えればできない事は無いけど……うん、無理」
「イヤ、できないコトは無いって今言ったじゃん、言ったよね? てか『大英雄』の文字を赤文字にして点滅させるのは止めれ」
これでステータスとか誰かに見られたら、すんごい恥ずかしいから。
「いいじゃん別に赤文字でも……だったらこうだ!」
「金色に光らせるとか、もっと止めい!」
まったくこの女神様は……。
「そうだ。ご褒美に欲しい物とか決まった?」
「称号の件をうやむやにしようとしてるだろ……」
「え? ソンナコトナイヨー。あ、何だったら物じゃなくてもいいよ」
何で急にカタカナになったんだ、おい。
「モノじゃなくてもいいのか……」
誤魔化された気がするが、まぁとりあえず置いておこう。
「いいよー。こっちの都合で魔王の処分してもらったしね。あたしのできる範囲で、そこそこ何でも聞いてあげるよー」
そこそこなのか何でもなのか、どっちだよ。
「うーむ、それじゃあ……」
「ふんふん、何かな?」
このお願いを言うべきか、言わぬべきか……。
「何よ? 早く言いなさいよ」
……ええい! 思い切って言っちゃえ!
「嫁になってくれ!」
女神様がびっくり顔をしている。
だよねー。
何を急にそんな、と思われただろうか?
でもこれは、昨日今日思いついたコトでは無い。
前々から考えていたコトなのだ。
元の世界にいた頃に、父親が他界しその2年後に母親が他界した。
その時に俺は『愛する人を看取るのはイヤだなー、看取られたいなー』と、強く思ってしまったのだ。
こっちの世界に来てから、嫁や恋人のあてが無かったワケでは無いが。なんとなく躊躇してしまったのは、コレが原因である。
こっちの世界に来てレベルがとんでもなく上がってしまった俺は、寿命がとんでもなく長くなってしまったであろうコトを覚悟した。
そうなると当然ながら、どんなに若かろうがよほどの長寿命の相手でないと、最期には必ず愛する人を見送らなければならなくなる。
そんなのはイヤだ、俺は見送られたいのだ。
そんなコトを考えていた時に出会ったのが、この女神様だったのである。
自分の寿命が無いコトを知らされた時は動揺したが、女神様だって死なない存在だろう。それに俺はこの女神様がなんか好きだ。
若いころのような焦がれるような好きでは無いが、なんとなーくこの人(神)とずーっと一緒にいられたらいいなーという、柔らかい好きである。
だったらもう、嫁になってくれと言うしかあるまい。
看取るのはイヤだ、看取られたい。この女神様ならそれが可能なのだ!
どんなに美女や美少女でも、愛する人を失うのはイヤなのだ。
だからハーレムなんて欲しいとか思わんのだ。
ただでさえ先に逝かれるのはイヤなのに、ハーレムなんてそれが全員分だぞ?
絶対にイヤに決まってるだろう。
つーか、ハーレムなんてクソくらえだ!
一人でいい、俺より長生きしてくれる相手がいい。
だから女神様に嫁になってくれとお願いしてみた。
まぁホントに女神様が嫁になってくれるとは、俺も思っては……。
「いいよー」
「へ? いいの?」
どうやら女神様は、嫁になってくれるらしい……まぢで?
「いいよー」
「……ありがと」
こうして俺は、『大英雄』の称号と嫁をゲットしてしまったのであった。
…………
ところで嫁よ、『大英雄』の称号を虹色のグラデーションで光らせるのは止めてもらえませんか?
女神様「やったー! これで毎日遠慮なく愚痴れるぞー!」




