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36話 成長の証

 キン! カキン! コキン!

「ハイ! ホヤ! てい!」

 ネルシャが、剣を持った試作ゴーレム7号と訓練をしている。


 俺はゴブ太をリストラ……じゃない、ゴブ太が独立してから、海中用の水陸両用メタルゴーレムを製作しようと試作品のゴーレムを作ってみたのだが……どうも上手くいかない。

 自立型AIを持たせて従魔のように扱いたかったのだが、とにかく頭が悪いのだ。

 まぁ、俺の作り方が悪いのだが。

 ハード的には簡単に作れるんだけど、ソフトウェアがなー。


 進化型の学習AIにしてどんどん進化させようかとも思ったが、それをやると無駄に高知能になってゴーレムが自身を魔改造するとかやりかねん、と思ったので今のトコ自粛している。

 俺が作るゴーレムだからなー……絶対予期しない何かになる自信はあるのだ!

 うむ、ちょっと情けない。

 命令を聞くだけのゴーレムなら簡単なんだけど、それだとつまんないんだよなー。

 つーか、もう一年近くこの課題が解決できん……試作ゴーレムも、もう7体目の失敗だし。


 そうそう、ネルシャは春に11歳になった。

 身長もこの一年で12cmも伸びて144cmとなり、勇者としても格段に強くなっている。

 失敗作の試作ゴーレムもけっこうな強さに設定してあったのだが、今のところ見事に全てネルシャが破壊していた。7号も押されてるから、そろそろ壊されるな。


 ガギ! ギン! ガツ!

「ん! む! く!」

 うーむ、さっきからネルシャの動きが悪いな。体調でも悪いのか?


 まぁ、体調の悪い時にも戦わなくちゃいけない時はあるからな、これもいい訓練に……。

「ししょー! ししょー! ちょっとたんま! 緊急事態!」

「なんだ? 体調が悪くても戦う時はあるんだから、頑張れー」

「違う! そうじゃなくて! 緊急なの! だからたんま!」

 たんまと言われてもなー。


「緊急事態の時にも戦う時が……」

「トイレ! トイレしたいの! もう限界じょ!」

 限界じょ!って何だよ。つーか戦闘中のトイレは緊急事態とは言わん。

「漏らせー」

「無理ー!」

「無理なコト無いだろ、装備に排泄物の処理機能も付いてるんだから」

「漏らすのとか無理ー!」

 何を言ってるんだか……。


「命がけで戦ってる時にトイレだからたんまとか出来ないだろ? 今のうちに漏らすのに慣れとけ」

「鬼ー! 悪魔ー!」

「失礼な。俺は人間離れしてるけど、ちゃんと人間だぞ。覚悟を決めて漏らせー」

「嫌だー! 女の子には大切なものがあるんだー!」

「命より大切なものはないぞー」

 漏らすの我慢して死なないように、訓練で漏らす経験しといたほうがいいのに……。


 一応言っておくが、別に漏らすトコが見たいとかじゃないからね。

 女の子が排泄するトコ見たいとか、そんな変態な趣味とか無いから……本当だからね!

 そもそも装備は排泄物の処理機能付きだから、排泄しても見えないし……本当にそんな趣味は無いんだから、お願い! 信じて!


「うにゃにょー! くみゃー!」

 ガッシャーン

 あ、ネルシャが試作ゴーレム7号をぶっ壊した。火事場の馬鹿力ってすげーな……。


「トイレタイム!」

 叫ぶネルシャ。ちなみにこの『トイレタイム』というのは魔法だ。土魔法と水魔法と俺のオリジナル魔法『キレイになれ』の複合魔法で、ウォシュレット便座と壁を自分が立っている位置に作り出し、排泄後に色々キレイにするというこれまた俺のオリジナル魔法だ。


 というか、ネルシャに作らされたんだよね。

 自分で欲しがった魔法だったからか、随分と短い時間で習得したし。複合魔法って難しいのに。


 …………


「ふぅ~、危なかった~」

 トイレタイムの魔法を解除したネルシャの顔は、だらしなく呆けている。よほど切羽詰まっていたのだろうなー。

「いざっていう時のために、一度漏らすのを経験しとけば良かったのに……」

「絶対やだ!」

 頑なだなぁー……はっ! これはもしや反抗期!?


「それよりさーししょー、新しい武器っていつ作ってくれるの? そろそろ短剣じゃないの使いたい」

 あー、そうだった。女神様に新しい勇者武器作ってもいいって言われてたから、そのうち作ってやるとネルシャに約束してたんだった。

「そうだなー、ネルシャも大きくなってきたコトだし、そろそろ作ってもいいか。どんなのがいい? やっぱ剣か? 槍か?」


「じゃあ……ししょーとおんなじのがいい!」

「俺とおんなじって……木刀か?」

「うん! 木のやつがいい! なんかかっちょいいし!」

 勇者の武器が木刀とか、さすがにどうなのよ。


「せめて普通の金属製の刀にしないか? カッコ良くしてやるぞ」

 今の防具が甲冑寄りの赤備えで六文銭付きだから、村正っぽいのを作ってやりたい。

「えー! だってししょーのかっちょいいじゃん! なんか達人が持つ、みたいな感じでさー」

「そ、そうかー。かっちょいいかー」

「ぴぴゅー」

 ちょろくて悪かったな! いいじゃんか、弟子にかっちょいいとか言われたら嬉しいんだよ!


「よし! 木刀だな、作ってやろうじゃないか」

「やったー!」

 うんうん、喜んでるな。


「あー、でも待てよ。タナカムラクン作った時の木が無いんだな」

「無いの?」

「その辺に生えてるといいんだが……」

 地域が全然違うから、あるかなー?


「ぴゅぴーぴゅ」

「そうしてくれるか、頼むわドラ吉」

「ぴゅい」

 パタパタパタっと飛んで行く。


「どしたの?」

「あの時の木を探してきてくれるそうだ」

「見つかるかなー?」

「ドラ吉ならなんとかするんじゃないか?」

 最近ドラ吉に丸投げするコトが多くなった気がする、何でも出来過ぎるんだよなー。できすぎくん……。


「戻ってくるまでヒマだから、勘を取り戻しておくか」

 久々に作るし。

「木刀作るの?」

「うーん……どうせなら使ったコトの無い素材で練習すっかなー」


 収納を漁ってみよう、何かあったかな……大量にあるといえば、海王龍(リヴァイアサン)素材。

 使えるかな? イヤ、さすがに冒険が過ぎるか。でもどうせ余りまくってるし、使い道も特に無いから……よし! コレにしよう!


 早速収納の中から素材を取り出す。うむ、でかいな。長さで30、イヤ40m……。

「おおー! 何これ?」

海王龍(リヴァイアサン)の中骨の一片だな」

「これで刀作るの?」

「うむ。失敗したら砕いて肥料にでもするさ」

 畑とか持ってないけど。


 まずは巨大な中骨を圧縮して、適度な大きさにする。

 圧縮♪圧縮~♪

 圧縮しながらクズ魔石を合成し、骨の中に魔法の杖機能を作っていく。

 この辺は前回の反省だ、作ってから中に組み込むのは手間なのだ。


 おおー、我ながらすげー。どんどん圧縮されて、直径10cm長さ1mの骨の棒に……。

 つかもうコレ、骨と呼んでいいものなのだろうか?

 ガチガチに圧縮されたソレは、もはや金属としか思えない光沢を放っている。


 持ってみたら……重っ!

 まぁ俺の筋力なら軽いのだけれども、ネルシャの武器にとか絶対無理だな。

 あ、手が滑った。

 トゴオォォン

 おう、地面が凹んじまったぜ。


「ししょー、馬鹿力だったんだね」

「それなりにな」

 これ、このまま木刀型にするのもつまらんかな……。


 よし、ちょっとやってみよう。

 この世界で最も硬い鉱物、チバラギウムの塊を作業台にして、圧縮中骨をハンマー……は持って無いさ。

 先にハンマーだな。硬さや粘り強さ魔法との親和性など、総合的に最高峰の金属であるトカチウムを、ハンマー型に作り上げる。


 改めて作業台に圧縮中骨を乗せて、ハンマーで叩く!……変形しないから意味無いけど。

 やってみたかったんだよぉー! いいじゃんさー!

 物理的な作業では変形しそうも無いので、様々な魔法を駆使して、平たく薄くする。

 量が多いので半分以下に減らして、やはりここは刀にしよう。


 刀身は無骨で背は厚く、それでいて緩やかな反りを持たせる。

 うむ、なかなか良い型の人切り包丁ができた。

 柄と鍔も圧縮中骨を加工して作る。色はツヤ消しの黒。滑り止め等の加工もしっかりしておいた。


「よし、こんなもんだろ」

「完成?」

 作業から一瞬たりとも目を離さなかったネルシャが、目を輝かせながら聞いてくる。

 職人さんの作業を見る子供の目つきだ。

「まぁ、完成でいいだろ。鞘も作んないとだけどな」


 早速鑑定。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 神骨竜刀(名称未設定/名称設定可能)


 属性:打撃・斬撃・刺突・魔法・水・神聖


 攻撃力:164790(+45633/水・+100877/神聖)/打撃

 :150431(+45633/水・+100877/神聖)/斬撃

 : 89115(+45633/水・+100877/神聖)/刺突

()内は指定属性の追加攻撃力


 魔法威力 ×5.198

 魔力消費 ×0.146


 破壊不能・武器破壊・防具無効・空間切断・障壁無効・不死消去・津波創造・所有者転移


 現在の所有者:ナミタロー・ヒラナカ


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 うむ、封印しよう。

 もはやコレは刀ではない、破壊兵器だ。

 山とか大地を切り裂く系、伝説とかの神々の戦争で使われるレベルのヤツ。


 あー……だから『神』が頭に付いているのか! 納得納得。

 刀なのに打撃が一番強力ってトコだけが、納得いかんが。


「ぴゅぴー」

 ドラ吉が帰ってきたので、神骨竜刀を収納にしまう。もう出すコトもあるまい。

「あの木はあったのか?」

「ぴゅい」

 返事と共に、収納から一本の丸太を取り出す。


「お、あったのか。よしよし」

 試しに指で弾いてみたら、キンっという軽い金属音がした。やっぱ木の音とは思えんよなー。

 うむ、さすがドラ吉の仕事……ちゃんと1mほどの長さに切ってある。


「材料もドラ吉のおかげで手に入ったし、ほんじゃ始めますかー」

「楽しみー」

「ぴゅー」

 まずは圧縮丸太にしまーす。圧縮あっ……このくだりはもういいか。

 ちゃんと中に、人造魔石で魔法の杖機能は入れてある。


 あとは木刀の形に削るだけ。

 でもコレ、硬くてなかなか削れないんだよなー……そうだ、さっき作った神骨竜刀でも使おう。

 もう二度と出さない予定だった神骨竜刀を収納から取り出し、圧縮丸太を削ってみる。


 シュラシュラシュラ


 うわー! すげー削れるよ。これ気を付けないと削り過ぎちゃうなー。


 シュラシュラシュラ


 下手な(かんな)使うより、薄く滑らかに削れる。今度カツオブシ削ってみようっと。

 そうだ、用途を忘れないようにこの刀の名前はカンナにしよう。


 シュラシュラシュラ


 こんな感じかな? あとは仕上げだ。

 全体的に滑らかにして、バランスを微妙に調整して……完成。

 よし、手にしっくりくる。


「できたぞ」

「おおー! ししょーのより、かっちょいいかも?」


 んなワケあるかい、全くおんなじだっつーの。

 いいか、ほら。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 神木刀(名称未設定/名称設定可能)


 属性:打撃・斬撃・魔法・神聖


 攻撃力:24928(+14941/神聖)/打撃・56199(+14941/神聖)/斬撃

()内は指定属性の追加攻撃力


 魔法威力 ×3.450

 魔力消費 ×0.172


 自動修復機能・武器防具破壊・障壁無効・不死特攻・所有者転移


 現在の所有者:ナミタロー・ヒラナカ


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 あれ? なんか俺の神木刀タナカムラクンよりも、一割増の性能になってる……。

 コレってアレか? 職人としての俺の腕が上がったという認識でいいのかな?


 正直驚いた。スキルの力で作ってるようなモノだから、上達とかしないとばかり思ってたから。

 一応、俺も成長してたんだね……。

 だとするとこの新しい神木刀は、俺の成長の証ってコトか。

 なんかちょっと嬉しい。


「ししょー、まだー?」

 いけね、自分が成長してたコトの感慨に浸ってて、ネルシャに渡すの忘れてた。

「ほれ、いいのが出来たぞ。俺のより性能が少し良くなってる」

「本当!? ふふふーん♪ てやっ! ていっ! とうっ!」


 早速振り回すネルシャ。

 おもちゃ貰った子供だな、まったく。

「名前を付けられるから、テキトーに付けとけ」

「名前?」

「そう、名前。俺のにもタナカムラクンって名前付けてあるだろ?」

「どんなのでもいいの?」

「いいぞ。でも一生使うモノだから、あとで恥ずかしくなるような名前は止めとけよ」

 キラキラした名前とかな。


 ほんの少し考えた後、何かを決意した顔になるネルシャ。

「カジャバーにする」

 カジャバー? あぁ、カジャ婆か……。

「いいんじゃないか」

「うん……これは今からカジャバー」


「思い入れの強い名前にするのはいいが、大事にし過ぎるなよ」

 それはあくまで道具なんだからな。

「うん、それは大丈夫」

 信用しとくぞ。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「悪魔さんがアップを始めました」

 宿の自分の部屋へ戻るなり、女神様のこのセリフが待っていた。

「また唐突に……」

「唐突じゃないでしょ? 新しい武器作ったんだから、試してみないと」


「見てたんかい」

「まぁねー。ていうかさ、あたしが作った短剣には『勇者の武器に短剣はどうよ?』とか文句言っといて、自分で作ってあげたのは木刀っていうのはどうなのよ?」

 そう言えばそんなコト言ったね。


「イヤ、だってさー、ネルシャがアレがいいって言うから……」

「あんたねー、子供が欲しい物そのまま与えるって、ちょっと保護者として甘すぎない?」

「……えーと、ちょっと自覚はあるかな?」

「そう思うならもうちょっと厳しくしないと」

 育成的にはそこそこ厳しくしてるつもりなんだけどなー。


「あんた今厳しくしてるのにー、とか思ったでしょ?」

 げっ! 読まれた……。

「ふっふっふっ、伊達に神様はやっていないのよ」

 腕組みをしてドヤ顔をする女神様。


「そんな甘く見えるかなー?」

「あたしが言ってるのは、物質的な面ね。食べ物だって魔道具だって装備だって、あんたあの子が欲しがる物全部与えちゃってるじゃない? 少しは我慢する事を覚えさせないと駄目よ」

「食べ物は偏らないよう気を使ってるぞ。好きなモノばっかしは食べさせないようにしてるし」

「トマトは?」

「イヤ、それは俺も嫌いだから……」

「はぁ~、まったく……」

 やれやれとお手上げポーズで溜息をつかれたし。


「あんたがちゃんと教育してくれないと、ろくでもない勇者になったら()()()が後で困るんだからね。そこら辺は頼むわよ」

「実際困ったコトあったりしたの?」

 長い歴史上やっぱりいるんだろうなぁ。


 すると女神様は心底嫌そうな顔でこう言った。

「今現在困ってるわよ。ここのすぐ隣のスコーシァンの土地の勇者が、厄介に育っちゃって参ってるのよー。将軍とかになって、戦争して喜んじゃってるのよねー。だいたいさー……」

「そういう勇者って、何か対処しないの?」

 止まらない愚痴が始まりそうなので、質問で気を逸らしてみた。


「対処? するわよ。これ以上悪い子を続けるようなら、魔王を作って強制的に代替わりしてもらうわ」

「えーと……それって殺すってコトで合ってる?」

「それ以外に無いでしょ?」

 うわー、怖いわー。ネルシャなら大丈夫だろうけど、一応気を付けておこうっと。


「ところで、ひとつ相談があるのですが……」

「なーに?」


 …………


 この日俺は、ついに女神様の愚痴の時間を一日二時間に限定してもらうのに成功したのであった。

 頑張ったぞ! 俺! 良くやったぞ! 俺!


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 次の日に冒険者ギルドでのんびりと依頼を物色していると、慌てた風の中堅冒険者が飛び込んできた。

「てぇへんだ! てぇへんだ!」

「どうした?」

 思わず『どうした?』の後に『ハチ』と付け足してしまいそうになったが、そこは堪える。

「街の外に、でっかい化け物が出た! 今、罪虎の嵐の連中が向かって行ったけど……」


 そう言いかけたところに、第二報……今度は若い女性冒険者だ。胸の自己主張が強い。

「あのでかいの悪魔だよ! 普通の武器がてんで通用しないよ! ネルシャちゃんはどこ!」

「あー、今トイレだな」

 昨日の今日でもう出たか……イヤ、トイレの話でなくて悪魔の話ね。

 女神さん! 早い! 早いよ!


「誰か呼んだー?」

 トイレからのん気にネルシャが出てきた。

「ネルシャちゃん! 大変なのよ! 街の外に悪魔が出たのよ!」

「悪魔!? どこ?」

「北門の方角よ! もう! どうしてこんな近くまで誰も気づかなかったのよ!」

 それはたぶん女神様のせいだね。


「ししょー!」

「んじゃ、行くか」

「モチのロン!」

 言うが早いか、ギルドの外へダッシュで飛び出すネルシャ。

 もちろん左肩にはドラ吉を乗せて……。

 俺も行くとするか。


 門に向かって走っていくと、冒険者たちの大騒ぎが聞こえてきた。

「罪虎の嵐の連中が、もうそろそろヤバい! ネルシャちゃんはまだか!」

「来たぞ! ネルシャちゃんだ!」

「勇者が来たぞ!」

「遠距離攻撃で援護して、罪虎の嵐を下がらせろ!」

 悪魔はもう、北門のすぐそばまでやってきていた。

 つか、『ざいこのあらし』ってパーティー名はどうなのよ。商人の依頼とか、縁起悪くてやらせてもらえなさそうな名前なんだがさ。


 今回の悪魔はデカかった。身長は5mにもなるだろうか……筋骨隆々としたその体躯には、凶暴な意思と殺気が漲っていた。

 既にネルシャは悪魔と対峙している。

 悪魔に臆するコトも無く、もちろん侮る風も無い。しっかりとした自然体で殺気を受け流し、殺すという意思を明確に自らの肉体に伝えていた。


「今回は問答無用でいい。ネルシャ、全力で倒せ」

「ん」

 返事は簡潔だったが、一瞬でその場の空気が必殺のフィールドとなった。

 訓練でも格下相手の依頼でもない、強者との殺し合いが始まる……。


 まず悪魔がその暴虐とも言える爪を振り回したが、ネルシャは軽々と避ける。敏捷3倍装備のおかげでは無い、紛うことなき実力だ。

 うむ、良くここまで育ったな……俺は師匠として嬉しいぞ。


 爪の回避は完璧だが、なかなか悪魔の懐にも飛び込めない。

 単純に至近距離まで近づくだけなら簡単ではあるが、距離を詰めた場合の対応が読めない。

 思わぬ攻撃方法が無いとも限らないのだ。

 なので近づいた時に余裕が無くてはならない、というのが飛び込みにくい理由だ。


 たが恐らくネルシャは勇気を持って飛び込むだろう、ネルシャは勇者なのだ。

 エサは撒いてある、さっきからネルシャは地上での平面的な動きしかしていない。

 そして空中に飛ぶタイミングを見計らって……今だ!


「やぁー!!」

 悪魔の両手の爪を避けるべく垂直に飛び上がったネルシャが、そのまま全力で直角に水平移動した。

 そしてそのまま一気に、神木刀カジャバーを胴薙ぎに振るう。もちろん悪魔の爪は追い付かない。

 よし! まずは先手の一撃。


 ズバシャ!!


 ……あれ?


「ししょー! やっぱりししょーの木刀って凄い!」

 着地したネルシャがキラキラ目で愛刀を眺めている。


 まぁ、なんだ……一言で言うと、一撃で終わっちゃった。

 目の前の悪魔の死骸は、暴力的な切られ方で見事に真っ二つになっていた。

 そして俺は、ひとつのコトに思い至った。


 考えてみたら、俺ってまともに神木刀を振るったコトが無かったなー……と。

 ほら、普段から加減してたからさー。

 こんな威力だったんだね。

 勇者に持たせたら、ちょっと過剰戦力かもしんない。


 ともかく、ネルシャは無事に悪魔を倒したのであった。

 めでたしめでたし。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「あんたさー、あの武器に勇者が死んだときに消える機能付けるの忘れたでしょ」

「あ……」

「『あ……』じゃないわよ。忘れないうちに付けてきなさい」

「えー、今からー?」

「今すぐよ」

「へーい……」

 全てめでたしとはいかないもんだ、まさか宿に戻るなり女神様にお小言を食らうとはなー。

 まぁ忘れてた俺が悪いのだが。


 …………


 ネルシャは部屋に入るなり眠ってしまったようなので、起こさないよう静かにネルシャの部屋に入る。

 部屋のカギなど俺には無いも同然だが、入る時には一応隠密スキルをフル稼働させておく。

 一緒の部屋で寝ているドラ吉が騒ぐと、ネルシャまで起こしてしまうからだ。


 こっそりと神木刀に近づき、手に取って改造開始。

 ネルシャの生命反応とリンクさせて、死んで一定時間経過すると消えるように設定する。

 よし、ミッションコンプリート。


 一息ついて部屋から出ようとしたら、ネルシャが大きく寝返りを打ちながら布団を蹴飛ばした。

 まったくしゃーねーなー、おなか出して寝ると風邪ひくぞー。


 布団を掛けようとした時に気が付いた。

 ネルシャの胸が、びみょーに膨らんでいるコトに。

 べ、別にエロいこと考えて無いんだからね! ただ目に付いちゃっただけでさ……。


 ほら、女の子としての成長の証を確認しただけというか……そんな感じ?


 それにしても、そうか膨らんできたか……下着とかどうすりゃいいんだろう?


 ネルシャのお母さんにでも相談してみるかなー。

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