セカンド・リアル 3
FIGHT
対戦が始まる。
相手プレイヤーの装備は、右手に握られた剣と、左腕に装備された丸い盾だ。
ナイトは最も安定感のある職業で、攻撃と防御のバランスが取れている。
頭上に表示されたプレイヤーネームは「GM」だ。全く聞き覚えのない名前だ。
雄也は自分のアバター(タスク)を一直線に相手プレイヤーへ向かわせる。
背中に背負った剣を引き抜き、攻撃開始。
ガキン!
当然のように相手は盾で剣を防ぐ。
雄也はそのまま攻撃ボタンを連打する。
タスクの斬撃を相手は盾で防ぎ続ける。
…もう少しで十五連撃。
ヒュッ
不意に剣が空を斬る。相手がバックステップをとったのだ。そのまま盾をタスクへ向けてぶつける。
「シールドバッシュ!」
盾スキルの一つ。シールドバッシュ。
盾で相手を攻撃するスキルで、防御もかねた攻撃である。そして、くらった相手はノックバックをするという能力も兼ね備えているため、上位プレイヤーでも使用者は多い。
後方へタスクが吹き飛びノックバックする。
画面上部にある体力ゲージが五パーセントほど削れた。
…つよい
この対戦で勝つには、先読みが必要になる。
「ふー」
息を履いて精神を落ち着かせる。
そのまま空気を一気に吸って画面を睨む。
ゲーム機を動かし、タスクを相手に突っ込ませる。
速効で接近し、攻撃ボタンを連打する。
タスクが攻撃を相手の盾に叩き込む。雄也は四回攻撃をした後、回避ボタンを押してバックステップする。
「これでどうだ」
雄也は順番通りに決められたボタンを押してスキル、フラッシュスタブを発動する。
フラッシュスタブ
片手剣スキルの一つで、五メートルの距離を一瞬で詰める突き攻撃だ。威力もかなり高く、発動モーションも小さいので雄也も使用している。片手剣の突き技タイプのスキルでは上位に入る。
フラッシュスタブを使用するのは距離がある場合だが、今は完全に近距離なので、このスキルを使う事は読めないだろうと思い、雄也は使用したのだ。
予想通り、突きは相手の左肩を貫通する。
頭上に表示された体力ゲージが三割削れた。
「よし!」
攻撃をクリーンヒットさせたので、声を上げる。
これによって左腕が使用出来ず、盾を使う事は出来ないだろう。
雄也は攻撃ボタンを連打して怒涛の攻撃を仕掛ける。
しかし、相手もかなりの手練、攻撃全てを右手の剣で捌かれる。
ここで、画面の右上に「ア」の文字が表示される。タスクのアビリティ、インフィニティ・アクセルが発動したのだ。
斬撃の速度が加速し始める。相手は剣で捌けていたが、その剣を弾いて体に四回剣を切り込む。
相手の体力ゲージが二割削れる。その直後、相手は大きくバックステップする。
「逃がすか!」
すぐにタスクを前進させる。もちろん攻撃ボタンは連打したままだ。
ふいに、相手が霞む勢いで接近する。そして、いきなりタスクの前に姿を現し、腹部に剣を突き刺す。その間ほんの一瞬。この速さはスキルを使わなければ出来ない速さだ。これは、先程タスクが使ったフラッシュスタブだ。発動モーションが見えなかったのは、アビリティを発動して油断したからだろう。
一気に画面上部についた体力ゲージが六割消し飛ぶ。
「なっ!」
すぐに相手はバックステップをとって距離をとる。
「やろぉ」
ここで、大きく息を吸う。怒りに身を任せたら何もかも終わってしまう。
すぐに距離を詰めて攻撃に入る。しかし、今度は攻撃したらすぐにバックステップをとった。攻撃を連続するとアビリティを使用してしまうため、連撃を途中で止めているのだ。だが、このままでは勝てない。
「何かないのか。逆転する方法」
思考を高速回転させ、この状況を打開する作を考える。
「これなら」
やるだけのことはやるしか無いので、雄也はゲーム機に力を込めて、スキルを使用させる。
フラッシュスタブだ。
一瞬でタスクが突きを放つ。しかし、相手は左にステップして攻撃を避ける。このスキルは速いがタイミングを掴めば簡単に回避できる。
相手が剣を振り上げる。攻撃モーション。
「きた!」
雄也はこれを狙っていたのだ。斬撃を左腕に受ける。体力ゲージが二割削れる。しかし、このチャンスを無駄にするつもりは無い。
「おおおおおお」
攻撃ボタンを連打する。それに応えてタスクは相手に斬撃を繰り出す。
相手は反応が遅れ、何度も攻撃をくらう。体力ゲージがじわじわと削れていく。タスクの攻撃から逃れた時には体力ゲージが一割を切っていた。
タスクの体力ゲージは残り一割と少し。
雄也は決められたボタンを押してスキル、ソードフライを発動する。
ソードフライ
片手剣スキルの一つで、横に剣を振り、斬撃を飛ばす中距離攻撃スキルだ。このスキルは、盾で防げる他、剣で弾けるので、使う人はほとんどいない。
しかし、雄也の狙いは相手ではなく、相手の少し手前の地面だ。
斬撃が地面に直撃すると、爆音と共に砂が大きく舞って相手を隠す。
「くらえ!」
タスクはフラッシュスタブを発動させる。
ドス!
効果音がゲーム機から流れ出る。
砂煙が晴れると、タスクの剣は相手の体を貫いていた。体力ゲージはゼロ。
目の前でアバターが消滅する。
WINNER
「勝ったぁ。疲れたぁ」
そう言って、雄也は枕に顔を伏せた。