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亡霊のアルゴリズム(冷徹なる処刑装置)  作者: 風風風


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【第1部】亡霊の混迷:手探りの犯罪インフラ(2024-2026)  第1章:闇バイトの崩壊(5) 決別と引き金

「現場の実行役(トカゲの尻尾)」だけではなく、組織の頭脳である「指示役」や、ターゲットの資産情報を流す「案件屋」、そして実行役を調達する「リクルーター」といった中枢の検挙が相次いでいる。

これまでは「事件が起きてから動く」のが基本だったが、警察の捜査手法も劇的に進化した。捜査員が自ら架空の身分証を使ってSNSの「闇バイト」に応募し、組織の内部へ潜入する手法を本格化させている。これにより、強盗や詐欺が実行される前の「予備段階」で拠点を叩き、犯罪を未然に防ぐ形での摘発(強盗予備容疑など)が急増しているのだ。それでもなお、……。

亮太がグループに登録した翌日、事態は拓海の思惑を超えて最悪の方向に転がった。

亮太が「やっぱりこのバイト、怪しすぎる」と言い出し、指示役からの連絡を無視してテレグラムのアプリを削除してしまったのだ。


その数時間後、拓海のスマートフォンが狂ったように震え出した。画面に表示されたのは、マネージャーからの冷徹な宣告だった。


『T、お前が紹介した「R」がバックれた。連帯責任だ。今すぐRを連れて、指定する場所へ来い。来なければ、お前とRの実家に同時に“回収班”を向かわせる』


添付されていたのは、亮太の実家の写真と、拓海の母親がパート先から出てくる瞬間の盗撮写真だった。すでに逃げ道などどこにもないことを、冷厳な事実が突きつけていた。


拓海は青ざめた顔で亮太の Augustアパートへ駆け込み、「母さんが殺されるんだ!」と泣きながらすべてを打ち明けた。亮太は激しく激昂し、拓海の胸ぐらをつかんだが、送られてきた盗撮写真の数々を見て、恐怖に顔を歪ませた。若者二人の絆は、トクリュウの暴力的な脅迫の前に、一瞬で瓦解した。


「行くしかないんだよ……行かなきゃ、本当にみんな殺される……!」


二人が指示されたのは、深夜の港区にある薄暗い雑居ビルの一室だった。重い鉄の扉を開けると、室内には異様な緊張感が漂っていた。パイプ椅子に座る二人の前に現れたのは、高級ブランド服を着崩し、冷酷な目をギラつかせた男――トクリュウの現場管理者である川谷かわたにだった。


川谷は無言のまま、自分のスマートフォンを二人の目の前に放り出した。画面で再生されたのは、暗い山林で、血まみれになりながら許しを請う若い男の動画だった。鈍い打撃音と、男の悲鳴が狭い室内に響き渡る。


「これが、ウチをナメてバックれようとした奴の末路だ」


川谷は低く、抑揚のない声で言った。

「お前らの身元も、家族の場所も、ぜんぶ上の『指示役』が握ってる。逃げられると思うなよ」


川谷は二人の足元に、バールと粘着テープ、そして新たなスマートフォンを投げ落とした。


「今から指示役の『黒金くろがね』から連絡がある。狙うのは目黒の資産家宅だ。今夜、二人で叩いてこい。しくじったら、お前らの母親がどうなるか……分かってるな?」


その瞬間、床に落ちたスマートフォンがブーという不気味なバイブ音を立て、画面に『黒金』という名からの着信を表示した。


引き返すことのできない破滅への引き金が、ついに引かれた。拓海と亮太は、互いに顔を見合わせることすらできず、ただ震える手でそのスマートフォンを拾い上げるしかなかった。


©2026 [風風風]. All rights reserved.

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