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亡霊のアルゴリズム(冷徹なる処刑装置)  作者: 風風風


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【第2部】「自律分散型スマート集落」  第4章:プロトタイプの根本的な再構築(5) 繋(つな)がる手

「……はい。気をつけてください。絶対に、答えないでください」

深々と頭を下げる蓮の目から、一筋の涙がこぼれ落ちた。

犯した罪が消えることはない。

だが、自分の言葉が誰か一人の未来を守る力になるのなら――

蓮は逃げずに語り続けることを、心に誓っていた。

夕暮れ時の警視庁前。重厚なビルを見上げる松永警部補の隣に、志村刑事が缶コーヒーを持って歩み寄ってきた。


「松永さん、片桐くんの防犯サロンでの活動、各所で話題になっているようですよ。彼のリアルな体験談を聞いて、不審な訪問者を追い返せたっていう高齢者からの感謝の連絡も入っているそうです」


志村からコーヒーを受け取った松永は、ふっと目を細めて一口含んだ。


「そうか。あいつはあいつなりに、ちゃんと前に進もうとしてるんだな」


神崎の逮捕から始まった「案件屋」追放の捜査網は、海外指示役の拘束、国内の実行役や道具屋の一網打尽を経て、ひとつの区切りを迎えていた。闇バイトという甘い罠に誘い込まれた若者を「人質」にし、高齢者の暮らしを破壊していた「見えない名簿」のネットワークは、警察と市民の連携によって確実に断ち切られたのだ。


「松永さん。トクリュウの奴ら、形を変えてまた新しい『案件』を考えてくるでしょうか」


志村の問いに、松永は力強く首を振った。


「形を変えて来ようが関係ない。俺たちが『情報の入口』を叩き潰し続ける限り、奴らに勝ち目はないさ。それに……」


松永はポケットに手を突っ込み、夕日に染まる街並みを見渡した。


「闇バイトの仕掛けを見抜き、情報を安易に渡さない市民が増えれば、案件屋は商売上がったりだ。警察のサイバー捜査と、社会全体の防犯の意識。この二つが繋がっている限り、奴らの見えない名簿に、次の名前が書かれることはない」


その頃、小さめの事務所で新しい仕事を終えた蓮は、通りに出た。

見上げた空には、街灯のあたたかな光がぽつぽつと灯り始めている。


かつては恐怖でしか見えなかった世田谷の街並み。だが今、そこにはそれぞれの家族が過ごす、かけがえのない平穏な日常が広がっていた。


(もう、誰の平穏も奪わせない)


胸の中で強く誓いながら、片桐蓮は歩き出した。

闇の先に待っていた、自分自身の足で歩む新しい未来路へ向かって。


――【第一部:見えない名簿】完――

2030年春。東南アジアの混迷する熱帯都市の片隅で、

カタリストは外界との物理的・デジタル的な接触をほぼ完全に絶っていた。

かつて配下に置いていた現地のハッカーたちも、連絡に利用していた暗号化掲示板も、

すべて過去の遺物として捨て去った。今の彼にとって、……。


明日も 19:20 に投稿します。

よろしくお願いいたします。

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