【第1部】亡霊の混迷:手探りの犯罪インフラ(2024-2026) 第4章:冷徹な仮面(3) 裁きの光と影
評価ポイント、ありがとうございます。
ブックマークご登録、ありがとうございます。
ご感想をお寄せくださりまして、ありがとうございます。
【第4章(3)スタート!/毎日 19:20 更新予定です】
ご覧いただきありがとうございます。
それでは、最新話をお楽しみください!
東京地方裁判所の法廷。冷たい空気の中に、厳かな木槌の音が響くような緊張感が満ちていた。
証言台の前に立つ宮坂拓海は、一ヶ月前と比べ物にならないほど痩せ細り、黒いスーツの肩をすぼめていた。
「被告人を、懲役三年、執行猶予五年に処する」
裁判長が主文を読み上げた瞬間、傍聴席の後方にいた拓海の母親が、口元を押さえて声を漏らした。実刑は免れた。バールを手に邸宅へ侵入し、強盗の予備行為に及んだことは紛れもない重大犯罪だったが、組織による熾烈な強迫の証拠ログ、そして警察の捜査への全面的な協力が考慮された結果の、極めて異例な判決だった。
しかし、拓海の顔に歓喜の表情はなかった。執行猶予がついたとはいえ、彼は前科者となったのだ。大学からはすでに除籍処分が下り、かつての友人たちとの繋がりもすべて断絶した。
閉廷後、地下の廊下で拓海は、荷物をまとめる松永警部補と対峙していた。
「宮坂」
松永は足を止め、ポケットに手を突っ込んだまま拓海を見つめた。
「刑務所に行かずに済んだ。だが、これで終わりじゃない。お前が背負った『前科』という十字架は、これから先の人生で何度も重くのしかかってくるぞ」
「……分かっています」
拓海は深く頭を下げた。涙はもう出尽くしていた。
「でも、生きて、母さんのそばにいられるだけで……。俺、一からやり直します。地道に、ちゃんと働いて、犯してしまった罪を一生考えて生きていきます」
「その言葉を忘れるな」
松永は拓海の肩をぽんと一度だけ叩き、背を向けて歩き出した。
同じ日、もう一人の裁判――拓海が巻き込んでしまった親友、亮太の公判も行われていた。亮太にも同様の判決が下ったが、二人の間にあった純粋な友情は、おそらく二度と戻らないのではないか。トクリュウというシステムは、若者たちのささやかな未来だけでなく、彼らが築いてきた人間関係の絆までを完全にすり潰していくのだった。
警視庁への帰路、松永はスマートフォンのニュース画面を見ていた。
『国際トクリュウ幹部・石川被告に懲役十五年の実刑判決――』
首謀者への厳しい求刑がトップニュースを飾っている。警察が威信をかけて挑んだ大捜査網は、確かに悪の要塞を突き崩し、首謀者たちに相応の報いを受けさせた。
だが、松永の目はタイムラインのさらに下、SNSの片隅へと向けられていた。
そこには、ハルクとはまた違う名前のインフルエンサーが、全く同じ手口で『簡単高収入のホワイト案件』という言葉を呟いている投稿があった。アカウントの裏にいるのは、壊滅した組織の残党か、それとも新たな怪物か。
ひとつの組織を検挙しても、SNSという大海原がある限り、罠は姿を変えて何度でも増殖する。
松永は画面を消し、どんよりとした曇り空を見上げた。警察の戦いは終わらない。そしてそれ以上に、若者たちが自らの目で「光と闇」を見極めるための戦いもまた、ここから始まるのだと痛感しながら。
©2026 [風風風]. All rights reserved.
【読者の皆様へお願い】
ここまでお読みいただき、本当にありがとうございます!
少しでも面白いと思っていただけたら、ページ下部にある
**【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】**にして応援していただけると大変励みになります!
皆様からの評価一つひとつが、執筆の最大のエネルギーです!
応援のほど、何卒よろしくお願いいたします!
(次回更新は 明日 19:20 を予定しております。お楽しみに!)




