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異界のアイオライト  作者: アンディオス
六・五章 父親はカッコイイ!(ヤケクソ)
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番外編 ろくでなしのクソ親父

設定の矛盾を見つけてしまった……(驚愕)

治します

 何とも言えない虚脱感が全身を襲ってる。

 一歩近づくごとに足が重くなってるのがわかる。

 何と言うか雨の日に外に出かけなくちゃいけない日みたいな、とにかく気分が乗らねぇ。


「とはいえ、着いちまったんだよなぁ……」


 ユグレシア王国騎士団第一支部、ユグレシア王国騎士団の本部に当たる所で、(うち)のクソ親父が仕事をしている場所でもある。

 姉貴の仕事現場は見たことあるが、姉貴曰くクソ親父は姉貴の仕事の倍を涼しい顔でこなすらしい。

 なので滅多に家に帰ってこない。ってのはただの言い訳だろうけどな。


「どこだったかな、覚えてないんだよな」


 グレイは珍しくクソ親父からお使い(仕事)を頼まれたから頼れる相手がいないんだよな。

 余計なことしやがってクソが。


 迷路が如く右へ左へと枝分かれしている本部の中を彷徨う事、驚異の数時間、イライラが募っていく。


 はぁー! 案内板くらい作っとけや! 道わかんないんだよ! どこだよここ!

 作った奴恨む、マジで恨む、未来永劫許さんからなぁー!!


「んぁー!!! ぶっ壊してやろうかこのエンブレムゥー!!」


 計七度、もう見飽きた、ではなくもはや視界に入るだけで魔力が高まってぶっ壊す(デストロイ)しそうなくらい殺意に近い物が込められている。

 ユグドラシルを模った黄金のエンブレムがきらりと輝く、輝く……かがや、く。


「グ、クァアァぁぁああ!!」


 堪え切れなくなって発狂してしまうのも無理はない。

 もともとアルベリは魔力での探知が苦手であった。

 苦手である自覚はあったものの「戦いでは使わねぇし? 俺にはグレイがいるし?」と言い訳をして今の今まで習得してこなかったのだ。

 痛恨のミスと言わずして何といえばいいのだろうか。


 たまりにたまったフラストレーションはただ一度の咆哮では収まらない。

 だがアルベリにも理性はある。物にあたらないと言う理性は。


「んがぁあぁぁぁあああ!!」


 できうる最大出力で魔力を開放し、何度も迷った道を何も考えずに駆け抜けていく。


 もう何も知らん! 走りゃあどっかには着くだろぉが!!

 ってかクソ親父がグレイにお使い(仕事)出してなきゃもっとスムーズに行けたってのによぉぉ!!!


「ぬぁあぁぁあ!!」



 ──更に数時間後


「ふんッ!!」


 バキッと何かが壊れた音がした。

 粉々になり原形をとどめていない黄金のエンブレムが無残に散る。

 それと同時にアルベリの見ていた景色は別の物へと変わる。

 幼い時、一度来た事がある場所。本部の、受付場所。


 誰もいなかった先ほどまでとは違い、右からも左からも、果ては前も後ろからも声が聞こえる。

 長い間聞くことのできなかった音だ。


「ふうぅぅぅ」


 冷静だ。俺は冷静だ。よーし、グッボーイ、グッボーイ。落ち着けぇ~?


「あのぉ。すいません。ビリアン・ラーフィットはどこにいますかねぇ(怒気)」


 おっといけねぇ、俺はクールだ。空間座標をずらすゴミなからくりがあのクソッたれエンブレムにあったのに気が付いた時だって冷静だったじゃないか。

 冷静にグーパン入れただけじゃないか。


「……え、え~っとですね。……ビリアン官長は、こちらにぃ……」


 うぐっ……明らかに怯えてる。クソッ、俺のアンガーマネジメントはここまで落ちぶれていたのかっ!

 よし、深呼吸をしておこう。じゃなきゃ出会い頭にぶっ壊(デストロイ)しちまうZE☆


 ビクついてる受付嬢が先導してくれている中、特に会話もなく歩く。

 本当は受付嬢が場の空気を和ませようと世間話を切り出そうとしていたが急に深呼吸をし始めて怖くなっただけなのだが……。


「あの、あのぉ~。ビリアン官長ぉ~、お、お、お客様です」


 恐る恐ると言った様子でノックをして、返事を待っている。

 こうも小刻みに震えられて俺の立てる物音にいちいちビクつかれると申し訳なくなる。


「ああ、入れ」


 聞きたくもない声が聞こえて来た。

 深く重い樹の幹みたいにしっかりとした声が扉越しに聞こえて来た。

 それにより、奥にクソ親父がいる事が確定してしまった。

 自分で足を誇んだものの、出来る事なら会いたくなかったし、なんか用事でもあって居なくて「残念だったなー」くらいで終わらせたかった。


 だがそうもいかない。これは自分で臨んだことなのだから。


「入るぜ、クソ親父」


 そう言って俺は、ノブに手をかけた。


 ──ガチャ。


 その音が鳴った時、静寂が訪れた。


「ああ、鍵をかけっぱなしだった。今から開けよう、少しだけ待ってくれ」


 その時、受付嬢のミミは確かに聞いた。

 プチっと人の血管が切れる音が、確かに聞こえた。

 血管が切れる、とは比喩の話だ。外傷で切れる事はあるが、感情が高まる程度では切れるはずはない。

 見ようにも不安と恐怖で身体が思うように動かないが、見ないのもそれはそれで怖い。

 壊れたブリキのようにギギギと首をアルベリの方に向けた事を直ぐに後悔する。


「…………」


 もはや怒っていると言う域を超えた、言うなれば暗黒微笑……そう形容できるだろう。

 頬を引く付かせながら青筋を立てて拳をプルプルと震わせている。


(官長ぉ~、はやくしてくださいぃ~。私もう一秒もこの空気に耐えれそうにないですぅ~)


 その願いが届いたのか、ガチャリと音を立てて扉が開かれた。


「アル、久しぶりだな。大きくなったな」


「……ああ、てめぇも変わらねぇみたいで何よりだよ」


 険悪な雰囲気、と言う訳でもないらしい。一方が邪険に扱い、もう一方はそれに気づいてない。

 少しずれた関係のように見える。


「それはそうとぉ、案内終わったのでかえりますぅ。失礼し──」

「待て、シープ君。君はここに居たまえ」


 ビリアンはそそくさとこの場を後にしようとしたシープを片手で引き留める。

 またもギギギと錆びたブリキの様な動き方で振り返るシープ。

 なんでですか……? とでも言いたげな視線をビリアンに送っている。


「いや、君と言う第三者がいないとアルのブレーキが壊れそうでね。アルに負ける気はないが、建物を壊す訳にもいかんしな。まぁ御託を並べはしたが、官長命令だ。ここに居たまえ」


「ぴゃぁ……。そんなご無体なぁ」


 蚊の鳴くような声で悲鳴を上げ、よたよたとビリアンに近づき、不平を訴えている。

 そんなに俺怖いかね……ショック。いや、自業自得か。


「で、アルは何の用で来たのかだが……」


「ああ、それは──」

「もう知ってる。と言うよりかは察してる。アルが俺を頼るなんて一つくらいだろう」


 ……っく。堪えろ。ただ話を遮られただけじゃないか。クール! ソークール!!


「まぁそうだけどよ。それにし──」

「それはそうと遅かったな。グレイちゃんから聞いた予定では朝早くにはついてたはずなんだが」


 あー、殴りた。でも、我慢しろ。強くなるためだ、我慢、我慢。


「着いたのは朝だけど変な能力かなんかで迷わされたんだよ。あと息子のメイドをちゃん付けすんなよ、気色悪い」


「……ふむ、グレイちゃんからは許可を得てるんだがな……。

 というかアル、お前俺のいたずらで仕掛けた子供用の罠でこんなに時間喰わされたのか。お陰で今日分の仕事を終えて茶を嗜む時間まであったぞ」


「は……」


「お前は昔から探知の類は苦手だったからな。流石に上達したとは思ってたんだが。ははっ」


 ──ブチッ


 ぶっ殺してやろうかこんのクソ親父がぁ……。


「…………っ、っぅ!」


 自分の歯を嚙み砕きそうなくらい噛み締める。そうでもしないと能力使ってまで殴りそうになる。

 ただ、もう限界だ。一発ぶん殴ってやる。


 頭の中が沸騰した感覚に包まれ、視界が真っ赤になる。ずっと昔から、母ちゃんが病気で死にかけてたあの日あの時から、なんも変わってねぇクソ親父を一発ぶん殴ってやる。


 そう決心して、手を上に出そうとして……止まった。

 いや、正確には()()()()()

 服の裾が、別の場所に縫い留められていた。


「……怖いですけどぉ、それは、ダメです。官長には手を出させません」


 横を見ると、先程まで震えていたのは何処のどいつだと言いたくなるほどの気迫を放ったシープがいた。

 殺気は向けられていない、だが俺が無理にでもこの拘束を解こうものなら即座に命を狙う事は出来るだろう。

 たとえ受付嬢でも、本部に所属している騎士の一人だ。


「わーってる。ちょっと熱くなっただけだ。もう殴ろうとしねぇよ。だからコレ解いてくれ。大事な服なんだ」


「はいぃ、わかってくれたならよかったですぅ。それにその服、大事にしてるのが良くわかりますぅ。心が痛みましたが、戦う事にならなくて良かったですぅ」


 シュルシュルと音を立てて結び目がほどけて、服は元の形に戻っていく。


 はっ、と乾いた笑いが出て来る。今は音を立てて戻っている。つまりさっきは音もたてずにやってたって事だ。

 俺の目指している所はまだまだ、遠いみたいだ。


「うん。仲良くなってくれて良かった。というかアルは頭が固いな。冗談に決まっているだろう、あの迷路は防犯システムの一環だ」


「っち、先に言えや、クソ親父」


「いう前に殺気立ってた奴に言われたくないな。で、用件は天悪の炎(ベリアル)の事だと予想してるんだが、合ってるか?」


「ああ、そうだよ。元の所有者かつ全世代の中で一番の使い手とまで言われた親父だから聞きに来たんだ。天悪の炎(ベリアル)のもう一つの能力を」


 もう一つの能力、これを知ったきっかけはクソ親父の英雄譚だ。実の父親が英雄とか気持ち悪いが、実力と功績は本物だからな。


「いいぞ、教えてやる」


「じゃあさっそ──」

「と言いたいところだが生憎仕事があるんだ」


 こいつまた途中で遮ってきやがって……っつーか。


「仕事終わったんじゃなかったのかよ」


「外行きの仕事だったんだ。入違った時の事を考えれば俺の対応は至極全うだと思うが……」


「その背景を知らねぇ奴からしたら意味不明な妄言はいてる奴にしか見えねぇんだよクソ親父」


「……そうか、まぁいい。お前も早く知りたいだろうしな、ついてこい。俺の仕事を手伝わせてやる」


「なんでそんな上から目線なのか知らねぇが、仕方ねぇ。とっとと案内しやがれ」


 一秒でも長くこのクソ親父と一緒に居たくないからな。早く終わること居越したことは無い。

 そうと決まれば、とすぐに準備をする。と言ってもする準備がないんだがな。

 ともかく、クソ親父の後について行けば道中で何かしらの説明があるだろ。

 とっとと終わらせてマサミチ達と話したいぜ。




「あ、シープ君。君もついてきなさい」

「ぴぇっ! 勘弁して下さ~いぃ」

「泣き言言ってないで、ほら早く」

「パワハラですよぅ~」

シープ 能力 糸操作

完全にグレイの劣化版能力だが、全人類が衣服を身に着けている現代において、能力の発動条件である『衣服や布がある』が無条件で達成できるから強い。

首元の糸で縛って窒息とかも……(小声)

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