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48. 春キャベツはお味噌汁に



「ほら、見てください。立派な春キャベツでしょう?」

「……ああ」

「だ・か・ら、いい加減に離してくれませんかねぇ」


 結婚の申し出を受けてからというもの、ケンさんが一切私から離れてくれない。最初は可愛いわねぇなんて思っていたけれど……。

 正直、農作業の邪魔。

 後ろから抱きしめられてちゃキャベツの収穫もできませんよ。体格差を考えてください。体格差を。


「嫌だ」

「どうして」

「ずっと何を言っても老人のような慈愛で返されてたんだ。このくらい許されるべきだろう」


 いや、まぁ、実際老人なのですが。でも、前世のあなたと一緒に老人になったんですよ、なんて言えませんし。


「春キャベツが食べられなくていいんですか?」

「それは困る」

「食べたいでしょう?」

「食べたい」


 だから早く離しなさいなという風にあしらえば、素直に離れていくケンさん。

 前世はもう少しわかりにくい人だった気がするのだけど……時代ってやつかしら。亭主関白が当たり前だったものね。でもまあ砂糖と塩を間違えたりしてどれだけ不味いご飯だったとしても、この人はちゃぶ台返しなんてしなかったけれど。


「大きいな」

「大きく育てるには肥料と土寄せが大事なんですよ」


 畑にずらりと並ぶ大玉の春キャベツ。壮観ねぇ。

 秋に頑張って種を蒔いた甲斐があったわ。キャベツは水をたっぷり与えつつ、あげすぎには注意なのよね。春キャベツ特有のとう立ちもしなくてよかったわ。ずっと寒いとできる前に花芽が出てなってしまうのよね。

 さてさて、見た目は十分だけれど……うん、葉も硬くしまってるわね。採り頃よ。


「はい、包丁持って」

「ん」

「よぉく見ていてくださいね」


 こう玉を手で押し出すようにして、株元を包丁で切る。

 これで収穫完了。


「この葉はどうするんだ?」

「畑を片付けるときに一緒にやりますよ。基本肥料になりますから」


 捨てるなんて勿体無い。昔は肥溜めだってあったんですからね。それを撒いていたら金の指輪を拾った人だっていたんですから。どっかのお金持ちがトイレにでも落っことしたんだろって豪快に笑ってましたけれど。

 なんて思い出している間にいつのまに畑からキャベツがなくなって……さすがケンさん。仕事が早い。


「相変わらずですねぇ」

「学園の仕事がなくなったからな。力があり余っている」

「そんなに負担だったんですか」


 なくなったって思い出すだけで嬉しそうな顔しちゃって。殿下はものすごく嫌がっていましたけど。本当はただただケンさんともっと一緒にいたかっただけなんじゃないか、と思うほどに。まぁでも、シャーロット様と少しは仲良くなられたようでよかったわ。


「さ、今日は春キャベツでお味噌汁ですよ」


 春キャベツはとっても甘くて柔らかいのが特徴的。だから煮込み料理などには向かないのだけれど……お味噌汁は別よ。油揚げと春キャベツは相性抜群ですからね。ああ、でも塩昆布と胡麻油でサラダにしても美味しいの。居酒屋とかでよくでるくらい、お酒に合って……。

 

「キャベツを、味噌汁に?」

「甘くて美味しいんですよ」

「春とか新とかつくと甘いのか」


 全部が全部そういうわけではありませんが……苦いのもありますし……。


「寒いから凍らないようにと、糖を溜め込むんです。だから、野菜にもよりますけど甘くなるものが多いんですよ」


 と答えたところでお勝手に入って、キャベツを洗いまして。

 まずはキャベツをざく切りに。油揚げは細く切って。

 出汁はすでにとってありますからね。これを沸かして、切ったキャベツを入れます。油揚げも入れて。火が通ったら味噌を溶かす。

 はい、簡単なのにとっても美味しいキャベツのお味噌汁の完成。


「ちょっと待ってくださいな。今よそいますから」


 すぐできたからか髪をぴょこぴょこと揺らして待っているケンさん。

 可愛いんだから。


「はい、どうぞ」

「いただきます」

「めしあがれ」


 私もちょっと飲みますかね。

 うん、キャベツの甘みがよく出てるわぁ。油揚げの油とよく合う。

 キャベツ自体もしっとりトロッと柔らかくて甘い。上出来上出来。


「うまい」

「それはよかった」

「もう一杯」

「残りはご飯の時用です」



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隣国の王太子様、ノラ悪役令嬢にごはんをあげないでください
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