表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/71

21. じゃがバターは罪ねぇ



「言われた通り汚れてもいい服で来たが」

「ええ、その格好くらいがちょうどいいわね」


 今日も今日とて、ケネス様を呼び出しまして。

 気持ちのいい秋の快晴、目の前に広がるのは芋畑。


「……これは、またさつまいもか?」

「何言ってるんですか、よく見て下さい。葉が違うでしょう?」

「……よくわからない」


 まー! ここまで収穫を手伝わせたというのに。ケネス様もまだまだねぇ。


「これは、じゃがいもですよ」

「結局芋じゃないか」

「それはそうですけど、全然違います!」


 さつまいもは根が大きくなったものだけれど、じゃがいもは茎が大きくなったもの。ついでに言えば、花も全然違う。さつまいもは朝顔みたいな花が咲くのだけれど、じゃがいもは茄子に似たのが咲く。確か分類とかなんやらが違うような話も聞いたけれど……まあ細かいことは気にしない。


「さ、掘りますよ!」

「……ああ」

「今日はお預けじゃないですからね。終わったらちゃあんと食べさせてあげますから」

「……」


 まあ嬉しそうな顔しちゃって。わかりやすいったら。

 じゃがいもを掘るときのコツは、茎の周りを優しく掘ること。種イモを植えた深さくらいまで。そして芋が出てきたら株の根本から引き抜く。


「できた」

「上手上手」


 懐かしいわぁ。昔子供達と堀った時もありましたっけ。種イモかクズが残っていたのか、植えていないのに採れた時は驚いたわねぇ。

 なんて考えていたらまぁた頑固な芋が。


「おい、気をつけろ。また転んだらどうする」

「そんな柔じゃありませんよ」

「小さいだろう」


 後ろからケネス様に支えられまして。

 ……確かに身長は低いですけれども。というよりもケネス様が大きいんですよ。いつも首が痛いったら。


「随分と、汚れるのにも抵抗がなくなりましたね」

「おかげさまでな」

「よかったじゃないの。男前になりましたよ」

「別に男前になりたくて畑に来ているわけじゃない」

「わかってますよ」


 私の野菜が食べたいからでしょう? いつも素直に美味しいなんて言ってくれませんが。

 そんなそっぽ向いちゃって。子供じゃないんですから。


「ここら辺はあらかた掘り終わったが」

「相変わらず仕事が丁寧なことで」


 ちょっと確認……種イモもクズもちゃんと回収してあるわ……。偉い……。


「この辺でいいですかね。あとはこの芋を干しますよ」

「どのくらいだ」


 今が早朝で、今日は空気が乾燥しているから……まあ日の当たらないところで数時間くらいかしら。土が手で払えるようになるくらいまでだもの。


「まあお昼には」

「……仕事してまたくる」

「朝ごはん食べていきます?」

「行く」


 なんだかあれね。収穫は大抵朝か夕方だから通い婚みたいになってるわ。別に婚約者なのだしいいのだけれど。原因は私ですし。


         *


「あらおかえりなさい」

「た、ただいま……?」


 下校中に挨拶した時の小学生みたいな反応されたわ。何かおかしかったかしら。


「ほら、芋が乾きましたよ」

「……本当だ」

「今から蒸しますね」


 お勝手の流し台でたわしを使ってじゃがいもをよく洗う。綺麗になったら芽を取って。皮に十字を入れる。

 なぜかあった蒸し器に水を張って、沸騰させる。そうしたらじゃがいもを入れて蒸す。

 これだけ。竹串が通れば完成。だから蒸し芋は楽でいいのよねぇ。

 バターを乗せたらもうご馳走。


「はいどうぞ」

「……いただきます」

「熱いから気をつけてくださいね」


 秋じゃがは日持ちするのとホクホクなのが特徴。お芋だからお通じにいいし、お腹に溜まるし、免疫力も上がるのよね。いいことずくめだわぁ。


「あつっ」

「んもう猫舌なんだから」

「俺は猫じゃない」

「何当たり前なことを」


 さて私も一口。うーん。このホクホクとバターの甘じょっぱさがたまらないわぁ。

 随分と冷え込んできましたし、もうすぐ冬ねぇ。


「美味しいでしょう?」

「…………」

「こら、口がじゃがバターでいっぱいだから喋れませんじゃないのよ」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
↓をタップしますと連載中の作品に飛びます。
隣国の王太子様、ノラ悪役令嬢にごはんをあげないでください
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ