-- 4 --
アキラ達が街で聞き込みをしたところ、自衛隊は定期的に管理外ダンジョンのモンスター間引き作業を行っているらしい。
大体一月に一回ということで、今日がその日に当たるということだ。
街の中の管理ダンジョンについても行っているようだが、そちらは探索者登録していないアキラ達は入れないためこの日まで待ったのであった。
アキラ達2人がダンジョンの入り口から少し離れた位置で隠れていると、予定の時間より少し遅れて自衛隊の装甲車がやってきた。
3台の装甲車の中から、20人程度の隊員が降りてきて素早くダンジョン入り口周辺に展開する。
どうやら入り口を1チームで監視し、残りの2チームがダンジョン内のモンスター間引きにあたるようだ。
「あー、先にダンジョンに入ってたほうが良かったな・・・」
入り口で監視している隊員がいるため、ダンジョンに入るには彼らの目を盗んでダンジョンに侵入しないといけない。
「うーん、まぁしかたないよね。でもあの程度なら大丈夫だと思うよ」
見る限り自衛隊の練度はそこまで高くなさそうだ。
いや、お互いがフォローしつつ周囲を警戒する様子は十分に訓練されていることが伺えるが、少なくともスキルを使用しているような気配は全くない。
問題ないと判断したミズキは早速、自衛隊員に気づかれないように裏手に回りつつダンジョンに近づいていく。
それを追うようにアキラも移動を開始する。
2人は足場の不安定な地面にもかかわらず、一切の音を立てずに近づいていき、自衛隊の監視を掻い潜ってダンジョンの中に入っていった。
◇
--自衛隊員--
「今回はモンスターの数がかなり少ないな・・・」
一人の自衛隊員が周囲を警戒しながら呟いた。
手には軽機関銃を構え、油断なく周囲を見渡している。
「ああ。こっちとしては楽でいいが・・・。なにかの前兆とかなら勘弁してほしいところだな」
「すくなくともスタンピードは起きなさそうだが」
「強いモンスターが出てここらのモンスターが逃げ出したとかですかね?」
「いやなことを言うんじゃない。まぁ未だかつてモンスター同士で仲間割れしているのは見たことないけどな」
隊員たちは周囲を警戒しつつ、若干の軽口をたたきながらだが慎重にダンジョンの中を進む。
しばらくして隊員達はダンジョンのセーフティエリアに到達した。
「ここでしばらく休憩するぞ」
隊員達は班長の言葉で休憩の準備を始める。
ダンジョンには5階層ごとに台座が存在し、その周辺はモンスターが入ってこないセーフティエリアとなっている。
とはいえそれも絶対ではなく、誰かがモンスターを引き連れてきたり、モンスターが大量に発生している場合などは普通にモンスターもエリアに入ってくるため警戒は怠らない。
2組のチームは休憩しつつ今回の遠征について話し合う。
「それで、どう思う?」
片方のチームの班長らしき隊員が飯を口に運びながら周りの隊員に目をやる。
すると一人の隊員が答えた。
「モンスターが少ない件についてですか?まぁ一番可能性が高いのはどこかの探索者とかがこのダンジョンに入ってるとかですかね?」
「確かに管理ダンジョンでも探索者が多いときはこんな感じですからね」
「そうだとして、なんでこんなとこに来るんだ?別に街のダンジョンでいいだろ?」
「それはわからないですよ。スタンピードを起こさないように間引いてくれているのでは?」
「うーん、そうだとありがたいが、その可能性は低いと思うがなぁ」
「それじゃあモンスターが多くて稼ぎの良いこっちに来たとか?」
「いや、ここまで来るのがまず危険だからな。ある程度の実力者だとしても、どう考えても割りに合わんだろ」
街からこのダンジョンまでは結構な距離があり、車でもないと来るのは大変だ。
しかも道中はダンジョンから溢れたモンスターにそれなりの頻度で襲われる。
10階層にいてもおかしくないような強さのモンスターにだ。
「わかってますよ、冗談ですよ。でもそれならなんなんですかね?」
「わからん。たまたまモンスターが少ない時期だったのかもしれん。今までそんなこと聞いたことも無いけどな」
「そうですね・・・。今回は早めに引き上げて、上に報告したほうが良いかもしれません」
「ああ。そうするしかないだろう。幸いモンスターの数自体は間引くほどの数ではない。原因は気になるが調査するにせよきちんと準備してからのほうがいいだろう」
隊員達はその後もあれやこれやと雑談を挟みつつ食事を終え、その後目標の階層を目指してダンジョンの奥へ進んでいった。
◇
アキラ達は5階層で食事を終えた自衛隊員達を更に後ろから追跡していた。
彼らはすでに9階層まで突入しており、装備している小型の機関銃で襲いくるモンスターに対抗していた。
「さすがにこの階層で銃はきつくないか?」
「たまに魔力放出系のスキルを使う人もいるみたいだけど」
一部の隊員は補助的にスキルを使って火の玉を生み出したりして攻撃しているようだが、基本的には銃で迎撃している。
ダンジョンのモンスターは体が魔力で構築されており、実体はあるとはいえ動物のように内蔵などを備えていない。
したがって銃弾のようなものは、いくら威力が高くても効果が薄いのだ。
「なんでスキルを使わないんだ?」
「身体強化は皆ちょこちょこ使ってるみたいだけどねぇ」
確かに身体強化は使っているようだが、その練度は非常に低いように見える。
10階層位であれば強化をして殴る、切るくらいで十分のはずなのだが、何故かスキルを使用していないようだ。
「というか、あれデフォルトでスキル使ってないか?」
「そういえば、皆出力が均一っぽいねぇ。スキルをまだマスターしてないのかな?」
「全員がか?それは、いくらなんでもないだろ・・・?」
アキラ達は自衛隊員の行動を隠れて観察する。
しかしいつまで経ってもスキルを有効に使用しているようには見えない。
「もしかしてスキルについてあまり認知されてなかったりする?」
「うーん、見るかぎり可能性としてはあるかもねぇ」
ダンジョンではスキルを使用できるようになるスキルオーブというものが産出される。
それは使用者に魔力を使用した特殊な技能を習得させるものだ。
しかし、スキルオーブを使ったからと言って直ちにそのスキルを習得できるわけではない。
スキルオーブを使えば、確かにダンジョン内ではそのスキルを使用できるようになるが、あくまで固定化された効果しか発揮できず、しかもダンジョン外では使用できない。
完全にスキルを習得するには、そのスキルの訓練が必要なのである。
それにしてもスキルを使用していたらなんとなくコツを掴んで習得できるはずなのだが、なぜ習得できていないのだろうがとアキラは考える。
「わからんな。彼らに聞くのが一番手っ取り早くはあるが、なんかめんどくさそうだしな」
アキラ達は隠れて彼らの後をつけており、しかも身分証などを一切持っていない。
普通に考えれば非常にあやしく、仮に接触したとしても場合によっては拘束されることになるかもしれない。
「まぁそこまで急ぐ必要もないだろうし、一旦街に戻って調べてみる?」
アキラはミズキの提案に乗って、一旦街まで戻ることにした。
◇
帰りもダンジョン入り口を監視している隊員に見つからないようにコソコソと出た後、アキラ達は街まで戻って来ていた。
そしてアキラ達が向かったのはインターネットカフェだ。
日本に帰ってきてからまだこの手の店には足を伸ばしていなかった。
大分使い方を忘れている感じもするが、アキラとミズキはなんとかパソコンを起動してダンジョンやスキルについて調べる事ができた。
「あったあった、スキルについてと」
スキルについてまとめると以下のようなことが書いてあった。
----
スキルとはダンジョン内のみで使用できる魔法のような技能である。
スキルはダンジョンで入手できるスキルオーブを使用して獲得できる。
スキルを使用すると取得したスキルに応じて一定の効果を発動する。スキルの使用に方法については、スキルオーブを使用してスキルを取得するとなんとなく感覚でわかるようになる。
スキルは3つまでしか取得できない。別のスキルを取得する場合は、すでに取得済みのスキルを削除する必要がある。
スキルオーブの入手方法は、モンスターからのドロップと台座からの購入(種類は限定される)とがある。
またはダンジョンのアイテムを取り扱っている店などでスキルオーブが売られていることもあるが、結構な高額で取引されていることが多いため一般探索者には購入は難しいかもしれない。
----
アキラはそれらを見てうーんと唸る。
「これはやはりスキルについての正しい認識がされていない感じだな」
スキルオーブはたしかに3つまでしか使用できないが、それはあくまで未習得のスキルだからである。
一度習得してしまえば、スキルオーブの補助なしにスキルを使用できるようになるため、実質取得スキル数に制限はない。
もちろん習得にある程度時間がかかるが、そもそも一度に3つも同時にスキルオーブを使用する必要性があまりない。
スキルの出力に関しても、練度にもよるが本来はある程度自由に変更することができるのだ。
スキルについての知識が認識されていない理由がわからない2人は、スキル以外についてもいろいろと探索者向けサイトを漁ってみた。
結果として一つの仮定が2人の中に生まれた。
「もしかして、魔力というもの自体を認識できてないんじゃない?」
◇
あれからいろいろと調べてみたが、やはり日本人は魔力自体を認識できていないということがわかった。
確かにアキラ達も向こうでは自然に魔力というものを認識できていたが、地球にいたときはそんなものかけらも認識したことはなかった。
この世界にもダンジョンが現れたとはいえ、それでいきなり人体の構造が変わるわけでもない。
とはいえ、ダンジョンでスキルオーブを使用してスキルを使えている以上、地球の人間もスキルが習得できないということは無いはずだ。
「なんか、ダンジョンストアに魔力感知ってスキルのオーブがあったけどあれが怪しそうだな」
向こうのダンジョンストアで購入できるスキルオーブは非常に限定されており、基本的な技能のスキルしか購入できないようになっていた。
とはいえ基本技能スキルは習得が必須で、それがないと他のスキルもうまく習得できないものが多かったのだ。
こちらでも同じだとすると、あの魔力感知というスキルは基本技能であり、習得必須であると考えられる。
しかし、向こうではそのようなスキルは聞いたことがなかった。
おそらく向こうでは必須ではなく、地球では必須のスキルなのだろう。
それならとインターネットで魔力感知スキルの情報を調べると、そこには散々なことが書かれていた。
----
何故かパッシブで発動して常にDPが消費される。
ダンジョンストアの説明では、「魔力を感知できるようになる」スキル。
しかしわかることといえば、なんとなくモンスターの位置がわかったり、スキルの発動がわかったりするだけ。
一応使えないことはないが、DPコストが高すぎて効果に見合っていない。
総合的に判断するとゴミスキル。
----
ちなみに未習得のスキルは、自身の魔力とDPの両方を使って発動される。
なぜDPがと思うかもしれないが、未習得のスキルはダンジョンが発動を補助してくれておりその対価としてDPが消費される。
少なくとも向こうではそういう認識であった。
きちんと習得できればスキルを使用してもDPは減らないので問題ない。
とはいえ、魔力感知のスキルを習得しようとすると結構なDPを消費しそうではある。
これは個人で魔力感知スキルを習得するのは確かに大変なのかもしれない。
「それに実際この魔力感知スキルで、魔力を認識できるようになるかはやってみないとわからないしねぇ」
魔力感知スキルについての情報が全くない以上、自分たちで試行錯誤してみるしかない。
ダンジョンをまともに探索するにはスキルの習得は必須であり、それには自身の魔力を認識する必要がある。
マスターしないという選択肢はありえないのだ。
「とはいえ俺達はすでに認識できてるからなぁ。試しようがない」
アキラがどうしようかと悩んでいると、ミズキが良い笑顔でアキラに提案した。
「それじゃあその実験に協力してくれる人を探すのがいいんじゃないかな?」
なかなか小説を書くのは難しいですね・・・
まだ設定も練りきれていないので、細かい部分はまた変更するかもしれません。




