武闘大会編4
そろそろ入試が近いので、暫く更新は控えさせていただきます。
淀んだ瞳は常に無感動。
口許は常に楽しげ。
ソフィアはその問いに答える。
「うん。彼が、そうだよ」
そう言って仮面の少年を見る。
それは何故、という次なる問い。
「女の勘」
迷いのない答え。
焦りと興奮は伝わってくる。
だが、共感は出来ない。
「ま、楽しくいこうよ」
ソフィアは変わらぬ表情で眼下の試合を見続ける。
「ところで、彼は誰なのかな?」
視線の先には、端整な顔の男性がいた。
異様な存在感を放つその男が、集を倒してしまわないか心配するソフィアである。
「……ん?知り合い?……君の知り合いって、碌な人がいないよね」
ソフィアは淀んだ瞳を再び仮面の少年に戻す。
少年と繋がるその存在を見透かすかのように。
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屈強な肉体は、まるで精巧な彫刻のよう。
強靭な鋼のごとき筋肉の鎧は、服の上からでも見てとれる。
「あんまガッカリさせんなよ。ここには強いやつが来んだろ?」
聞き惚れるような低めの声は、渋いと形容するにはあまりに無邪気。
外見こそ中年の男性であるが、その表情は少年そのもの。
「こんな弱っちい奴らに娘はやらんぞ!」
正拳突き。
そう称される動作も、彼が行えば引き起こされる結果が違う。
空気の壁を突き破ったかのような破裂音が響き、風が荒れ狂う。
なんと、その風だけで人が飛んでいく。
約半数の選手が吹き飛び、光になって消えていく。
「イケメンはオラが守るだぁ!」
集は例の肉厚な女性が盾になってくれたので、無事その場に留まる。
「くそぉ!こんなとこでぇぇぇ!!」
吹き飛ばされ、結界にぶつかった骸骨のイヤリングをした男は、悔しそうに光になっていく。
『す、すごいぃぃ!!一体何が起こったぁぁ!!』
『シュウ以外にこんな奴がいるとは……』
残り10人。
本来は全員が敵同士の勝ち抜き戦なのだが、現在の構図は1対9だ。
「強い奴はいないのかぁ?」
その声は少し寂しそうだった。
軽侮され、憤る選手は少なくなかった。
というか、集以外の全員だった。
「ふざけんなよ!まだ全力じゃねえし!」
「残り全員を敵に回したな!バカめ!」
「オラぁ強いだあ!あのイケメンもタイプだあ!」
大分数は減ったが、1対8。
本来男に勝ち目はない。
数の力は侮れない。
だが、男にとってのこの8は、もはや0に等しい。
「かかってこい!耐えてみせろ!」
男が腕を振るう。
その剛腕から放たれたのは、荒れ狂う空気の暴力だけではない。
かつてとある大陸の人類を恐怖のどん底に陥れた、美しき力。
ただ一人を除き、全てを屈服させた、極上の栄光。
莫大な黄金の奔流が全てを呑み込む。
「嘘だろ……。《聖域の黄金》」
集は、崩壊しそうだった結界の内側に禁呪の防壁を張り、黄金の奔流を塞き止める。
自身の身は《絶対防御円陣》で守りきり、残ったのは男と集のみとなった。
『し、試合終了ー!!!眩しすぎて何も見えませんでしたが、なんといつの間にか決着が着いてましたー!!今回勝ち残ったのは、ユウ選手とガエル選手の二人だぁぁ!!』
『今回の大会のレベルが異次元になっておるぞ!』
拍手喝采の中、男は残った仮面の少年を静かに見据えている。
ゆっくりと集に近づいていく。
大抵の者は気絶しそうな威圧を放っているが、少年は静かに見返す。
男が問う。
「お前、どうやって防いだ?」
「魔法で」
仮面の少年は、静かに答えた。
男は顎に手をやり、顔を顰める。
「……これを防げる魔法?……人間は帝級までしか使えないんじゃなかったのか?」
「ん?なに?」
「なんでもない。それより、次の試合は本気でかかってこい!」
「……まあ気が向けば」
集の返事にふんと鼻をならし、男は集の横を通り過ぎていく。
集は男の背中に、8枚の翼を幻視した。
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「ガブリエル……元天界の王、ね」
ソフィアはポップコーンを頬張りながら、独り言を洩らした。




