赤い世界編8
人気のない公園。
「うーん、空を飛ぶのと、覚醒するのと、『飛斬』の上位互換と、寝たまま魔力が出せるの、どれがいい?」
「じゃあ、覚醒するので」
「分かった。これは出来る人はすぐ出来るけど、出来ない人はいつまでたっても出来ないから、まあ出来る人であることを願うわ」
「はい」
「じゃあ実演するわね、危ないから離れてて」
「はい」
愛が離れたのを確認すると、アリスは魔力を解放する。
「無詠唱ですか」
「一年生でも出来る子はたくさんいると思うけど」
「そうですね」
アリスが目を閉じる。
数秒後、ゆっくりと目を開く。
刹那、圧倒的な魔力の奔流が放たれる。
飛ばされないよう愛は必死に耐える。
近くにあったブランコはアリスの逆側へ地面とほぼ水平に延びており、鉄棒は少し曲がっている。
呼吸も出来ないほど激しい奔流が止み、愛は大きく息を吸う。
「これが、魔力の第二次解放」
「……すごい」
「因みに今の全然本気じゃないから」
「うそ……」
「私の魔力量は520。本気を出したらこの公園は消し飛ぶわ」
「ごごごご、ご、ご」
「今のは魔力量200程度の第二次解放ね」
「ごごごご」
愛が壊れた。
「第二次解放すると魔力の消耗が速くなるから気をつけてね」
「ごご、ご、ご」
数分後
「落ち着いた?」
「はい……」
「じゃあやり方教えるわよ」
「はい!」
「顔近い……、じゃあなんでもいいから心の中にスイッチをイメージして」
「えっと、じゃあ電動歯ブラシのスイッチで」
「そ、そう………それを押したら魔力を縛ってる鎖が解かれるイメージね」
「はい……ポチっとな」
愛から魔力の奔流が放たれ、アリスが吹き飛ぶ。
「で、出来た!」
「いたた……てっ、いきなり出来るの?!あなた本当に凄いわね!」
「あっ、大丈夫ですかアリス先輩!」
「大丈夫よ……じゃあ早いけど解散……かな」
「はい!」
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黒い大地に集と狂獣が対峙している。
集の姿が消え、白銀の軌跡が一瞬煌めく。
狂獣は上半身と下半身を切り離され、切断面から光になって消えていく。
そのすぐ後ろに集はいた。
左目から緋色の光が尾を引いている。
これで7体目の狂獣の討伐。
イデアは解放状態にしてある。
「ん?」
集は新たな狂獣を発見した。
しかしなにかが違う。
まず大きさが違う。
全長10メートルほどだろうか。
そして特徴的なのは頭部から生えるトナカイのような角だ。
胸の真ん中には水晶のようなものが埋まっている。
研究者の言う、狂親獣だ。
下手に近づかず、観察する。
白い角が輝く。
そして口からなにか黒い塊を吐き出す。
黒い塊はどくどくと脈打ちながら膨張し、人型になる。
狂獣だ。
「そういうことか」
理解した。
狂親獣が集を振り向く。
「GAAAAAaaaaa!!」
今までの狂獣の咆哮とは違う。
心臓を締め付けるような咆哮。
角の輝きが強まり、狂親獣を紅い光が包む。
刹那、集と狂親獣が消える。
白銀と紅の軌跡が刹那に浮かび、ぎいぃぃんという衝突音と共に姿を現す。
集が白い角に手刀を叩き込んでいた。
しかし角に傷はない。
「やっぱり聖剣か【八岐大蛇】が無いと厳しいかな……」
真顔で呟く。
「いや、やっぱりいけるっしょ」
再び消える集。
後ろに吹き飛ぶ狂親獣は額が大きくへこんでいた。
吹き飛んでいる途中で狂親獣が消える。
集も消える。
紅い軌跡と白銀の軌跡が複雑に絡み合う。
集が吹き飛ぶ。
左半身が原型を留めていない。
白銀の炎が左半身に集まり、聖剣の修復能力もあって、すぐに再生する。
目前に迫る大きな拳を確認するやいなや、集が消える。
そして白銀の煌めきと共に狂親獣の真上に現れ、轟音と共に狂親獣が地面に叩き付けられる。
角と水晶は無傷だが、上半身がクレーターのように陥没している。
しかしそれも瞬く間に再生する。
集は追撃を仕掛けるが、ふと以前にも感じた謎の感覚を覚え、止める。
空間自体が揺れている。
硝子を引っ掻いたような音が響き、狂親獣の胸の水晶が黄金に光輝く。
集は平衡感覚が失われ、地面に崩れる。
集は直感でイデアを解く。
そして、
――世界が反転した。




