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第04剣『陰翼刀六黒』

 旅立ちを決めた鎮也、咲耶、レオフィーナの三人は廃墟と化した屋敷の中で使えるものを探したが、やはり朽ち果てたモノばかりで使えそうにないのでそうそうに出発をした。


 屋敷が建っている場所は最寄りの町からでも徒歩だと二日以上かかる魔物の徘徊する森の中。


 どうしてそのような場所に屋敷を建てたのか、すべては聖雷剣製作のためであった。魔物のいる森を自然の防壁として利用し、夜盗が襲われた際に派手な反撃をしても周囲に迷惑をかけないよう考えていたのだが512本目の完成に浮かれて警戒を怠ってしまった。


 そこに運悪く夜盗の襲撃。


「俺、お酒との相性は最悪かもな~」


 かつては獣道であった辺りの草をかき分けながらぼやく。


「まあ日本なら未成年だし、鎮也くんはもう少し成長するまでお酒はやめた方がいいかもね」


 こちらの世界にきて身体はだいぶ成長していた。


 初めの頃は日本の女子高校生の平均的身長である咲耶よりも小さかったが、いまでは頭半分ほど追い越している。


「マスターそろそろ戦闘の準備を、ここより先はかなりの数の魔物の気配が」

「そうだな」


 鎮也も魔物の気配はとらえていた。間違いなく三人を獲物だと認識して動いている。鎮也は足を止めて二人の方へ振り返った。


「鎮也くん、私はいつでも大丈夫だからね」

「マスター、ただ命じてください期待には必ず答えてみせます」


 二人の少女がズズズイと鎮也に何かを訴えかけてくる。


 もう付き合いだしてから三年近くが経過している。鎮也には二人が何を訴えているのか主語がなくても十分に理解できていた。


「えっと、だな」

「ここは木々の多い森の中、多彩な技が使える刀が有効だと思うんだけど、鎮也くんもそう思うよね」

「いいやサクヤそれは違う、この森には大型の魔物の気配を複数感じる。頑丈で力強い大剣こそ有効だ」


 和風の刀使い咲耶は刀を推し。

 洋風の剣使いレオフィーナは剣を推す。


 二人の意見はどちらも的外れでないが、鎮也にも大型の気配が感じ取れたのでレオフィーナの意見を採用することにした。


「レオナ頼む」

「承知しました」

「まあしょうがないか、レオナ次は私に譲ってよ」

「わかっている。私もマスターを一人占めする気はないさ」


 キリリと凛々しいレオフィーナの顔がほころんだ。鎮也に選らばれたことがとても嬉しいらしい。


「それではマスター」

「君を使わせてもらうよレオフィーナ」


 鎮也がレオフィーナに手を翳すと、彼女は両手を広げ白銀に輝きだし、光の中で巨大な剣へと姿を変え、ずっしりとした重量感を伴い鎮也の腕に収まった。


 鎮也は鑑定眼を発動させる。


「――――――――――――――――――――――――――――

 七星剣第一星

【名称】竜王剣レオフィーナ

【製作者】星尾和磨(かずま)&星尾鎮也

【使い手】星尾鎮也

【分類】大剣(バスタードソード)   【レア度☆☆☆☆☆☆☆(7)】

【長さ】180センチ  【重さ】7キロ

【聖剣核】レオナの心

【スキル】

『火魔法(特大)』…使い手が火魔法を扱えるようにする(効果:特大)

『竜咆哮』………竜の咆哮を放ち、相手を萎縮させ恐怖を植え付ける。

『全・身体強化』…身体能力の全てを強化する。

『対巨獣』………強大なサイズの相手に対して使い手に強大な力を授ける。

『破損修復』……剣が破損しても時間経過で修復する。

『擬人化』………竜王剣レオフィーナが少女レオフィーナへ変身する。

【奥義】

『竜王化(封印中)』

【補足】

 肉厚のバスタードソード。鎮也が幼少のころに読んだ冒険ファンタジー漫画『ドラゴンスターソード』のヒロインを鎮也の伯父である星尾和磨またの名を大倉翔が総力を上げて作り上げたNPCと、鎮也が制作したレア剣とが融合した存在、異世界に渡り生命を得る。

 登場作品『ドラゴンスターソード』では覇竜王の娘であり、鍛冶師の主人公と恋をして主人公を助けるために自らの核を使い、大剣『竜にして竜殺し』へと生まれ変わった。

―――――――――――――――――――――――――」


「時間移動する前とステータスは変わりないな」


 奥義の封印も解けていないし大丈夫そうだ。


「咲耶のステータスも後で確認しないとな」

「感覚からたぶん大丈夫だと思うけど、よろしくね」


 呑気に会話している二人の背後から一つの大きな気配が近づいてきた。この気配を感じたからこそレオフィーナに剣になってもらったのだ。


「さて、最近鍛冶仕事で篭りっぱなしだったからな、少し運動しないとね」


 背後から迫る気配に対して鎮也は振り向きざまに竜王剣レオフィーナを振りおろす。たったそれだけで襲い掛ってきた強大な影を両断した。


「おみごと」


 崩れ落ちる巨大な影の正体は牛型の魔獣であった。体長が鎮也の三倍以上あったためスキルの『対巨獣』が発動し随時発動している『全・身体強化』と合わさり魔獣の体はまるで豆腐を斬るような手応えしかなかった。


「さすがレオナ、大型に相性抜群だな」

「鎮也くんも引きこもっていた割に体の切れがあったよ」

「鍛冶作業で汗はかいていたから運動不足ではなかったぞ。それよりこれ、なんて魔物だろ見たことないけど」


 鎮也は倒した魔物をしげしげと眺める。それは牛のような外見を持ち口と足には肉食獣のような牙と爪が生えていた。


「私にもわからないわ、新種かもしれない。外見で判断すると肉食の牛かな?」

「ちょうどいいや素材と魔核をはぎ取って資金を作ろう」


 突然の時間移動でお金はほとんど持っておらず、持っている少ない所持金も今の時代で使えるかわからない。


 鎮也は魔法のカバンから一振りの黒い刀身の小刀を取り出した。


「――――――――――――――――――――――――

 七星剣第六星

【名称】陰翼刀六黒(いんよくとうむく)

【製作者】星尾鎮也

【使い手】星尾鎮也

【分類】投擲刀  【レア度】☆☆☆☆☆☆☆(7)

【長さ】28センチ  【重さ】0.3キロ

【聖剣核】六黒の心

【スキル】

『影魔法(特大)』…使い手が影魔法を扱えるようにする(効果:特大)

『投擲』…………投擲した刀を意思のままに操れる。

『六分身』………まったく同性能の分身を六つ作り出す。どれもが本体である。

『魔法破壊』……黒い刀身に触れた魔法を破壊する。

『破損修復』……剣が破損しても時間経過で修復する。

『剣獣化(鴉)』…額に刀のような角を持つ烏へと擬獣化できる。

奥義

『全方位魔法解除』視界に入るすべての魔法を解除できる。

補足

 異世界に飛ばされた超忍者が主人公の漫画『シャドーシャドー』に登場した投擲刀。さまざまな魔法を切り裂き大活躍。分身した剣はどれもが本物であり虚像ではない。『魔法破壊』は魔力を用いるスキルにも適用できる。剣獣化した烏の姿は登場した作品のマスコットがモデルである。

――――――――――――――――――――――――――」


 この世界では伝説や幻と言われ存在しないともささやかれている世界最高ランクレア度7の投擲刀を鎮也は剥ぎ取りナイフとして使用した。


 鎮也自身もこの使い方は間違っているとは感じなくもなかったが、以前に魔毒のある魔物を普通の剥ぎ取りナイフで解体している時に浴びてしまったことがあり、それ以来『魔法破壊』のスキルがある六黒なら魔毒まで無効にしてしまうので未知の魔物を解体する時にはとても重宝している。


「この肉は堅くて食用には向かないかな」


 解体された肉を吟味する咲耶、所持金もそうだが食料もほとんどない状況なので牛の肉を確認するが期待ハズレだったようだ。


「でも魔核はそれなりに大きかったぞ」


 牛型の魔獣から取り出した魔核を咲耶に見せる。それは野球のボールほどのサイズがあった。


「このサイズならC級はあるわね、売ることができれば一カ月は余裕で生活できそう」


 魔物のランクはS、A、B、C、D、E、Fの七段階級で評価され、その基準となるのが魔核の大きさである。今回のC級相当の魔物は集団討伐が推奨されるクラスで販売額は咲耶の言う通り一カ月は仕事せずに遊べる位の額になる。もっとも時間移動前の相場ではあるが。


「牙や爪も鍛冶の素材として使えそうだな」

「鎮也くん」

「え、ああ、久しぶりの剥ぎ取りで時間をかけすぎた」


 鎮也は屈んでいた腰を伸ばしてレオフィーナと一緒に剥ぎ取りに使っていた六黒も構えた。


「せっかくだから六黒にも活躍してもらいましょう」

「完全に囲まれちゃったね」


 解体した血の匂いに引かれ周囲の魔物を呼び寄せてしまったようだ。


「まあ、資金集めのために魔獣は狩っていくつもりだったから丁度いい」

「数は前に二、背後に四だよ」

「了解」


 まだ姿は見えていない、だが漂う殺気が木々の奥から明確に感じられた。


 前方の気配は存在を隠す様子もなく草木を技と揺らしながら近づいてくる。逆に背後に回った集団は物音一つ立てていない。このことから前方は囮だと判断する。


 ギギィという注意を引きつけるような鳴き声を発して姿を現したのは両腕の甲より鋭い鍵爪をはやした小型の鬼種(オーグル)であった。


「こいつは見覚えあるな」

「確か鍵爪鬼エッジオーグルだね」


 身長は鎮也の肩ぐらい、体格はF級の魔物であるゴブリンとそう変わらないが種族は鬼種、ゴブリンなどより数段上の実力を持っており、鎮也の記憶では討伐階級は単体でD級、群れの場合はC級に格上げされる。


 現れた二匹のエッジオーグルは鎮也たちの姿を視界にとらえると、鍵爪を打ち鳴らしギギィという鬼種特有の不快な鳴き声で襲ってきた。


 鎮也とエッジオーグルとの間の距離はまだ大股で七歩ほどある、レオフィーナの間合いにすら入っていないが、鎮也は腰をひねりレオフィーナではなく逆の手に持っていた六黒を二体のエッジオーグルに放った。


 エッジオーグルは単体でD級の魔物、正面から飛んでくる不意打ちでもない投擲刀など怯むことなく余裕をもった動作で左右に開いて交わすが。


「あまい」


 鎮也は相手の動きを見てすかさず六黒にむかって一つの命令を飛ばす。六黒はスキル『六分身』を発動させ二本へと分身させる。六本以下なら分身する数は選べる。


 二振りになった六黒は逃げた二体を追尾して確実に切り裂いた。


 悲鳴をあげる余裕などなく崩れ落ちるエッジオーグル。

 だが、それで終わりでないことは鎮也は分かっている。あくまでも前方にいた二体は囮でしかない。


「ギギィ」


 背後の四体が同時に襲いかかってくる。鎮也はレオフィーナを力強く握り横水平に構えると、鎮也が何をしたいか察した咲耶がすかさずしゃがんだ瞬間、真横に円を描くようにレオフィーナを振りぬいた。


 長い刀身から繰り出す強力な一振りで四匹いたエッジオーグルの内三匹を倒す。


 生き残った一匹はたまたま飛び上がっていたため一緒に倒すことはできなかった。振り抜いた姿勢で硬直した鎮也へチャンスとばかりに襲いかかってくるが、エッジオーグルの鍵爪は鎮也に届くことなく舞い戻ってきた二本の六黒が十字に切り裂いた。


「よし」


 無傷で戦闘完了、完全勝利。


 手に戻ってきた二本の六黒を指にはさみ受け止めると、元の一本へと姿を戻す。


「エッジオーグルの鍵爪って売れたよな」

「そこそこの値段でね」


 エッジオーグルの鍵爪は溶かして鉄に混ぜると少量の魔力を帯びた鉄材を生み出せ、加工することで魔剣や魔道具などが製作できる。ただ鍵爪を溶かす為にはかなりの火力をようする窯が必要となるため一般の工房には人気が無く、大手がたまに購入するぐらいのため、そこそこの金額にしかならない。


「でも数がそろえば、それなりの金額にはなるよな」

「そうだね、数も揃いそうだから、それなりにはなりそう」


 鎮也と咲耶はすばやく背中を合わせ互いの死角を埋めながら三六〇度全方位を警戒する。


 先ほどの襲撃とは比べ物にならない数の気配が急速に近づいてきたのだ。


「この森、長いこと魔物駆除がされてないみたい、こんなにいたら近隣の町に被害でてるかも」

「近隣の町が無くなってたりしないよな」

「考えたくない可能性だよね」


 感じられる気配だけでも百に近づく勢い、これが一つの群れならば小さな村くらい簡単に滅ぼせる戦力だ。


 鎮也が六黒を頭上へと投げると最大分身である六刀へ分かれ、二人の回りを円盤のように回転しながら浮遊する。


「鎮也くんヤマト貸して、私も戦う」


 魔物の大群はすぐそこまで迫っていた。

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