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第105剣『メイド隊戦闘班』

 透徹を使い鎮也がカナリーの襲われていた沼地へと戻ってくる。


「思ったよりも遅かったねって、あら」


 周辺の調査をしていた咲耶が鎮也の気配を感じてやってくると、鎮也の後ろに控えている四人のエルフメイドたちに気がついた。


「えっとな咲耶、聞いて驚け、この子たちは」

「もしかして、レーガちゃん、ルンちゃんにラヴィちゃん、それにアロイちゃんなの」

「え?」


 驚かそうとした鎮也が逆に驚かされてしまった。四人の正体を咲耶は一目で当ててみせたのだ。


「お久しぶりですサクヤ様」


 四人の中でのリーダー格、金色のストレートロングヘアでエルフにしてはやや背が高めのレーガが代表してあいさつを口にして三人と一緒に頭をさげた。ピンと伸びた背筋にぶれはなく、人族よりも華奢なエルフ族でありながらもよく鍛えているようで、歴戦の戦士の雰囲気をまとっている。


「咲耶、わかるのか」

「もちろんわかるよ、みんな面影が残ってるもん」

「俺はぜんぜんわからなかった」


 鎮也は屋敷でアリアに紹介された四人が誰であるかまったくわからなかった。初対面の挨拶をしようとしたら、口々にお久しぶりの挨拶をされてとまどったほどだ。鎮也が気づいていない事を察したアリアが彼女たちの正体を教えてくれた。


 彼女たち四人は百二十年前、鎮也たちが悪徳奴隷商人より助け出し森の屋敷で世話をしていた身寄りのない子供たちだった。


 過去の時代ではリーシャよりも幼い子供で、アリアのようにメイドとしては働いてはいなかったが、当時子供のいなかったネコッタやメイドたちが我が子のようにかわいがっていた。一人っ子であった鎮也も妹のようにかまっていた記憶がある。


 それが突然成長して鎮也たちの前へと現れたのだ。彼女たちは長寿族、百二十年を生き成長したことは鎮也も理解できるが感覚が追い付いていかない。


「だいぶ成長したのに、サクヤ様にはすぐにばれた」


 脅かそうとして失敗したことを、表情をあまり変えずに悔しがるのはグリーンゴールドの髪をポニーテールにしてるルン。彼女は小さいころから読書好きであまり自分からは話しかけない大人しい少女であった。今は華奢な体形が多いエルフ族の平均を大きく上回るボディをもっている。


「僕はなんとなくサクヤ様ならすぐに気がつくと思ったよ」


 空色のショートヘアの僕っ子はラヴィ、四人の中では一番小柄で元気な印象を受ける。この子は昔から外で遊ぶのが大好きな少女でいつも屋敷の庭を駆け回っていた。四人の中では一番見た目や外見の変化が少ない。


「ずっとお持ちしていてよかったですわ。また再会できてうれしいです」


 最後の四人目、レーガよりもやや背の低いエルフ族の平均的体格のアロイ。昔は一番の泣き虫であったが、今はその面影はなくちょっと下がった目尻でニコニコとした笑みを浮かべている。目を隠すほど長かった前髪はなくなり、キレイに伸びた銀髪を首の後ろで一括りにしている。


「私もまた合えて嬉しいよ、みんな大きくなったね」

「昔は非力な幼子でしたが、今は違います。いつかシズヤ様たちがお帰りになると信じて、その時には聖雷剣の使い手に選ばれるようにと、ずっと自分たちを鍛えてまいりました」


 生まれ故郷を奴隷商人に滅ぼされたレーガたちは、帰るあてのない自分たちを引き取ってくれた鎮也に、そして妹のようにかわいがってくれた咲耶やレオフィーナや屋敷の使用人たちにとても恩義を感じていた。


 いつか、帰ってくると信じた彼女たちは剣の使い手として百二十年もの間、冒険者としてずっと腕を磨き続けていたのだ。


「いいよな、咲耶」

「もちろん、レオナも絶対に反対しないよ。もってきたの」

「ああ、屋敷でやるよりも、こっちに咲耶がいるから持ってきた」


 鎮也は自分がぶらさげている魔法のカバンをポンポンと叩いた。


「シズヤ様、それはまさか」


 レーガは鎮也が何をしようとしているか薄々だが理解したようだ。期待と歓喜、それとちょっとの不安が入り混じったような表情になる。


「奪還もネコットたちのおかげでペースが上がったからな、持ち主のいない剣も増えてきたし、四人を選ぶ連中もいたぜ」

「まさか」

「それって、それって」

「嬉しいですわ」


 レーガ以外の三人も鎮也がやろうとしていることに気がついた。


「四人へ聖雷剣を譲渡する」


 鎮也が魔法のカバンより四振りの聖雷剣を取り出した。


「我、聖剣鍛冶師・星尾鎮也」

「七星剣第二星・桜咲耶」

「「汝らを聖雷剣の使い手として認める」」

「聖なる雷の剣の使い手として、その尊き魂に恥じぬよう願う」


 四振りの聖雷剣は星の輝きを放ち四人のエルフの手へと収まった。



「このレーガ、百二十年の修行の成果を必ずやお見せします」

「―――――――――――――――――――――――――――

 聖雷剣シリーズ シリアル35

【名称】「ハレイジャクター」

【和名】「蜃気楼投射」

【製作者】星尾鎮也

【使い手】レーガ

【分類】長剣    【レア度】☆☆☆☆(4)

【長さ】100センチ  【重さ】1.6キロ

【聖剣核】ヒスイ

【スキル】

『雷魔法(中)』…………使い手が雷魔法を扱えるようにする(効果:中)

『蜃気楼』……………蜃気楼を発生させることができる。

『霧影実体』…………霧に魔力を流し実体化させられる。

【補足】

 刀身より生み出される霧は魔力を帯びており、蜃気楼を発生させ自在に操ることができる。実体化させることにより、軍団を呼び出すことも可能で、巡り合えた使い手のセンスとも合わさり、レア度4ながらも一個中隊と同等の戦闘力を発揮する。

―――――――――――――――――――――――――――」



「嬉しい、必ず期待に応える」

「――――――――――――――――――――――――――

聖雷剣シリーズ シリアル77

【名称】「ダブルザッパー」

【和名】「双頭槍剣」

【製作者】星尾鎮也

【使い手】ルン

【分類】二対特殊剣   【レア度】☆☆☆☆(4)

【長さ】160センチ   【重さ】2.8キロ

…分離後片方…【長さ】80センチ 【重さ】1.4グラム

【聖剣核】ブラウンクォーツ

【スキル】

『雷魔法(中)』……使い手が雷魔法を扱えるようにする(効果:中)

『分離合体』………ギミックの分離と合体を使い手が任意で使用できる。

『吸着』……………分離後、両方は磁石のように引き合っている。

【補足】

 ゾロ目シリアルのダブルシリーズ。双頭剣、両端が刃となっており、柄の中心で分離、合体が任意で可能。また片方を投げても、もう片方が手元に残っているなら帰ってくる。不意打ちに特化した初見殺しのギミック剣。

――――――――――――――――――――――――――――――」




「力が湧いてくる。これからよろしくね相棒」

「―――――――――――――――――――――――――――

 聖雷剣シリーズ シリアル194

【名称】「フォレストランナー」

【和名】「密林走破」

【製作者】星尾鎮也

【使い手】ラヴィ

【分類】短剣    【レア度】☆☆☆☆(4)

【長さ】24センチ  【重さ】1.8キロ

【聖剣核】キャッツアイ

【スキル】

『雷魔法(中)』…………使い手が雷魔法を扱えるようにする(効果:中)

『植物操作』…………視界内の植物を自在に操作できる。

『森の声』……………森の囁きを聞き、森の全てを知る。

【補足】

 森林限定だが、どんなに生い茂った森であっても、整備された道と同じ速度で走ることができ、使い手次第では森の方が早くなるほどだ。聖雷剣自体の攻撃力は他に比べ低いものであるが、森限定のフィールドならば使い手をとらえるのは不可能だろう。

―――――――――――――――――――――――――――」




「うふふ、私たちの力をシズヤ様にお見せしましょう」

「―――――――――――――――――――――――――

 聖雷剣シリーズ シリアル281

【名称】「スケルトダイン」

【和名】「無音透明」

【製作者】星尾鎮也

【使い手】アロイ

【分類】細剣    【レア度】☆☆☆☆☆(5)

【長さ】100センチ  【重さ】1.4キロ

【聖剣核】トルマリン

【スキル】

『雷魔法(中)』……使い手が雷魔法を扱えるようにする(効果:中)

『姿隠し』…………空間に溶け込み使い手の姿を消す。

『無音』……………使い手の出す音を消す。

『無臭』……………使い手の出す匂いを消す。

【補足】

 幻覚系細剣。姿を隠し無音無臭で相手に忍び寄る。暗殺に特化した剣。咲耶に『これって魔剣じゃないの』シリーズとも呼ばれている。アリア配下のメイド隊戦闘第一班アロイが使い手となり、うふふと笑い声だけを響かせ忍び寄る恐怖の暗殺剣となった。

―――――――――――――――――――――――――」




 間違いなく聖雷剣たちも持ち主だと認めてくれた。


 彼女たちは聖雷剣をかかげ、鎮也へと跪いた。


 冒険者として活動していたそうだが、それは自身を鍛えるためであり、ずっと鎮也たちに仕えるのが夢であったらしい。


 彼女たち冒険団『四彩の(ミッシングセブン)』は『七星剣』の傘下へと加入したいのだそうだ。


「いいんじゃない、彼女たち大きくなったら七星剣に入りたいってずっと言ってもん」


 アリアから話しを聞いた鎮也もそのことを思い出していた。幼くまだ屋敷の手伝いもさせてもらえなかった彼女たちは大きくなったら冒険者になって『七星剣』に入りたいと言っていた。


「大きくなったら入れてやる。百二十年前に約束していたな」


 百二十年前の約束を果たすために頑張ってきた四人、その想いは鎮也たちにとって、とても嬉しいことであった。百二十年たってもまだ変わっていなかったモノをまた一つ見つけることができたのだから。

 長寿族にとってもまだ幼かった少女たち、待っていた時間は決して短い時間ではなかったはずだ。その想いに応えよう。


「決まりだね」

「これからよろしくな」

「「「「よろしく、お願いします」」」」


 キレイにそろえられた四つの音色、七色の虹にずっと憧れ続けた四色の虹の念願がかない時を超えて合流した。


 全員がエルフでメイド服を着ていて腰や背中に聖雷剣を差しているというシュールな絵柄ではあるが。


「これからはメイド隊第一戦闘班として恥じぬ働きをご覧にいれます」

「なんでメイド隊? 戦闘班?」

「もっともな疑問だな咲耶、俺も同じことを聞いたよ」

「私たちはアリア姉さまの部下にもなりましたので」


 メイドとして働いてはいなかったが、過去の時代、アリアから将来は鎮也に仕えるメイドとして立派になりなさいと教育を受けていたらしい。そのことは鎮也も知らなかった。


「それって幼児期に刷り込みをおこなわれたんじゃ」

「さて、戦力も増えたし、咲耶、調査の方はどうなってる」


 鎮也至上主義のメイド長の行動は聞かない方が幸せの場合が存在する。鎮也は無理やり話しを変えた。咲耶もそれにあわせ本題へと戻した。


「やっぱり攫われたみたいだね。明らかにメタルグロッグとは違う新しい足跡が複数あったよ、今ヤマトが追跡中」


 メイド隊の加入など、大幅な脱線をしていたが、調査はちゃんとおこなわれていた。


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