第102剣『占い師の少女』
わたしは生まれた時から感が良かったらしい。
赤ちゃんの頃は冒険者を生業としていた両親の危険を泣いて知らせてこともあったとか、覚えてはいないけど。
それから成長して、相棒となる一つの道具とめぐり合うと、わたしの才能は一気に開花した。自分の危機なら百パーセント的中できる占いを習得できた。
自分だけでなく家族や仲間の危機も時差は出るが察知できるようにもなっていた。
この能力さえあれば、家族や仲間の危機も回避できる。そう思っていた、でもある高難易度の依頼が両親に舞いこみ、幼いわたしや未熟な姉たちは連れていけないと帝都に残されることになった時のことだ。
「いってくるね。お姉ちゃんたちの言うことを聞いていい子にしてるのよ」
「きっちり稼いでくるからな、帰ってきたら欲しいモノなんでも買ってやるぞ」
お母さんはわたしを抱きしめ、お父さんはその大きな手でわたしの頭をなでて出発していった。
わたしの占いが両親の危機を知らせたのはその後、すでに両親が出発してから二日も経過していた。幼いわたしには両親に知らせるすべはなかった。
ただただ、無力を感じながら両親の無事を祈ることしかできなかった。
でも占いの示した未来はもう両親が帰ってこないと告げている。
それでも一縷の望みを抱き願い祈り続けた。でも占いの結果通りに二度と両親が帰ってくることはなかった。
そして――。
「私がお父さんたちの、いや団長たちの意思を引き継ぐ!」
お姉ちゃんがお父さんとお母さんの後を継ぐと宣言して冒険団の団長代理となった。でも両親だけでなく冒険団『真紅の秩序』の主力の多くも失ってしまっていたので立て直しは容易ではない。
誰が見ても無理をしているお姉ちゃんが心配でたまらないです。
冒険団の中にはお姉ちゃんを団長代理と認めない勢力があって対立もしていた。
そんな時だ、占いでまたしても不吉な兆しが見え始めたのは、占いの結果が漠然としていて詳しくは分からないがお姉ちゃんにまで最悪が振りかかると出ている。
わたしはお姉ちゃんを救う方法は無いかと占った。
「カコからの伝説、マボロシの剣、ミナミにて出会う、ゴカイでユウコウ」
両親の時と違い、救う方法がおぼろげだが見えたです。
ゴカイでユウコウ。五回で有効、それとも誤解で友好だろうか、お姉ちゃんは思い込みが激しいし。
わたしはそのキーワードの解読に取り組み、交易都市にてお姉ちゃんたちがはるか過去からやってきた伝説と運命の出会うと読み取った。
強力な武具を探すお姉ちゃんたちに、交易都市に行けば望み以上の武器が手に入ると嘘の占いを伝えて向かってもらった。
嘘は申し訳ないと思うけど武器関連の結果も出てるし、もしかしたらオークションで掘り出し物くらい見つかるかもしれないと思っていたら。
「見ろこの大剣、占い通りだ、私の想像をはるかに超えている」
「え!? そ、そう、よかったね」
そして本当に伝説の存在と出会ってきた。お姉ちゃんにとって運命的であったかどうかはわからないがクラネットさんにどんな人物か詳細を聞いた時には驚きのあまり心臓が飛び出すかと思うほどだったです。
まさかこの帝国でもっとも有名な伝説の人物と遭遇していたなんて。
それなのに。
「この大剣を修復してくれた男か、将来見込みのある冒険者だったぞ」
「え~~!!」
それなのに、当の本人はまったく相手の正体に気が付いていない。
でもその誤解のおかげで、萎縮することなく友好な関係が築けたらしい。
この出会こそがお姉ちゃんの最悪を振り払ってくれる存在だと信じて、私は偶然を装って伝説の一行と接触した。わたしとの出会いはまずまず、幼いのに不思議な占い師の少女の演出はうまくいき相手も興味をもってくれた、はず。その証拠に二度目の出会いの時にわたしの事を覚えていてくれた。
このまま彼がお姉ちゃんの側にいてくれれば不吉な未来を晴らしてくる。
これでうまくいく、お姉ちゃんを助けられると心のどこかで油断をしてしまった。
その油断が生んだ不測の事態。私をいつも助けてくれた予感がお姉ちゃんたちの危機を知らせる。しかしその予感の到来は両親の時と同じで一歩遅かった。
お姉ちゃんたちは今朝、朝日が差し込む前にギルドの依頼を受けて出発してしまっている。これではお父さんやお母さんの時と同じになってしまう。
慌てて解決策は無いのかと占いと、冒険者ギルドの『真紅の秩序』の部屋と出だ。
あの部屋にどんな解決策があるのか、分からないまま自分の占いを信じてギルドの部屋を訪れてみれば。
「え?」
お姉ちゃんたちの荷物が荒らされていた。
今回の依頼は沼地でのメタルグロックの討伐であったため、鉄製の装備や汚れたら困る物を全て置いて行っていたはず。
「剣も絵本も無くなっている」
伝説の鍛冶師に修復してもらった大剣もサインを書いてもらった絵本も無くなっている。
この部屋に入れるのはギルドメンバーだけ私には犯人が誰かすぐにわかった。こんなことをするのは、あいつしかいない。
お姉ちゃんの大剣の威力を知って自分の物にしたくなったのだろう。他のアイテムはいつも無駄遣いして金欠な人物だ、きっとお金に変えられてしまっている。
私は走り出した、性格に難があるあいつがアイテムを売れる店など限られている。朝市の角にある怪しい道具屋を目指した。
「あの絵本だけは!」
大剣はおそらくあいつが所持しているので私の力では取り返すのは不可能。
残るは絵本。
お姉ちゃんを助けてくれるかもしれない人との繋がりでもある絵本、無くすわけにはいかない。
私が道具屋へ駆けこんでみれば、そこには絵本のモデルでもあり、お姉ちゃんを助けるキーマンが三人の女性と一緒にいた。『なんでいるの!!』と叫びそうになるのを必死でこらえる。
彼らはすでにクラネットさんの絵本を持っていた。
「お兄さんたちも、その絵本を買うつもりなの?」
買われてしまうと慌てたけど、流石は伝説の存在、その絵本を簡単に盗品だと見破り露天ごと影の幕でおおい隠して店主を締め上げた。
「どこで手に入れたか今度こそ正直に話してもらおうか?」
逃げ道を完全に塞いで丁寧に訪ねる。
「ビンザスさんから買ったんだ」
「ビンザス? どこかで聞いたような名前だな」
「そういえば、私も交渉人という職業柄名前を覚えるのは得意なのですが、パッと顔が浮かんできませんね、確かに聞いたことがあるような名前ですが」
私たちにとっては忘れたくても忘れられないほどいやなヤツですが、この人たちにとっては印象に残るほどの人物ではなかったようです。
「多分だけど、真紅のメンバーの男性じゃないかな、筋肉質の」
「筋肉…………ああ思い出した、二次試験の本番で一人だけ落ちた自称『真紅の秩序』の団長候補の野郎だ」
やっぱりあの男は真紅の秩序の恥しかバラまきません。
「とりあえず詳しく説明しろ」
問い詰められた店主はポツポツと知っている事を語り出す。
「ビンザスさんがどこから盗んだかは本当に知らない、ただ盗んだ相手はもういなくなら心配無いって言ってからよ、ちくしょ」
「いなくなるだと」
「意味はしらない、でもビンザスさんは気に入らない相手は罠にハメるって噂はある」
「その噂のせいで真紅の秩序の名声は傷つきまくりです」
わかってはいても人から聞くと怒りがこみ上げてくる。真紅の秩序の名は父と母が築き上げてきた誇りそのものなのに、その名声を私利私欲でけがされるのは我慢できない。
しかし、それよりも今はお姉ちゃんたちが心配だ。
「それで罠とはなんですか?」
「知らない、ただ、さっきの痺れガスのビンを大量に買って行ったからそれを使うと思う」
「たしか、メタルグロックの討伐とか言ってたな」
「そうです。緊急な指名依頼がきたのです。料金割り増しで」
金欠の私たちにとって、とっても都合の良い依頼でした。
「その依頼自体が罠だったんだな」
いつもなら依頼の裏取りくらいはしたのに、以前に受けた事のある依頼主だったからと金欠が合わさって安易に承諾してしまった。
伝説の鍛冶師さんは顎に指を当ててしばらく思案するそぶりをみせます。
ここを逃したらお姉ちゃんたちはビンザスに殺されるかもしれない。
「お願いします。助けてください、いきなりこんな頼みをするのは失礼だとわかっているのですが、あなたに頼るしか、他に方法がないのです!」
必死で頭を下げたら目から涙がこぼれた。いつの間にかに私は泣いていた。
「お金は、かならず払いますから、この体を売ってでも」
お姉ちゃんが助かるなら奴隷に落ちたっていい、私にはもうお姉ちゃんしか家族がいないんだから。
「いや、売らなくていいから」
「奴隷売買じたいが帝国では禁止です。まだ幼い君がそんな事を口にしてはいけない」
男装した凛々しいお姉さんにしかられてしまいました。
「もちろん助けてやるさ、知らない仲じゃないし」
やさしい雰囲気のお姉さんが、露店をおおっていた闇の幕を解除する。
「さすがはシズヤさん」
「鎮也くん救出メンバーはどうする」
「急いだ方がよさそうだ、俺と咲耶だけで行こう。シアとネコットは悪いけどオルトハウンドを屋敷まで運んで置いてくれ」
周囲を気にする余裕がなくて気がつかなかったけど、露天の前には討伐Bランクのオルトハウンドがいたそれも二匹も。
こんな存在に気がつかないほど慌てていたなんて。
「馬車はオルトハウンドに檻からでて引いてもらうので、シズヤさんたちは一台使ってください」
「助かる」
今なんて言いました。補縛したてに見える泥だらけのオルトハウンドに馬車を引いてもらうって、そんなことできるわけが、私だって冒険者、オルトハウンドが気性が荒いのは知っているんですよ。
「あぶないです!」
金髪の優しい雰囲気のお姉さんがすたすたと檻に近付いて自然な動作で柵の間に手を差し込んだ。腕が噛みちぎられる。
そんな場面を幻視したが、現実は真逆でオルトハウンドは飼い犬のようのこうべを下げお姉さんの手にすり寄っていた。ありえないです。
「かわいい子ですね、帰ったらすぐにブラッシングしてあげるね」
嬉しそうに巨大な尻尾を振るBランクの魔物。そうですか、かわいい子なのですか、私の体なら一飲みでできそうな大きな口を持つ存在にそんな感想を抱けるのですか。
やっぱり伝説集団です。感覚が私たちと違いすぎます。
「それじゃ出発するか、悪いけど依頼で向かった場所を教えてくれるか、えっと」
「あ、私はリーシャって言います」
私はまだ彼らに名前すら名乗っていなかった。
「足手まといは分かっていますが私も連れて行ってください」
「かなりの強行軍のなるぞ」
「覚悟はできてます」
「わかった道案内を頼む」
こうして私は、お姉ちゃんを助けるために伝説の鍛冶師と一緒に出発をした。




