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転生モノの私なりの対処法  作者: ヒイラギ=柊
1/2

強盗

突然だが私は転生モノの小説が大好きだ。

暇さえあれば「そのジャンル」の小説を読んでいる。土日はそれを読んでいて気付いたら夕方、なんてこともざらだ。

新社会人なのにそれで大丈夫なのか、とかもう少ししっかりしろ、と言われたら……まぁ、反省はする。反省はするがやめる気はない。なんせこれは私の数少ない趣味だから。これがなくなったら生きていく自信がない。



さて、唐突に始めた私の転生モノ小説についての話はいったん置いておくか忘れてもらって……今度は私の仕事の話をしよう。

私は今年から社会人だ。そう、新社会人。

だが趣味に時間を裁きたい私が会社に入って朝早くから夜遅くまでデスクワーク、なんてことをするハズもなく……。


「玲美ちゃん~、お客さんお願い~。」


「あ、はーい!」


喫茶店で働いている。

この喫茶店、残業は勿論ない。それに土日はほぼ確実に仕事がない。つまり趣味に捌ける時間が長いと言う素晴らしいお店なのである。

それに店長さんも優しいしね。

さて、そろそろお客様の所に向かうとしますか。


「いらっしゃいませ~。お水とお手拭きです。ご注文がお決まりになりましたらお呼びください。」


とお客様に礼をし奥に戻ろうとした……その時だ。

背中に何か硬い物を押し当てられた。

周りのお客様、店員、店長さんの顔が凍りついている。

私の耳元で先程のお客様は大声で叫んだ。


「お前ら床に伏せろ!死にてぇのか!!!」


なるほど、ということはさっきの硬い物は銃……ってことになるのか?

つまるところ私達は不幸なことにも強盗の被害にあってしまったということだ。





あれから30分ほどたった今でも私は強盗に銃を押し当てられていた。

こう言うときドラマとかアニメとか漫画だと犯人を説得してめでたしめでたしになるけどリアルでそんな事をしたら絶対死ぬだろう。

……いや、案外死ねば転生出来たり……って私は何を考えているんだ。


「……あ。」


私が小さく声をあげると強盗はさらに強く銃を押し当ててきた。


「ど、どうした?」


動揺した様子でこちらを窺う強盗……って冷静にいってる場合じゃない、限界かも……。


「ちょ、ちょっとお手洗いに行きたいな~、な~んて。」


なんか極限状態にあったせいかそれとも恐怖のせいか尿意が限界に近づいて来ているのだ。

強盗が私から銃を外したので顔を見てみると顎で行け、と言っている様だ。

……ついて来る気は無いのだろうか。

いや、まぁ妥当と言えば妥当なのだろうけど……ってヤバい!そろそろ本当に限界に!


「あ、あはは、それじゃあ……行ってきます!」




「ふぅ、危なかったぁ。」


水を流し手を洗っていると携帯がなった。

マナーモードだったお陰で強盗にはバレていない……と思う。

一応確認の為に廊下に顔だけ出して見る。

左良し、右良し、前良し。うん、全部大丈夫。

そして顔を引っ込める。


「全く、誰なのよ。こんな時に。」


……まぁ、母からの電話だったのだが。

とりあえずその電話は放置して私は他の所にダイヤルする。

バレてないから小声で話せば大丈夫だろう。

…………繋がった。


「も、もしもし、警察ですか?」


我ながら可愛らしい声だった。

自分の震えて怯えた声を可愛いというのは些かアレだが。


『はい、どうしました?』


男性の低い声が聞こえてくる。

私はその男性の声に事情を説明することにし……。


ーバァンー


胸部に鋭い痛みが走る。

私はスマホを落とし、顔から女子トイレの床に倒れる。

さっきはいなかったのに……何故?


「……遅いから調べに来てみたら案の定これかよ。」


……あまり遅くなるのも行けないな。

私はそんなことを思いつつ強盗の足音とスマホから漏れる警察の男の叫び声を聞きながら意識を落とした。




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