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『退魔鬼譚』 ~鬼族の美少女と異世界帰りの勇者は怪異退治が任務である~  作者: 星衛門
第二章 退魔士と口裂け女

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23猫又

新作投稿!

下にリンクあり




 口裂け女は斗真からチューリップを受け取った後、


 「…………って、何でお花?!」


 裂けた口をポカンと開けて、斗真を見る。

 どうやら、口裂け女は斗真が出した一本のチューリップだけでは満足してくれ無かったみたいだ。


 「まだまだあります。どうぞ」


 そう言って、斗真はいろんな色のチューリップをイメージして、次々に咲かせる。

 口裂け女の前に、黄色や白、ピンク、オレンジ、紫など、いろんな色のチューリップを出して、渡す。


 ここまで斗真が何故、花を口裂け女に渡すかと言うと。

 まぁ…単純に花で落ち着いてもらうためだ。


 口裂け女の手の中に、小さなチューリップの華やかな花壇が出来上がる。


 「どうです?お花綺麗でしょ?」


 色とりどりのチューリップを出して、ドヤ顔で斗真が言う。


 そんな斗真に対し、


 「はぁ………」


 口裂け女は重いため息をつき、


 「あ〜馬鹿らしい!」


 そう言って、懐から大きなマスクを取り出し、口に付ける。


 「このお花は貰うね」

 「あ…はい」


 斗真は小さく頷く。




 状況が落ち着いたところで、口裂け女がぶつぶつと…自身の事情を話し始める。


 「私の勤めていた会社、ブラックだったのよね。安月給のくせに、残業もやらせて。しかも、リストラされたのよ!信じられる?!私、イライラしてて!」

 「は、はい」


 斗真は戸惑いながらも、相槌を打つ。


 聞いたところでは、どうやら口裂け女は会社に勤めていたが、そこはホワイトではなく、遂にはリストラにあった。

 恐らく、その際のストレスで問題を起こしたのだ。


 愚痴を零す口裂け女に聞こえないように、小さい声で隣の楓に尋ねる。


 「妖怪も会社で働くんだな」

 「ふぅ…妖怪の中でも「姿化かし」を使って、人に紛れて働く人はいるよ」

 「いるんだ」

 「妖怪の中でも、物好きな妖怪だけね。こういう人の社会に紛れて、働く妖怪が問題を起こすこともある。でも、今回は温厚な人で良かった」

 「温厚……なのか?」


 さっき口裂け女は楓に襲い掛かっていたように見えるが、楓的には…あれは温厚な方らしい。


 チョイチョイ。

 ここで、楓に肩を突かれる。


 「ねぇ…聞きたいんだけど。…………さっき私に向かって、矢を放ったよね?」


 矢を放ったとは、楓に絡みついていた口裂け女の動く髪の毛を射抜いた時の事だろう。


 楓は目を細め、ジーと斗真を見ていた。

 口裂け女に絡まれていたとはいえ、自身に向かって、矢を放った斗真の行動に思うところがあるようだ。


 「え、えっと…あれか。楓を助けるために、仕方なく」


 斗真は苦し紛れに言い訳をする。


 「助けてくれたのは感謝するけど。私に矢が当たるとか、一ミリでも考えなかったのかな……って」

 「ご、ごめん」


 ご立腹な楓に、斗真は謝るしかなかった。

 そんな斗真の頭に、楓はコツンと、軽い拳骨を降ろす。


 斗真自身、弓の腕前には大きな自信があったとはいえ、確かに仲間に向かって矢を放つのは、良くなかった。


 「はぁ…あの子には、悪いことしたわね。リストラでムカついてた所に、ぶつけられて、いつもの質問したら、化け物って言われたから、ここまで追いかけちゃった」


 そこまで、愚痴をこぼしていた口裂け女の話の中に気になる物があった。


 「その追いかけたというのは?」

 「貴方達と、同じ学生服を着た子よ」


 斗真と楓は顔を見合わせる。

 多分、口裂け女が追いかけた子が、今回役所に電話を掛けた妖怪だろう。


 楓が尋ねる。


 「その子は何処に居ますか?」

 「さぁ…何処に行ったのかしら。この建物の中で、追いかけてる途中で見失ったから。でも、まだこの廃ビルの中にいると思うわ」

 「そうですか。それなら……」


 楓は何かを思い出し、斗真を見る。


 「斗真、またあの…透視眼だっけ?それで探してくれない?」

 「分かった」


 斗真は〈透視眼〉をまた発動する。




 ブルブルブルブル。

 猫宮五月は、廃ビルの三階にある小さな個室内の汚れたロッカーにいた。


 「い、何時まで…こうしてればいいニャア」


 猫宮は口裂け女に追われた恐怖から、ロッカーの中で体を大きく震わせていた。


 そんな猫宮の耳に、ガタ!


 「ニャ?!」


 ロッカーがある部屋の扉が開く音が鳴り、反射的に猫宮は悲鳴を上げる。

 慌てて口を自身の手で塞ぐが、間に合わなかった。


 コツ…コツ…。

 段々と、足跡が近づく。


 そして、ガラン!


 ロッカーの扉が開けられる。


 「ひぃ!許してぇ!!」


 猫宮は涙目で謝る。


 「ここに居た」


 そんな猫宮の耳に、斗真の呑気な声が聞こえる。


 「ニァ?」


 猫宮は恐る恐る前を見る。


 そこには、首を傾げる斗真がいた。


 猫宮には、斗真の顔に見覚えがあった。

 同じクラスの生徒なので、当然ではあるが。


 「あ、あれ?き、君は……え~と、ニャア」


 しかし、中々斗真の名前が出てこない。


 斗真は高校に入学して異世界に転移するまで、殆ど友達も作らず過ごしていたので、猫宮にとって斗真の印象はとても薄いだろう。


 一方の斗真は猫宮の独特の語尾に目を見開く。

 後ろにいる楓を向く。


 「この人、もしかして…………猫宮?」

 「猫宮さん?」


 猫宮と聞いて、楓はロッカー内を見る。


 「確かに、猫宮さんに見えなくもない」


 楓が若干首を傾げる。


 斗真と楓が、猫宮だとすぐに分からないのは、猫宮が人の姿ではないからだ。


 ブロンド色のふさふさな毛並みに、ぴょこんと立った耳。

 二つの長い尻尾。

 今の猫宮は、人の身の丈ほどある学生服を着た猫の姿をしていた。


 三毛猫を人のサイズにまで大きくしたみたい。


 斗真の頭の中にある妖怪情報に当てはまるものがある。


 それは、猫又。


 日本の伝承や古典、昔話に度々出てくる猫の妖怪。

 猫又には、大別して山の中にいる獣と、人の家で飼われた猫が年老いて化けた二種類がいると言われている。


 そう…猫宮五月(ねこみやさつき)は、猫又であったのだ。




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『九十九神楽の式神使い』 ~失墜御三家の陰陽師である俺は過去へと戻り、絶望未来を回避するために、現代最凶の式神使いになる~

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