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3-01-03 診断結果

 検疫所に連れてこられた慎二たちは、いろいろな検査を受けたようです。



「加納さん、ちょっとお話したいことがあります。

 お時間よろしいでしょうか?」


 宮守さんから話があると、昼食後に皆でラウンジで休息していた時、俺は別室に呼ばれた。

 もちろん、俺達はここで拘束中の身分なのでお時間はたっぷりある。


 宮守さんと一緒に診断結果とかかれた個室に入ると、そこは4人掛けの小さな机にPCモニタだけが置かれた狭い部屋だった。


「何でしょうか?」


「まず、皆さん検疫結果は、全員陰性でした」


「あ、ほっとしました」


「検診の診断結果につきましては、イザベラさんには虫歯がありましたので、こちらは検査の際に、そのまま治療しておきましたので完治です」


「そうですか。 あとは大丈夫でしたか?」


「イザベラさんは少し痩せすぎですが、健康です。

 サリーさんはどこも異常なし。 いたって健康体です。

 原田さんも、いずれも問題はありません。


 加納さん、あ、加納さんはお二人いらっしゃいますので、間違えるといけませんので、以後名前で呼ばせていただきますね。

 私も、珠江で構いません。

 慎二さんもおおむね問題なしです」


 なぜか、ここでしっかり名前で呼び合う仲になってしまった。

 ところで、おおむねって何?


「貴子さんは問題ないのですが... まあ問題はありません。

 実はマリアさんの検査結果で、お話があります」


 ちょっと、ドキッとした。


「マリアさんは、お体が悪いのではありませんか?

 何か、それについて話をお聞きしていませんか?」


 俺は本当のことを話すべきかちょっと迷った。


「何か、マリアに病気が見つかったのでしょうか?」


「検査の結果、かなり気になる事が有ります。

 これをご覧ください」


 彼女はPCのビューワーで検査画像を表示させた。

 それは、マリアの腹部を捉えたCT断層写真とエコーの写真であった。


「ここ、これなんですけど、どちらの画像で見ても、かなり大きな異物が写り込んでいます。

 現在、お腹の表面にも肉眼でもふくらみが少し見うけられます。

 この画像を診断した技師からのコメントですと、体内に、子宮の内壁に、なにか異物の存在が見受けられるとの事です」


「それって、マリアのお腹に子供がいるってことですか?」


「いえいえ、そうではありません。

 慎二さんは、何かそのような心当たりがあるのですか?

 まだその方が良かったのですが、これは悪性のものです。


 この画像の白い部分は人体の細胞などではなく、何でしょうか? そうですね、これは結石に近い固い物のようです。


 今は電子式なので写真ではありませんが、もともとレントゲン写真はX線が体内を透過し、フィルムの手前に置いたX線で光る物質によりフィルムを感光させます。


 X線が強く当たった場所は強く感光します。 ネガフィルムなので、強い光があたると黒くなります。

 骨などX線が透過しにくいものが途中にあると、そこは光が弱くなり、フィルムが感光しないので白くなります。

 この写真のように、真白の部分は、そこにはX線が全く通らなかったと言うことです。


 現時点でこの石は子宮口よりも大きくなっており、体内から腹部周辺の臓器を圧迫しています。

 他の臓器にも影響が出ていると思われますので、早急に子宮の摘出を強く推奨すると言う診断が来ています」


 おれは、かなり焦った。

 何しろ、マリアの魔法ともかかわった話であり、詳しく話すことはマリアの魔法を他人に話す必要がある。


「あの、本人をここに呼んでも良いですか?」


「そうですね。

 いずれにしても手術となると、本人の同意が必要です。

 ただ、こちらの施設では検査と簡単な治療程度しかできません。

 そのため手術を行う場合、どちらかの病院に入院されて行うことになります。

 また、マリアさんの症状はかなり大きな手術が必要と思われますので、どちらかの大学病院が良いかと思います」


「それって、お腹の切開手術が必要ってことですか?」


「多分ですが、そうなります。

 私は医師ではありませんので、判断はできませんが、ちょっと異物のサイズが大きいため、切らないと無理だと思います。

 また、場所が場所ですので、手術以降の妊娠等への悪影響は避けられないと考えます」


 俺は、それを聞いて言葉に詰まってしまった。

 マリアに話すべきかも、すこし揺らいでしまっている。

 でも、逆にこのまま放置すれば、さらに悪くなることは間違いなさそうだ。

 やはり、魔法医の診断は当たっていたと言うことか...


 呼び出されたマリアが部屋にやってきた。


「マリア、落ち着いて聞いてくれ。

 君の病気の元が見つかったよ。

 やはり、お腹の中に異物があるらしい。

 それが体に悪影響を与えているとの診断結果が出た。


 しかも、それを早く取り出さないといけないらしいが、あまりよくない場所にあり、手術によっては今後出産が難しくなるかもしれないようだ。

 最終的にはマリアが決める事だけど、俺としてはマリアには永く生きていてほしい」


「えっ! この世界ではお腹の中までわかる方法があるのですか?」


「これが、君のお腹の中の様子だよ」


 俺は、PCの画面を示して、マウスを借りてビュワーの断層写真をスクロールして体内の3D画像をマリアに見せる。

 よくできたソフトであり、マウスで体を動かしたりスクロールして表示が出来る。


「ここにX線を遮る何かがあり、どうやらこれが君の病気の原因らしい」


「やはり、マリアさんは何か体の不調に気づかれていたのですね。

 私は少し席を外しますので、慎二さんとお二人でどうなさるのかはご相談ください。

 外におりますので、お話が済みましたらお声をかけてください」


 そういうと、宮守さんは部屋を出て行った。


「マリア、どうしようか?」


「これがわたくしのお腹の中なのですか?!

 わたくしは、死んでしまうことも、すでに覚悟してこの世界にまいりました。

 もし、この世界に来て治すことが出来るのであれば、とは思っていましたので、その手術とやら言う物をやっていただいてもかまいません。

 というよりも、治せる可能性があるのであれば、ぜひやっていただけるようにお願いしたいと思います」


「でも、そこは多分マリアが話してくれたマナ溜りじゃないかと思う。

 手術でそこを取ってしまうと、マリアは一生魔法が使えなくなると俺は考えている。

 それよりも心配なことは、それを行うと君は子孫を残せなくなる可能性があることだよ」


「そういえば体内にできる石という事で、わたくしが子供の頃のことを今思い出しました。

 わたくしに呪いがかけられる前の、まだ魔力が使えた小さな子供のころの話です。

 わたくしの叔父にあたる王族の人が、体内のマナ溜りに石ができやすく、できた石を定期的に取り出していらっしゃいました。


 わたくしがその時見せてもらった物は黒っぽい金属的な色合いで、表面はざらっとした歪な感じでした。

 そして角度を変えると、表面の色がキラキラと変わって見えました。

 体内から取り出た石などは気持ち悪がって誰も欲しがらなかったのですが、子供であったわたくしにとって、それはおもちゃの様で、お願いしてそれを頂きました」


 確かに、この世界でも他人の腎臓結石などを、珍しいからと言っても欲しがる人はそうはいるものではない。


「わたくしは、色が変わるこの不思議な石の中がもっと見たくて、触っているうちに魔力の集め方によってこの石が割れることに気が付きました。

 魔力で分割すると、割れた面は虹色で奇麗になるのですが、しばらくすると金属っぽい色合いに戻っていきました。

 面白くて、何度も何度も切断を行っているうちに、やがて小さくなりすぎてどこかに行ってしまいました。

 今なぜか、その時のことを思い出しました。 こんな大変な時にすみません」


 それはよほど楽しい思い出であったのか、マリアは嬉しそうに語っていた。


「慎二がわたくしに永く生きてほしいと言ってくれたことだけで、わたくしは十分幸せです。

 これ以上の多くを望んではいけない様に思います」



 マリアはそう言うが、何とかできないだろうか?

 ここには検査設備があるので、それを使って……

 しかし、俺は医者ではないので、当然外科手術なんてものはできないし、そもそも医学の知識が全くない。

 でも、医学の知識は無いが、マリアの魔法とスレイトの力は使えるはずだ。


 では手術に頼らずに、マリアの体内の異物を摘出できないのだろうか?

 それと、摘出した場合、人体に影響はないのだろうか?


「マリアは、魔法で箱の中の物体を、箱を開けずに取り出すことはできないのか?」


「魔法でモノを動かすことはできますが、箱の壁をモノがすり抜ける事はできません。

 そもそも、ここは貴子さんの里でありませんし、私はマナが貯まっていませんので、このエターナルが薄い場所では魔法を使うことはできません」


「そうか……

 なにか、手術じゃなく、体を切らないで、悪いものを取り出せないかな。

 イザベラの摩導具にもそんなのは無いのかな?」


「多分魔法と摩導具は似ていると思いますので、体に中から物を取り出すなんて、難しいのではないでしょうか?


 魔法がなんとか利用できないか、いろいろ考えてもうまい方法が見つからず、ちょっと頭が煮詰まってきた。


「マリア、冷たいコーラでも飲む?」


「お願いします」


 それで、俺はストレージから缶コーラを出した。 出した? 出した!


「「ストレージ!」」


 忘れていたが、俺には魔法に頼らなくとも、箱の中や壁の向こうの物でも出し入れできるストレージがあった。

 そう、直接触れなくともストレージであれば収納できる。


 ただ、いきなり体内から物体が無くなって、臓器に影響がないか?

 もし、既にその石?が血管とつながっていれば大量出血になってしまう。

 血管でなくとも組織と癒着していれば、それを引きはがすことになるので、やはり危険なことには変わりがない。


 あとはここにある装置を使って、安全性を最大限に調べる必要がある。

 俺は勝手に検査装置を使えないから、やはりここの協力が必要になる。


 マリアの命には代えられないので、俺はある程度手の内をさらす事を決めた。


 マリアの病気の事がバレてしまったようです。



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この物語はフィクションです。

登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

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