第五十七話 陽光の輝き
魔植物対策にはルーシディアとパーシェの力を借りた。
具体的にはルーシディアの力を具現化し、使いやすい形態に落とし込むためにパーシェの天才的なひらめきを利用した。
ルーシディアの司る光と熱、十分なマナに満たされ、本来の力を取り戻した精霊本来の役目を、マナを利用して具現化させる魔道具を作る。
今までのように炎だと結構危険だったが、それを光という形で行うことで飛躍的に安全性が高まった。
光によって魔素を退け浄化するこの魔道具は、かなり汎用性が高い。
例えば街道に設置すれば魔物よけになりつつ明るさを得られる。
町中に置いても良い。
この大陸を進むのにも役に立つし、あのドロドロヘドロの海を進むのにも役に立つだろう。
本拠にもすぐに製造方法や理論を送って、量産化体勢をとってもらう。
「すごいな、ちょっとマナを食うけど、魔植物がみるみる枯れて大地が蘇っていく……」
手持ちのランプのような形をした魔道具をかざすと、その光があたった魔植物はみるみる小さくなっていく。
炎で燃え盛ることもないし、直接マナをぶつけてどうこうするよりは遥かに効率がいい。
「すごく広くなりましたねー、いっぱいお野菜育てたいですー」
「ふふふ、わが太陽の加護ある大地で育てた作物はうまいぞー」
「わー、ルーちゃんすごいー」
二人は仲良しだ。
「力は、すごいのよね、力は、性格がクズなだけで……」
ドライアドが闇ドライアドになっている……
「輸送船もどんどん竣工しており、本土から物資や人も輸送できます。
海路もあの装置を使えば安定するでしょうし、この大地も蘇らせましょうね」
カイが張り切っている。
新天地で一番忙しいのは間違いなくカイだが、本人にとっては最も充実しているらしい。
もともと武官としても文官としても非常に優れた能力を持っているカイが、新天地開発でさらに一皮むけている感じだ。
今まではすべて自分でやっていたことを、きちんと人を利用して回している。
人の上に立つことがどういうことか理解してきている。
有能だなぁ……
任せられる仕事は任せて、自分しかできないことをする。
上司として成功するのに最も重要な能力だ。
この地の人間たちにとって獣人は保護すべき存在だったために、前の大陸よりもすぐに受け入れてくれるし、辛い時に援助し続けてくれた人間に対して、獣人側も恩返しがしたいと、一生懸命復興に向けて働いてくれている。
この大陸はサリストルと呼ばれていたそうだ。
もともとはパーシェの両親が治めていたこの街をサリストルと呼ぶことにした。
現在は住人の健康問題も栄養問題も回復し、活気を取り戻している。
ルーちゃんの言う通り、太陽の加護のおかげで周囲の土地での作物は大豊作。
枯れた魔植物を利用して堆肥も大量生産している。
本拠地との海路も精霊たちの力を借りて開拓し、順調に物資の運搬が行われている。
まずはサリストル南方の土地と海岸線の整備、港の開発に勤しんでいる。
魔植物を除いた土地は、予想に反して非常に肥沃な土地が広がっていて、広大な農耕地にして、食糧問題の解決を図れることが予想されている。
強力な魔獣も存在するが、本国から送られてくる兵士たちの良い訓練にもなる。
安全圏を確保し、背後が整備されたら前に進む。
周囲にある森や山岳部など、なかなか浄化が進まない場所もあるので、慎重に生活圏を広げていく。
それでも例の魔道具、陽光の輝きと呼ばれている道具を使うことによって、確実に人間の安全で豊かな生活圏が広がっていく。
高い壁で閉鎖された都市も、明るく開けた街へと変わっていく。
僅かな人間の生存権がどんどん広げていくのは、正直ワクワクした。
そして、そういった過程でもと神獣、知性を持った獣が魔獣へと堕ちた生物と出会うことになった。
「なるほど、確かに普通の魔物とは格が違うな……」
巨大な山猫、いや、トラ? ライオン? 強靭な肉体で、この険しい山の岸壁を駆け巡り、俺達に襲いかかってくる。
すでに何名も重傷者を出してしまった。
なんとか被害は出さずに済んだが、陽光の輝きが無ければまず助からなかった。
「二人に感謝だな……」
ルーちゃんとパーシェは街の管理を任せている。
住人もそれを望んでいるし、いるだけでなんとなく雰囲気が良くなる。
ルーちゃんはこういった場所に連れて行こうとすると文句ばっかりでうるせぇから置いてきた。
パーシェのためにはそれなりに働くので、適材適所だ。
俺とカフェの部隊で相手をしながら、用意していた罠へと誘導していく。
強力な陽光の輝きの光で退路を塞ぎながら、俺とカフェで惹きつけていく。
「もうちょっとだ、ほら! かかってこいよ!」
「まだ私達は戦えるわよ!」
猛烈な飛び込みからの一撃をなんとか盾で受ける。
とても素手では受け止められない。
何層も布を重ねた盾、固い盾だとあっという間に粉砕されるので、暴れ猫を抑える道具をヒントに作り出した。鎧も同様に丈夫な布を何層にも重ねたものにしている。
強靭な繊維が何層にも重なっているせいで、鋭い爪も牙も通らない。
ようやく疲れが見えて、動きの鈍った魔獣の噛みつきを盾で受け、首筋に腕を回し背後に周り抑え込む。
「今だ!!」
地面に仕掛けた魔法陣が光り輝く、同時に暖かな光が周囲を包み込み、俺と魔獣を包み込んでいく。
「グギャアアア!!」
俺は心地良いだけ、魔獣は体内の魔素を焼き焦がされ俺の腕の中でもがいている。
「大丈夫だ!! 我慢してろ!!」
「ぐぎゃ!! ぐぎゃああ!!」
「じっとしてろ、大丈夫だ。落ち着け……」
「ぎゃあ!! ぎゃ……、くーーーーー……フーーーーー……フュー……」
「よーし、いいぞ、落ち着け……辛かったなぁ……」
少しづつ力が抜けていく。
それでも俺は力を加えることなくピタッと身体をくっつけていつ動いても対応できるようにしておく。猫の補綴は油断してはいけない……
しかし、俺の緊張をよそに、魔獣から魔素が抜けて、美しい毛並みを取り戻していく。
「人の子よ……すまぬな、迷惑をかけた」
「離すぞ? 頼むから襲いかかるなよ?」
「ああ、大丈夫だ……」
俺は、そっと拘束を解いて、立ち上がる。




