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第五十五話 ルーシディアの罪

「さて、貴方はどなたですか?」

   「貴方はだーれ?」


 ふむ、なんというか、独特のテンポをお持ちのようだ。


「私はタスク、獣人たちを治めている者です」


「そーなんだ、よろしくねタスク。

 私は……パーシェ? この街を……守っていた?」


 なんで疑問形なんだ……


「すまんな、たぶんまだ記憶が混濁しておるのじゃ」


「ルーシディア様」


 すっぽりとパーシェの膝の上に収まっているルーシディア。

 その位置、その体勢で真顔で話すのはシュールな笑いを取りに来ているとしか思えない……

 

「パーシェは我が友ヴェルディの娘、そして、数十年、この街を守ってきたのじゃ……

 彼女なりの方法でな……」


「そうなのー?」


「魔素を利用した……」


「この大陸では、まともな方法で人間が生き残ることは出来なかったのじゃ……。 

 魔人から教わった方法を自分なりに考えて、今のやり方にたどり着いたのじゃ」


「うーん、覚えてないなー……」


「そういえば、魔人はどうなったのですか?」


「町の人間を利用することを勧めた魔人は、暴走したパーシェにボディーブロー一撃で気絶して、偶然休ませようとした棺が、清浄の力を集める聖なる棺だったために、消滅したのじゃ……」


「えー、そんなことしないよー……たぶん」


「なんというか、存在が、ギャグよりなんですね彼女は……」


「魔法使いとしての素質も抜群だし、民を思う気持ちも嘘はないのじゃが……

 半魔人化し、数十年、年を取ることもなくこの街を維持しておった……

 獣人には悪いことをした。

 魔素を含む食料を受け付けないので、最低な生活を強いてしまった……

 儂も力を失って見ていることしか出来んでな……」


 安全を確かめた上で獣人達はうちの弟子たちが適切な処置をしてくれるだろう。

 獣人の中に、いまでは人間もだが、重傷者がいるようならば俺に連絡が来る。


 それから、パーシェが眠くなったと寝かしつけて、ルーシディアに話を伺うことになった。

 

「タスク様、街の方々は死んだように眠っております」


「魔素が突然薄くなって対応するのに時間がかかるのじゃろう。

 もう少しここの良質なマナを吸わせてもらっておれば、儂も手伝えるじゃろ」


「ルーシディア様、恐れながら申し上げます、こちらのタスクの施術を受けられることをお勧めします。早い段階でお力を取り戻せるかと」


「おお、そうか、スマヌなドライアド。

 しかし、あの小さなドライアドがこのような美しい娘に育つとは……

 月日の立つのは早いのぉ……

 精霊王がお困りの時に漂っていたとは……不徳の致すところじゃ……」


 ドライアドが耳打ちをしてくる。


「タスク、思いっきりでOKだから、ああ見えて底なしに近いわ」


「なんで小声なの」


「内緒」


「はぁ……、それではルーシディア様?

 こちらに」


「うむ、よろしく頼む。

 ところでドライアド、施術とは」


「失礼します。フンッ!」


「ヌガアアアアアアアアァァァァァァアアアアア!!

 ま、まっちょまつまっちょぬわああああああああああああああああああ……あふん……」


「凄いですねルーシディア様、いくらでも入りますよ!」


「……」


「GO! タスク、GO!」


 なぜかドライアドがイキイキしている。

 俺は、言われた通り、ルーシディアの小さな体に大量に注ぎ込んだ……


「すごいな、コア4個分くらいは入ったよ!」


 先の戦いで溜めに溜めたマナの殆どがルーシディアの身体に満たされた。

 気を失ってからはマナを送り込むとビクンビクンと痙攣していたが、今は完全に眠りについている。


「これで明日には即戦力よ!」


「本当に良かったのか?」


「ルーシディア様って、精霊界が本当に大変だった時に、人間の女にうつつを抜かして自由気ままに遊び回っていて、その後もふらふらと精霊界のことなんて無視して人間の女を探しているから見つけたらその恩を返してやってくれ。って精霊王様が言っていたので問題無いわ!」


 すごくいい笑顔で答えられた。

 問題ないなら、よしっ!


 とりあえず、ルーシディアとパーシェは例の棺にしまっておくと良いというドライアドの助言を信じて、この街の状態を把握する。

 パーシェが行っていた効率よく魔素を街全体から集める流れを利用すれば、逆に効率よく魔素をマナへと変えて街へと放出できる。

 コアを利用した装置をいずれ作ろう。


 とりあえず街の状況把握の報告を受ける。

 やはり人間たちはしばらく掛かりそうだ。

 獣人達は食事を取り始め、みるみると生気を取り戻しているとのことで安心する。


「後はこれか……」


 街をびっしりと覆う魔植物、それといつ侵食されてもおかしくない城壁、この街がこの大陸での橋頭堡となるのは間違いない、しっかりと対策を打ちたい。


「やはり、基本に立ち返って聖水による加護だな」


 周囲の魔植物を聖火で焼き払う。

 ある程度街から距離を取れたら、ドライアドの魔法で周囲に堀を形成する。

 街の中心から用水・排水路を利用したシステムにマナを満たしたコアを利用して聖水作成装置を作り、排水路から街中の水路、それに堀を聖水で満たしていく。

 こうすることで魔植物は街の近くには侵入できなくなった。

 ボロボロの町中も少しづつ整備していきたいが、人手が足りない。

 獣人たちはよく手伝ってくれているが、せめて船を停泊している場所まで水路と街道を結びたいものだ。


「タスク様、本国と通信が開きました」


 ドライアドが敷いてくれた魔法陣がようやく起動した。

 これにより本国との通信が可能になる。

 周囲から魔素を吸い上げているせいか、魔植物は自然と周囲から枯れていき、代わりに青々とした草花が芽を出し始めた。


 大体の準備が終え、ようやく人間たちも動けるようになった頃、今更ルーシディアとパーシェが目を覚ました。


「忘れてた……」


 二人の姿をみて、思わず口から出た言葉だった。 

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[一言] ま、まっちょまつまっちょぬわああああああああああああああああああ……あふん……  は草ですよ
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