第四十七話 話し合い
魔人付きだった魔法使いは、その巨体を寄せ合い震えている。
俺は残った二人の魔法使いに向き合う。
「お前たちなら少しはまともに話ができると思うんだが、どうだ?」
「こうなっては抵抗しても仕方ありません」
「右に同じ、ただ、そいつの方が頭が回るから、話すならそっちにしたほうが早いですぜ」
一人はブラウンの髪を束ねて後ろにまとめている。
確かに冷静で知的な雰囲気がある。
もうひとりは金髪を短く刈り込んでいる。
二人は共通して一見細身だが、よく鍛え込まれている。
実践を経験している人間特有の凄みみたいなものを感じる。
「では、自己紹介ししておこう。
俺がお前たちが攻める予定だった最近調子に乗っている街を一応治めているタスクだ」
敵軍の中での俺らの位置づけはそんな程度だ、どうやら景気のいい街があるから吸収してやろう。
植民地化してそこから益を吸い取ってやる。
そんな考えから手を出してきている。
反撃を受けることさえそれほど考えていない。
それほど、舐めきっているんだ。
「ま、あんたらが舐めきってくれたからこそ、無駄な争いをしなくて済んだんだがな」
「……やはり、口車に乗るべきではなかったな……」
「はっ、口車ねぇ……脅しだろあんなもん」
「う、うるさいぞお前ら!!」
「お、お前らが出向くと言うから我らも手伝ってやろうかと……!」
「何を言っても我らは敗軍の将……」
「戦えもせずに負けるとはな」
「ひ、ひぃ……た、タスクとか言ったな、いやおっしゃった……
た、タスク様、か、勘違いなんじゃ!」
「そ、そうである!
わ、我々は、その友誼を、そうじゃ友誼を結ぼうとしていたのじゃ!!
そ、それを勘違いして、そちらが急にこんなことを!!」
「はぁ……」
「ひ、ひぎゃあーーー!!!」
俺のため息で、馬鹿な魔人つきの一人の手首がぼとりと落ちる。
カフェが綺麗に切ってくれたので、切断面は一瞬で綺麗に凍結する。
「嘘は嫌いなんだよね、俺」
そのままギャーギャーとうるさいから、手首を元通りにくっつけてやる。
「今の技は……魔法、ではない……」
「何だ今のは、魔法を使ったときの嫌な感じがしねぇ……」
二人の魔法使いは俺のやったことに驚いている。
魔人つきの無能はただ痛みと恐怖に怯えている。
やはり、ガリウスと同じような感じかな……
俺は二人の魔法使いに興味を持った。
「カイ、そっちのうるさいのを使って敵兵とやつらの街を抑えてきてくれ。
無理なら、まぁ、後でやるか……出来る範囲で構わない」
「わかりました」
「ひ、ひーーーーー!!
誤解じゃ!! 誤解なんじゃ!!」
「話を、話を聞いてくれ!!」
よく喚く肉の塊が連れ出され、ようやくテントの中が静かになる。
「二人共、名前を聞いていなかったな」
「私はルーケウス」
「俺はフェルだ」
「腕輪は外せないが、もう拘束もいらないだろ。
変な気は起こさないでくれよ、たぶんこちらのほうが強いが、一人でも傷つけられたら、殺さなければいけなくなる」
「ありがたい、もう、完全に白旗ですよ」
「残念だが、一人、腕の一本も折れたらラッキーってとこだからな」
「はは、なかなか血気盛んで嫌いじゃない。
何なら後で手合わせを願いたいくらいだ」
「はっ! やるなら手加減できねぇぞ?」
「俺も結構やる方だぞ?」
「フェル、今はそっちの気は抑えてください」
「あー、わかったよ。任せた」
そう言うとテーブルに座って腕を組んで話しを聞く体勢になる。
「それではルーケウス、どういった経緯で今回の遠征に?」
それからはこちらの集めた情報とほとんど同じだった。
ルーケルス、フェルの守る小さな町、住人の一部を人質に取られ、無理やり今回の軍に従軍させられた。今回の作戦が終われば、正式に配下とさせられるだろうって話だ。
「二人の実力なら、あんなデブども相手じゃないだろ?」
「魔法の火力だけならあの豚、しつれい3名のほうが上です。
接近戦なら相手になりませんが、みなさんが始末してくれた側近が……ね」
「女は殴らねぇ……」
「先に言っておくが、あいつらは魔人だ」
「なっ!?」
「はぁ!?」
「それと、お前たちが使っている魔法、あれは環境を汚すから使わないほうが良い。
望むなら、詳しい情報と、もっと良いものを教えるけど、どうする?」
「……我々の生殺与奪の権利はそちらにある。
断ることなど出来ないと思いますが」
「いや、二人がどちらを選ぼうと開放する。
それに君たちの街の住人はすでに保護している。
護衛付きでそれぞれの街へと送っているよ。安心してくれ」
「……感謝の言葉もありませんタスク様、私は今回のことで自分の限界を知りました。
どうか、タスク様のもとで働かせて欲しい」
「俺は……喧嘩してみて決めるぜ!」
ニヤリ、おもわず口角が上がっちゃうね。
それから、フェルを完膚無きまでボコボコにした。
こうして俺は、信頼できる魔法使いを、また二人仲間にすることが出来た。
俺にボコボコにされたフェルを見て、
「うわー、カッコつけなくてよかったー……」
とルーケルスがつぶやくのを聞いて、思わず笑ってしまった。




