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第四十六話 大陸の覇権

 カイたちが突き止めた全軍の集結場所、開かれた草原で見渡す限りの敵兵がまさに陣を貼る準備を行っている。

 

「タスク様そのマントにマナをきちっと循環させておいてくださいね」


 目の前にいるカイが話しながらすぅっと消えていくような感覚に陥る。

 集中すればそこにいることがわかるが、余程集中しなければ、なんだか存在がぼやけている。


「タスク様、早く、そろそろ行きますよ」


「あ、うん」


 俺もマントにマナを循環させるようにする。


「大丈夫です、ちゃんと機能していますよ」


 このマント、マナを巡らせることで装備者の存在認識を薄めてくれる。

 その効力は絶大で、今まさに実感している。

 俺たちは、敵陣の真っ只中を、スタスタと歩いているのだ。

 手が届く場所に敵兵がいて作業をしている横を、普通に歩いている。

 誰一人として俺たちに気がつくことはない。


『凄いが、怖いな……』


『慣れると起動しているの忘れて話しかけてビビられます』


『確かに』


『あそこですね、魔法使いと魔人たちが集まってます』


 一つのテントを目指して迷うことなく歩いていく。

 テントに入り、しばらくすると目が慣れてくる。

 何やら獣人たちが人をまるで荷物みたいに抱えている……


『もう終わってましたね。じゃ、行きましょうか』


『え、ちょっとなにが起きてるの?』


『まぁまぁ、ここじゃ何なんで行きましょう』


 なんか袋に人を詰めて抱えて運んでいる。

 あまりに手慣れている。

 仕方なくそれについていく……

 帰り道も誰に気が付かれることもなく、敵陣を普通に歩いて脱出する。

 そのまま馬に乗って敵陣から離れた森の中に準備した俺達の拠点に移動する。

 拠点につくと袋の中からゴロゴロと人間を取り出していく。

 中には真っ青な肌の人間もいる。つまり、魔人だ。

 どうやら呼吸はしているが、深く眠っているようだ。


「さて、これが敵の魔法使いと魔人です。

 この解毒薬でなければ目覚めることはありません。

 殺します?」


「へ?」


「何度かの実験で、魔人も完全に眠らせられることは実験済みです。

 食事に混ぜても、布につけて吸わせても、この通りです」


「え? なにこれ、もう敵のボス的なの捕らえてるってこと?」


「はい、活かすも殺すも自由です。

 だから言ったじゃないですか」


「いやいやいや、怖っ!! なにこれ、同じこと俺がやられたら一発じゃん!!」


「いえ、これは魔力に反応する薬なので、マナを利用する人間には効きません」


「え、怖っ! 完全暗殺集団じゃない!

 魔法使いの天敵じゃないか!」


「そうですね、魔力使う人間には負ける気はしません」


「……そりゃあの自信になるわな……

 そんな危険な薬どうやって見つけたんだ」


「私があげたのよ」


 ふわりと隣にドライアドが現れた。


「直接は手を貸さないけど、無駄な戦いで消耗されても後味悪いじゃない」


「いや、なんていうか、直接よりもたちが悪いっていうか……

 まぁ、その、たしかに凄惨な殺し合いよりは……」


「それで、殺します?」


 もう魔法封じの腕輪をつけられ、魔法使いも魔人も無力化されている。

 カイの冷たい目が怖い……カフェはもっと冷たい目で眠っている人たちを睨みつけている。

 後にわかるのだが、この魔人つきの魔法使いたちは、特に酷く獣人を、『消費』するタイプの人間で、その話はすでにカイやカフェの耳に入っていた。


「魔人は……殺そう……」


 起こしても、どうせ殺す。なら、眠っているうちに……

 俺も随分と、染まったもんだ。

 魔人3体からコアを抜き取った……


「……ぬ……な、何だこれは!?」


「どこだここは!!」


「じゅ、獣人!?」


「ま、魔法が使えない……!?」


 目を覚ました魔法使いたちが状況がわからず騒ぎ出す。

 

「あー、ちょっと静かにしてもらえるか?」


「カルメア!! カルメアはどこだ!?」


「ヴァルクス! すぐにこの不埒者共を殺せ! どうした!?」


「キーリシュ、キーリシュはどこだ!」


 見事に魔人つきの3人がうるさい。

 残りの二人は、状況を冷静に判断しようと周囲に気を配っている。

 体格もまるで違う、魔人付き魔法使いは皆見にくく太りチラシ、なんていうか、生理的にムカつく顔のおっさんだ。

 一方魔人と一緒にいなかった魔法使いは、なんというかガイアスと同じように実戦向きな雰囲気がある。一人は細剣使い、もうひとりは短刀使いだろう。


「貴様ら獣人ごときがこのサンデリオン様になんという無礼!

 すぐに解け!」


「このアスデにこれほどの屈辱! 我が軍が貴様らなどすりつぶしてくれる!!」


「すぐに解くのじゃ! ああ、獣人臭くて敵わん!!」


 コイツラは、馬鹿なのか?

 状況が全く理解しておらず、騒ぎ続ける3人、お仲間である二人も呆れ顔だ。

 カフェが本当に限界だ……嫌だったが、見せしめも必要だ。

 カフェに目配せをしてうなずく。


「ぐっ!! 何をする獣人が!!

 他の獣人と同じようにすりつぶして獣人のえさにしてやるzぐぼぇあああぁぁぁぁぁ……」


「いたぶるのはよせ、気持ちはわかるが、一息で殺せ」


「ぐああぁぁぁヒュッ……」


 どさり、と、体が首と離れて床に土下座するように落ちる。

 切断面はすぐに凍らせてその場を血で汚さないようにする……


「な、な、何ということを!!」


「黙れ」


 俺の一言に、ようやく場が静かになる。


「その死体も後で使う。()()()()()()


 今更だな、俺は、人間から憎悪を向けられたって、どうとも思わん。


 ようやく()()()()が始まるのだった。


 

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