第四十四話 精霊の実力
「精霊、強い」
「やることないねねーさん」
「そうだね」
「真面目にやると凄いんだなシルフィード」
「む……」
「ちょっと、シル! 集中して!」
「……」
精霊無双だった。
マナを提供されている精霊がどれほど強大な存在か……
「極端にこの世界の人同士の闘いには関与しませんが、ダンジョンは不倶戴天の敵!
全力全開です!」
ドライアドさんたちの全力戦闘は、圧巻だ。
俺が魔素を浄化して大量のマナを吐き出す。
ドライアドさんが操る木々が敵を縛り上げる。
シルフィードの風の刃とノームの大地の槍が敵を切り裂き貫く。
俺たちはドロップアイテムを拾う。
かなり年季のあるダンジョンで、ダンジョンとして大変広く、深いし、魔物の質も高い。
俺たちだけで突入していたら、一体どれくらいの時間攻略にかかったかわかったもんじゃない。
精霊たちは、こっちの空気が悪い。とサクサクと下に降りる階段を見つけて進んでいく。
「宝箱とかとらないのですか?」
ゲーマー的な意見を言ってみたが。
「どうせダンジョンの魔石が作り出したものだから、やっつければまとめて手に入るわ」
と、ありがたいお言葉を頂いた。
マナを利用した強化で5日ほど不眠不休で進み続けた結果、最下層部へと到着した。
なお、守っていたラスボス的な巨大なキマイラも、精霊3人衆に封殺されバラバラにされ、見たこともないような巨大な魔石になった。
「魔人のコアのほうが小さいけど純度が桁違いよ、まぁ、魔石としては結構な量になるから、便利なのはこっちかもね」
小さな国家の魔道具を全てまかなえるぐらいの巨大な魔石をぽーんと軽く投げてくるドライアドさんかっけー……白衣にはこのダンジョンで手に入れた大量の魔石が収められており、すでに全てたっぷりとマナが充填されているだろう。
これだけでも莫大な資産になる……ダンジョン旨い。
「タスク、いやらしい顔してるけどみんな行っちゃうよ?」
ボスを倒し現れた扉を抜けると、目の前に先程の巨大な魔石が可愛く見えるほどの大きな魔石が部屋の中央に浮かんでいる。
「タスク、マナでやっちゃって」
「はい、ドライアド姉さん」
魔石に両の手を添えると膨大な魔素が蓄積されているのがわかる。
なんとなく焦っている感情のようなモノも伝わってくるが、白衣さんは無視して魔素を吸い上げていく。その代わりに大量のマナを注ぎ込む。左手で吸い込み、右手で注ぎ込む。
悪魔の左手、神の右手だな、フフフ……
魔石から混乱と、そして、快感? なんだか楽しそうなイメージが伝わってくる。
なんとなく同期している俺も、楽しい感じになってくる、ふへへ……
「タスク? なんか様子変だけどなにかしてる?」
「ん? あれ、手が、離れない……?」
すでに魔素は抜けきっている。
今では両手でマナを注ぎ込んでいるが、何やら様子がおかしい、魔石の体積はどんどん小さくなって行くが、マナは吸い込まれ続けていく。
「マナが、強制的に……吸われて……」
「タスク殿! 手を切り落としますか!?」
「ガリウス、久しぶりに口を開いたと思ったら、永遠に口を利けなくしますよ?」
「じょ、冗談ですよドライアド様……そのバラのムチしまってくだせえ」
いや、絶対に冗談じゃなかった。
「まだ、余裕はあるけど……何が起きて……」
魔石が両手で抱えられるくらいまで小型化した瞬間。
突然マナを吸い込むのを止めて、手が離れた。
倒れ込む俺をカフェとドライアドが支えた。
そして、俺の腹の上にはそのまん丸とした魔石が乗っかっている。
「何が起きたかわかる?」
ドライアドに問いかけるが、首を横に振る、シルフィードもノームも首を振る。
「逆にタスク、なにが起きたのか詳しく教えて頂戴」
「ああ、実は……」
妙な感覚を感じて、それに引っ張られて気がついたらこんな事になったことを簡単に話した。
「ダンジョンの魔石には半生物的な意思が生まれるらしいから、その意志がタスクのマナを欲したのかもしれないわね……」
「これに意思があるの? ああ、石だけに?」
「……」
周囲の気温が下がった気がした。
魔石は静かに光るだけだ。
「と、とにかく、これでダンジョンも消える……のか?」
「とりあえず新たに魔素がうまれたりはしないけど、かなり年月が立って濃厚に魔素が溜まっているから、タスク、頑張ってね!」
「頑張るって……白衣さん出来ますか?」
俺の言葉に反応するように、周囲の大気が白衣の内部に流れ込んでいく、その勢いがどんどん強くなっていく。
「はああ……気持ちいい……」
白衣が魔素を吸い込み、新鮮なマナを吐き出していく。
マイナスイオンのように精霊たちにとっては非常に心地良い空間になるらしい。
ダンジョン中の魔素を吸い込むまで、俺はまるでダイソンのように空気を吸い込み、マナを吐き出すことになった……
「大地、救われた」
「良かったよかった。あのトンネルには本当に感謝しているから、これくらい軽いものだ」
「しばらく、あそこにいる。酒、頼む」
「任せといて!」
ダンジョンの最後の部屋には、入り口そばにまで移動できる魔法陣と大量の宝が在った。
このダンジョン制覇で手に入れた大量の宝が、俺の大陸での地位を不動のものに……
してしまうのだった……




