① 京子の呟き(プロローグに代えて)
「セーラー服と雪女」シリーズの第2部の⑥です。
何時もの事ですが
この物語はフィクションです。
実在するいかなる人物、場所とも
全く関係有りません。
それは、静かな、とある寒い日の深夜の事だった。
(こんな素敵な夜に、雪が降っていないのは、少々物足りないわね)
彼女はそう思った。
「ねえ、貴方」
京子は、隣でアメリカンを飲んでいる、サン・ジェルマン伯爵に囁いた。
ここは、いつもの名護屋テレビ塔内部の、亜空間レストラン。その南の窓側の席に二人は座って、栄町の夜景を見ていた。京子はいつもの黄色いワンピース。伯爵はモスグリーンのジャケットを着ていた。
「何だい?京子さん」
伯爵が、ジェントルな声色で答える。
今日は1月1日。つい先程、午前0時を回ったところだ。
「とうとう、2012年になってしまったわね?」
「ああ、そうだね」
「実は私ね、今更ながらに、気づいてしまった事が有るのよ
「ほう……それは一体、どんな?」
「貴方、割りと何度も、同じような手法を使って、歴史上で生死不明の人物や、死体の行方が怪しい人物の命を、助けて来たわよね?」
「まあ……そうですねえ。セラミックで出来た骨格に、人工タンパク質の筋肉を着けて、苦心して作った、等身大の身代わり人形。ジャンヌ・ダルクやマリー・アントワネット、それに明智光秀……よく利用しました」
「よくよく考えてみれば、似たような事例が、過去の歴史上、最も有名な人物に、起こっていたのよ」
「ほう……そんな事が?実に興味深いですねえ」
「何を知らばっくれて居るのやら……アレは、貴方の仕業でしょ?一体、"彼"を、今日まで、何処に隠していたのよ!?」
京子は思わず、大きな声を出してしまった。
その時である。
大晦日から元日を跨ぐ、深夜のこの時間に、地下からエレベーターが上がって来たのだ。
伯爵の助手の杉浦鷹志は、もうとっくの昔に帰宅していた。それなら、一体誰が来るというのか?
エレベーターの扉が開いた。
出て来た人物は、白いガウンのようなモノを着ていた。ウェーブのかかった長い黒髪、口の周りには、伸びたヒゲ。骨格はしっかりしているが、余り肉付きの良くない身体……。
「やあ、サン・ジェルマン君。ついに、今日という日を迎えたね?私は約束通り、地下からココへ上がって来たよ」
その男は、ヘブライ語を使って、そんな風に気さくに挨拶した。
「あ、ああっ……!?」
京子は、そう言ったきり、口をただただ、パクパクさせていた。
ソレは誰有ろう……"イエス・キリスト"御本人だったのだ!




