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婚約者を義母妹に奪われた地味令嬢ですが、雷の精霊様の溺愛が止まりません〜不屈の心で反撃いたします!〜  作者: ぶるどっく


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第五話



 ミリアンナが産まれるより昔。


 百五十年ほど……昔の話。


「雷様……!

 どうか、この地をお護りください……!」


 血反吐を吐き、満身創痍な風情の男たち。


「おや……?

 何故か僕の別荘に、害虫が湧いて出ましたね。」


 冷たいを通り越した、極寒の瞳。


「殺虫剤を撒くのも煩わしい」


 優雅に大木にもたれ掛かり、読書に耽る。


「ひっ……おねがっ、お願いしますっっ……どうかったしゅけ……!」


 バリバリ、バチバチ。


 時折、地面へと紫電が弾け、轟音を立てる。


「面倒な生き物ですねぇ……人間とは。

 どうせ、百年も無い命の分際で……僕に声を掛けるとは、ね」


 指をクルクルと回し……


「ぴぎっ?!」


 ひゅっと指を下に向ける。


 視界を灼き尽くす白光。


 鼓膜を震わす轟音。


「ひっ……ひっ……」


 アンモニア臭が鼻につく。


「この程度で、粗相をするとは……犬畜生以下ですね。」


 人外の美しさを宿した妖しい美貌。


「僕のお気に入りの場を穢すとは……命で贖っても、足りませんねぇ?」


 その場にいた男達が震え上がるが……


「ちょっと待てよっ!!」


 男達の中で一番若い青年が叫んだ。


「おやおや……」


 雷様を睨むように叫ぶ青年。


 その姿に、雷様の視線が降り注ぐ。


「お前はっ!

 すごい精霊さまなんだろっ!

 人間よりすごい存在なんだろうっ!

 だったら、弱い奴の話くらい聞いてくれても良いじゃんかっ!

 別に減るもんじゃねーだろっ!!」


「「「「フランソワっ?!」」」」


 周囲の人間たちが悲鳴のように叫ぶ。


「小僧っお前は黙ってろ!」


「お前なんかに何ができるっ」


「爵位を継いだばかりの餓鬼が調子に乗るなっ!!」


 口々にフランソワと呼ばれた青年を責め立てる男達。


「確かに、俺は餓鬼ですけどっ!

 俺だって、俺の領民を助けたいんだっ!

 このままだと、この細目の顔だけは良い雷様のご機嫌を損ねて犬死するだけじゃないっすかっ!!」


「「「「フランソワぁぁぁぁっっ!!」」」」


 本人?


 本精霊?


 少なくとも、目の前に雷様本人がいるのに言う言葉ではないと男達が悲鳴を上げた。


「犬死するくらいなら!

 少しでも雷様の雷のせいで俺たちが苦しんでるって!

 すっげえ迷惑だって伝えないと、それこそ犬死だ!

 俺はバカだけど、声だけはデカいから無駄撃ちする雷様の雷の音に負けないくらいの大声で叫べますっ!」


「…………」


 雷様に背を向けて、男達へと話すフランソワの背後。


「だいたいっ!

 雷様って言うから、どんな毛むくじゃらの山男みたいな奴かと思っていたんですけど。

 見た目は何か……女を虜にする妖しげな色香を纏った文学青年っていうか……?

 めっちゃ綺麗な顔だけど、性格悪そうな感じですね!」


「………ほう?

 言いたい放題ですね。」


「っ?!」


 間近で聞こえた美声。


「あじゃっ?!」


「本人を前に散々な言いようですね。」


 にっこり。


「……ハハっ……えっ、あー…………聞こえて、ました……?」


「ええ、バッチリと♡」


「っ………ぃっ………ぁ、ぅ………!!」


 妖しいと、女を虜にすると評された妖しい微笑み。


 腰にくる美声で答えた雷様に、フランソワは声にならない悲鳴を上げた。


「君……人間の割には、面白いですね?」


「あっ、えー……ありがとうございまっするっっ!!」


 焦って舌を噛んだ。


 最悪だった。


「……まっする?」


 キョトンとしたかと思えば


「ふっ、ふふふ……!」


 笑い出した雷様。


「本当に、面白い変な人間ですね。」


「…………あざっす!」


 これ以上、猫をかぶってもしょうがないとフランソワは潔く諦めた。


「どうやら、君は……馬鹿で、無謀で、考えなしの救いようの無い馬鹿みたいですね。」


 クスクスと笑いながら、雷様が呟く。


「(馬鹿って二回言われた……。

 馬鹿みたいに雷を無駄撃ちする雷様だって、馬鹿だと思うけどなー……)」


「おや、お馬鹿な君の脳天目掛けて、馬鹿な雷様の僕が雷を無駄撃ちして差し上げましょうか?」


 にっっこり。


「すんませんっすんませんっ!

 マジですんませんでしたっっ!!

 バカでアホで救いようの無いバカなので勘弁してくださいっっ!!

 俺! 人間なんで雷が当たったら死んじゃいますぅぅぅっっ!!」


 土下座の勢いで謝るフランソワ。


「まったく。

 最近の人間は、礼儀を知りませんね」


「……なんか……年寄りくさっ……ぐふっ?!」


「おや……ちょうど良い椅子が。」


 余計なことを言ったフランソワの体の上。


 浮かんでいた雷様が、勢い良く座った。


「君は、お口も、思考も、タダ漏れですね。」


「え……もしかして……」


「人間の思考を読むなど、簡単すぎて欠伸が出ます。」


「ひえー……」


 顔を青くするフランソワに、雷様は笑う。


「僕たちにとって、人の上辺の称賛など無価値だ。

 ……そして、心に潜めた悪意も……ね。」


「ひっ……」


 小さく漏れた悲鳴は、フランソワ以外の男達。


「……ねぇ、面白い人間。」


「え、俺のことっすか?」


「君以外いないでしょうに。」


 面白い玩具を見付けた。


「……君が僕のことを楽しませてくれている間だけ、雷を止めてあげましょう。」


「本当っすか?!」


 明るい……真っ直ぐな魂。


「その変わり、僕を飽きさせないで下さいね」


「頑張るっす!」


 破天荒に微笑むフランソワ。


 雷様は、底の見えない深い微笑みを浮かべるのだった。


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