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婚約者を義母妹に奪われた地味令嬢ですが、雷の精霊様の溺愛が止まりません〜不屈の心で反撃いたします!〜  作者: ぶるどっく


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エピローグ



「紫苑くん……義母や義妹に母と祖母の形見も奪われて、床を舐めろと言われた……あの日。

 屋敷から飛び出して、東屋の側の小屋で生活する私を助けてくれて、ありがとう……!」


 もう二度と会えないかもしれない紫苑に……!

 自分の精一杯の感謝の気持を伝えたい!


「この国を追放されることになっちゃったから……もう、紫苑くんと一緒に……」


「あの、ミリアンナ?

 どうして、お別れみたいなことを言うのですか?」


「え……だって……」


「人間の考えは時々不思議ですねぇ……。

 ミリアンナが居ないのに、僕が此処に居る必要は無いですよ。」


 うっそりと口角を上げた紫苑が、周囲の人間に聞こえるように告げる。


「僕はミリアンナと共にあります。

 この国のことは、この国の人間どもに任せればいい。」


 ミリアンナには向けない残酷な微笑み。


「そう……ミリアンナが悲しまないように関わりのない平民は逃げることを許しましょう。

 しかし、僕の愛しいミリアンナを見捨て、大切にしなかった王侯貴族は許さない。

 数多の雷撃が落ち続けるこの大地で、生きて苦しめ」


「そっんな……!」


 残酷な宣告は、ミリアンナが知る必要はない。

 そして、これ以上は薄汚い人間の溜まり場にミリアンナがいる必要もない。


「場所を移動して、ゆっくりと話しましょう。

 これから先の二人の未来を話すことは、とても重要なことですよ」


 さっさと残酷な微笑みを消し去り、紫苑は残された人間の助けを求める悲鳴に応えることなく空間を移動してしまうのだった。





 フランソワ侯爵家の東屋。

 ミリアンナと紫苑が二人で過ごした、その場所。


「ミリアンナ、目を開けても良いですよ」


 まるで水面に波紋が広がるように、何もない空間から現れた紫苑とミリアンナ。


「う、ん……紫苑、くん……?」


 ずっと固く閉じていた瞳を開ければ、ミリアンナの視界には紫苑の優しい微笑みが映る。


「あの!

 さっき私とずっと一緒って……!」


 ミリアンナの願望が生み出した幻聴だろうか?

 精霊である紫苑が、ただの人間であるミリアンナの側にいてくれると都合のいい言葉が聞こえた気がした。


「幻聴などでは有りませんよ。

 僕は、ミリアンナと共に有ると確かに言いましたから。」


「っ……でも!

 私は……何も、持ってないよ……。

 紫苑くんは、すごい精霊様なんでしょう?」


 不安に揺れるミリアンナの手を優しく握り、片膝をついた紫苑が微笑む。


「持っています。

 僕が気に入った素直で面白い、優しいミリアンナの純粋無垢な魂の輝きを」


「……面白い、は褒め言葉なのかな……ひゃっ?!」


 面白いという紫苑の言葉に、少しだけ顔を顰めたミリアンナ。

 だか、その手の甲に紫苑が口付けを落とした瞬間に、茹でタコのように顔を赤くして短い悲鳴を漏らした。


「おや……林檎のように真っ赤に染まりましたねぇ?」


 いつもよりも、大人びた紫苑の姿は……まるでお伽噺の王子様のようでミリアンナの胸が高鳴る。


「紫苑くんっ!からかわないでよ!」


「からかっていませんが…………まだ、人間の雛には刺激が強すぎましたか……」


 人の子は脆いですし、まだ我慢ですねと紫苑は考える。


「ミリアンナ」


「……なに、紫苑くん」


「ふっ……く、くく……!」


 からかわれたと思って、唇を尖らせているミリアンナに紫苑は吹き出してしまう。


「っ……やっぱりからかってるのね!

 紫苑くんの意地悪、んっ……!?」


「ふふ……奪っちゃいましたので、将来の予約ということで……お願いしますね」


「ぁ、う……え……っ……?!」


 真っ赤に熟れた林檎よりも、さらに頬と言わず首筋まで赤く染め上げたミリアンナが両手で口を押さえる。


「(いっ、いいいい……いまっ!

 口にチュッて!

 よくわかんないけどっ!

 なんか柔いのが当たった……!)」


「おや……よく分からなかったのなら、もう一度しましょうか?」


「ひゃっ?!

 だっ!ダメっ!ダメだからねっっ!!

 わたっ……わたしっ!まだ紫苑くんを好きって言ってないしっ!

 紫苑くんからも言ってもらってないもん!」


 顔を赤く染め、潤んだ瞳で、自分の唇を両手で隠しながら、混乱した様子のミリアンナが叫ぶ。


「…………ミリアンナは、僕の予想を簡単に超えますよね」


 ミリアンナの叫びに、一瞬だけ素でキョトンとした紫苑。

 しかし、すぐにその言葉の意味を理解して頬を微かに赤く染め、口元を手で隠す。


「へ……紫苑くん?

 私……変なこと、言った……?」


「言いましたよ。

 ……僕から、好きって言ってもらってない。

 ミリアンナも、"まだ"僕のことを好きって言ってない、と……」


「…………っ?!

 ちがっ……ちがうのっ!

 いや、ちがわな……でも、えっと……ちがう、けど違わな……」


 自分の言ったことを理解したミリアンナが、さらに慌てて泣きそうな顔で狼狽える。


「好きですよ」


「きゃうっ?!」


 狼狽えるミリアンナを引き寄せ、至近距離で瞳を合わせた紫苑が告げた。


「好きですよ、ミリアンナ。」


「あ……え、しおん……くん……」


 吸い込まれそうな紫水晶の瞳がミリアンナを捕らえる。


「君は覚えていないでしょうけど……幼い君が僕に泣くのかと問い掛けたあの時から…………ずっと、ミリアンナだけが好きです」


 普段の胡散臭い笑顔も、声音も封じ込めた紫苑の真っ直ぐな想い。


「ぅん……うんっ……私もっ紫苑くんが好きっ!」


 満面の笑顔で応えたミリアンナが、勢いよく紫苑に飛びつく。


「おっと、ミリアンナ……危ないですよ?」


「ふふ!

 大丈夫だよ!

 だって、紫苑くんなら絶対に受け止めてくれるものっ!」


「っ……ミリアンナには、敵いませんね」


 絶対のミリアンナからの信頼に紫苑は苦笑してしまう。

 クスクスと微笑みあったミリアンナと紫苑だったが、ミリアンナが何かを思い出したように顔を曇らせる。


「……そう言えば、私……これから、どうしよう……?」


 国外追放を言い渡されたミリアンナ。

 何時までにとは言われていないものの。

 ナルシッサやリリアーナは勿論、フレドリックとも、もう会いたくないとミリアンナは思う。


「(取り敢えず……小屋の中に有る旅に必要そうな物を荷造りして……果物は日持ちしないから、数日分だけ持って行く……?

 あとは、水に……着替えとか……?)」


「そんなに悩まなくても良いですよ」


 頭を悩ませるミリアンナに、紫苑は何時もの微笑みを浮かべて提案する。


「王から慰謝料を貰っていますから、旅費に困ることはありません。」


「慰謝料……?」


「ええ。

 僕の大切なミリアンナを、あんな救いようもない輩の婚約者として数年間も不愉快な思いをさせたんですから…………当然ですよ」


「よく分からないけど、旅費に困らないのは助かるわ」


 ……実際には、紫苑が王や王太子が好き勝手使っていた金貨の一部を回収しただけだが。


「ゆっくりと世界を旅して回っても良いですね」


「楽しそう……!」


 紫苑の提案に、ミリアンナは瞳を輝かせる。


「紫苑くん!

 これからも、よろしくお願いします!」


「ええ、此方こそ」


 紫苑とミリアンナは、これからの旅路を思い描いて希望に胸を躍らせるのだった。




 こうして、心を通わせた紫苑とミリアンナは故郷の国を飛び出して旅に出る。


 すべてを奪われたとミリアンナを憐れむ者もいるかもしれない。


 だが、不屈の心で義母や王太子に抗ったミリアンナ。


 その眩しい魂を、確かに紫苑は見届けた。


 その旅路の先で、精霊王扮する大国の姫君や最高位精霊達と出会って大騒ぎする……そんな未来もあるかもしれない。


「此処から先は……またいつか、と言うことで」


 胡散臭い微笑みを浮かべた雷様のみぞ……知っているのかもしれない。



ここまでお読みいただき、本当にありがとうございます!

「おめでとう!」「面白かった!」と感じていただけましたら、ブックマークや評価(★★★★★)で応援していただけると、とても嬉しいです!


完結までお付き合いを頂き、心より感謝しています!

本当にありがとうございました!!

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