21世紀の円卓の騎士たち 新世界:シュールとの出会い
21世紀、2030年5月19日。
あれは6年ちょっと前のこと、彼が私を暗い路地で見つけた。過去の記憶はないけれど、まあいいか?今は大切な人と過ごす現在と未来がある。それで十分だ。
私の名前はアリスター。そう、兄が名付けてくれた。私は16歳、髪は茶色で毛先は淡い青、目は薄紫色。医者によれば、珍しい遺伝的な要素らしい。身長は162センチ。私は普通の街、そして「ブラジル」というちょっと面白い名前の国に住んでいて、今日は兄と出かける予定だ。
アリスターは日記をしまう。突然、部屋のドアが開き、誰かが入ってくる。
「おかえり、レオ。今日は遅かったね」とアリスターが心配そうに言う。
「やあ、アリスター。うん、遅くなったよ。今日は出かけられそうにないけど、明日行かない?」と、いつもの優しい口調で話す。
「働きすぎだよ!手伝うって言ってるでしょ」とアリスターが心配そうに返す。
「もう話しただろ。君は勉強に集中して。最近この街はますます危なくなってる。遅くまで働かせたくないんだ」
「私は自分のことくらいできるよ!」とアリスターが自信たっぷりに言う。
「分かってるよ。機嫌直して、明日は必ず行こう、約束だ」
レオは妹のほっぺたを軽くつまむ。
次の日の午前9時30分、目覚ましが鳴り止まない。
「なんてうるさい目覚ましだ…」とレオが眠そうに文句を言う。
「ねえ、早くしてよ、レオ!」
「ちょっと待ってよ、アリスター。先に朝ごはん食べさせて」
レオは疲れた様子でベッドから起き上がる。
街の中心を、アリスターとレオはのんびり歩いている。
「もう3ヶ月も出かけてなかったね」
アリスターは日曜の静かな街並みを眺める。
「見てごらん、誰もこの通りを歩こうとしない。国の状態も良くないし、治安も悪い」
「そうだね、帰ろう。いつもこんな話ばかりしてごめんね」
角から2人の男が現れる。
「おい、お前ら!これは強盗だ!逃げずに物を全部出せ!」
男の一人がナイフを取り出し、脅してくる。
「アリスター、今すぐ逃げろ!」とレオが叫ぶ。
「あなたを一人にしていけない!」アリスターはレオにしがみつく。
「早く行け、アリスター!」
「くたばれ!クソ黙れよ!」と男の一人が怒鳴る。
男がナイフで突進し、アリスターがレオを抱きしめる。
すべてが「フラッシュ」のようだった。
「アリスター、ここはどこだ?何が起こったんだ?」
レオは状況が飲み込めずに困惑する。
「分からない、本当に分からない」アリスターも同じく混乱し、辺りを見回す。
2人は美しく広いホールにいる。
一人の少女が彼らの前に立っている。
黒いドレス、灰色の髪、赤い瞳をしている。
「こんにちは、変に聞こえるかもしれないけど、どうやってここに来たか分からなくて」
レオは困惑しながら話す。
少女が突然2人に向かって突進してくる。
「危ない!」アリスターが危機を察知する。
少女がアリスターの肩に触れた瞬間、再び「フラッシュ」が起こる。
「消えたのか?」ホールの女性がつぶやく。
「なんてこと…レオはどこ?」
アリスターは何も分からぬまま、薄暗い廊下にいた。
一方、大きなホールで、レオは黒い衣装と長い銀髪の男の前に立っていた。
「何が起きてるんだ?この人は誰だ?俺は争いたくない、ただ出たいだけだ」
レオは不安そうに言う。
2人の人物が走ってホールに入ってくる。
目にかかる前髪の男と、赤い毛先をしたロングカットの女性。
「死の君、大丈夫ですか?この者は誰です?」女性がレオを見て言う。
「侵入者のようだね。面白いじゃないか」と前髪の男が皮肉っぽく笑う。
「火高、今すぐ殺して!」女性が命じる。
「まったく、君は騒がしいな、サフィラ」
「この侵入者を消しましょう、よくもこの場所に現れたわね!」
サフィラが怒りをぶつけてくる。
彼女の右手に赤いネオンのエネルギーが集まる。
そのころ、廊下では――
「ここは…どこなの?」アリスターは混乱していた。
「おい、そこのお前、振り向け」
背後から声がする。
「えっ、何?」アリスターが振り返る。
「この顔…信じられない、あなたなの?」
明るい茶髪でショートカットの女性がアリスターを見つめる。
2人の目の色は同じだった。
「やっぱり、間違いないわ。サギリ、あなたよね?サギリ…間違いない!」
ホールでは、赤いネオンの火球がレオに向かって飛んでくる。
「なんだこれ…!」レオはその異様な光景に驚く。
大きな爆発が起こる。
「今の音は何!?」
アリスターは兄を心配して音のする方へ走る。
「待って、サギリ!」
女性が手を伸ばすが止められない。
ホールには濃い煙が立ち込める。
煙が晴れると、レオは何かの固い層に包まれていた。
彼は白地にブロンズ、銀、金の装飾が施された盾を装備しており、目は黄色く、体から強いエネルギーが放たれているようだった。
「どうやって私の攻撃を防いだの?この盾は…まさか…」
サフィラが驚く。
「ほぉ、これは素晴らしい。面白くなってきたな」
ヒダカが皮肉を込めて笑う。
レオは本能のままに突進し、サフィラにパンチを食らわせて柱に吹き飛ばす。
その後、雷のような速さでヒダカの横に現れ、盾で攻撃を加えた。
レオは黒衣の男、「死の君」と呼ばれる人物を見つめ、攻撃を仕掛ける。
しかし、その男は指一本で何かのエネルギーを放ち、レオを吹き飛ばした。
レオが意識を取り戻すと、アリスターに抱きしめられて泣かれていた。
「もうやめて、一人にしないで…」アリスターは涙ながらに言う。
「ごめん…」レオは疲れ切った表情で答える。
またしても「フラッシュ」が起こる――。
「くそっ、あいつにやられたか。次はもっと面白くなるぞ」
ヒダカが怒りと皮肉を込めてつぶやく。
床に倒れたサフィラは、ホールから消えていく2人の侵入者をじっと見つめていた。
「敵を甘く見ていたわね…」
死の君は冷たく前を見据え、穏やかで真剣な口調で言う。
「どうやら君の妹が我々を裏切ったようだな、前田アヤセ(Ayase Maeda)」
「死の君、私は必ずサギリに何があったのか突き止めます」
アリスターを見つけたあの女性が強く言い放つ。
――郊外の道路沿い、野原の近く。
夜の帳が下りるなか、レオはアリスターの腕の中で気を失っていた。
その時、二人の見知らぬ人物が現れる。
黒髪短髪で髭を蓄えた背の高い男と、髪を後ろで束ねた小柄な女性。
「本当に助けが必要ね、かわいそうに…」女性が同情を込めて言う。
「落ち着け、May。彼らは少し休めば大丈夫だ」男が答える。
――楕円形のテーブルに人々が集まる中、アリスターはこれまでの経緯を語っていた。
「というわけで、ロジャー教官とメイレイン教官に助けられて、ここに来たってわけ」
「わあ、本当に壮絶な話だな」
そう語るのは、テーブルにいたメンバーの一人、David Daliborだった。
「なに?壮絶?これはとんでもない話だよ!
彼女は兄と一緒に“死の要塞”に侵入して、しかも兄は死の罪に仕える最強の二人、
桐山火高(Hidaka Kiryama)とサフィラ・ブリュースターと戦ったんだよ!?
すごすぎるって!」
元気いっぱいの少女、Luna Leonorが興奮気味に叫ぶ。
「でも…それって本当にあったのかしら?」
もう一人のメンバー、Geovana Bianucciが丁寧に疑問を投げかける。
「分からないけど、たぶん本当だと思うよ。
だって、“円卓”が動いて、新しい騎士を認めたんだから。
もしかしたら、彼が最後の“円卓の騎士”かもしれない」
そう答えたのはIsabela Aquezだった。
「うわ、すごい空気だな。みんな、信じようぜ」
Carlos Henriがその場を和ませようと口を挟む。
「きっと彼、相当強いわよ」
Linh Changが同意する。
――回復室。
レオが目を覚ますと、ベッドの上に横たわり、二人の男に見つめられていた。
「やあ、俺はヴィニシウス。そしてこっちはルーカス。
君に伝えたいことが山ほどあるんだ」
「でも今はそのタイミングじゃないんじゃない?」ルーカスが口を挟む。
「なにが何だか分からない。君たちは誰?ここはどこ?妹はどこ?」
レオが疲れた顔で問いかける。
「落ち着け、友よ。全部話すから」
ヴィニシウスが安心させようと語る。
――少し後。
ヴィニシウス、ルーカス、レオの3人は、アリスターたちがいる部屋に入る。
「おっ、やっと全員集合か?」
カルロスが誰も笑わない冗談を放つ。
「レオ、目が覚めたのね!よかった、本当によかった!」
アリスターがレオを抱きしめる。
「ねえ、知ってる?ここは“アルカンジョ”っていう秘密結社なの。
何世紀にもわたって世界を守り続けてる組織よ。
そしてあなたは、かつて誓いを立てた“円卓の騎士”たちの後継者なの。
つまり、あなたは“神の騎士”なのよ!すごくない!?」
「ルナって、本当に容赦ないね」
ジョヴァーナが微笑む。
「彼、こんなに情報一気に聞かされて平気かな?」
イザベラが真面目な顔で心配する。
「私、彼女好きよ!すごくストレート!」
ルナがアリスターに笑いかける。
「全部聞いたよ、ヴィニシウスとルーカスがちゃんと説明してくれた。
でもここにはいられない。最近の出来事はあまりにも危険すぎる」
レオは深刻な顔で話す。
「ここから逃げたらダメ。戦う運命にあるんだよ、私たちは全員」
ルナが反論する。
「俺の運命は、妹を守ることだ。
ここは彼女にとって安全な場所じゃない」
「違うの!分かってない!」
ルナが説明しようとするその時――
ドアが開き、一人の女性が現れる。
背が高く、先の尖った長髪、緑の瞳を持ち、強い意志を感じさせる表情。
「ルナ、彼は出ていくべきだ。もうこれ以上、男はいらない。
とくに彼のような臆病者はね」
その女性は冷たく落ち着いた声で言う。
「どういう意味?バレンティナ、僕たちのこと嫌いなのか…」
カルロスが小声でチャンに話しかける。
「違うよ、きっと理由があるんだ」
チャンも小声で答える。
「もっと小さな声で話さないと、彼女に聞かれたら終わるよ」
ニコールがテーブルでささやく。
「聞いてよ、私はこの戦いに命を懸けるつもりなんかない。
妹の命を危険に晒すつもりもない。
これは俺たちの戦いじゃないんだ、分かるか?」
「それ、言っちゃダメだよ…」
ジョヴァーナが呟く。
「まずいわね…」
イザベラも静かに言う。
「大きな力を得ておいて、それを人々のために使おうともしない。
そんなあなたが、どうして“聖杯”に祝福された“円卓の騎士”の称号を
得られたというの?」
バレンティナは軽蔑のこもった口調で言い放つ。
「落ち着いて、バレンティナ!」
ルナがなだめようとする。
「口を挟まないで、ルナ。私は戦いたいの。
この男が本当に“騎士の力”を持っているか、試してみたいだけ」
「俺は女の子と戦わない。君を傷つけたくないんだ」
バレンティナはただ黙って睨みつける。
「これはやばいな…」
カルロスが不安そうに呟く。
「誰か止めないと…ルナ、妹さんを何とかして」
チャンがルナに向かって言う。
「彼女、私の声なんて聞かないよ…」
バレンティナがレオに歩み寄り、手招きする。
2人は広い場所へと移動する。そこはまるでアリーナのようだった。
「彼女…強そうだね。誰?」
アリスターが驚いて聞く。
「強いよ。戦闘班のリーダーで、格闘戦では最強。
今のところ“アルカンジョ”で最も強い人物の一人。
でも…かなり手強いお姉ちゃん」
ルナが少し誇らしげに答える。
「じゃあ、君の姉なんだ!すごいけど、やっぱり心配…兄さんのことが」
みんなが集まって、レオとバレンティナの戦いを見守る――。
「君が言うほど強いのか、確かめてやるよ」
ヴァレンティナは穏やかながらも鋭い眼差しで言い、戦闘用手袋をはめていく。
「いや、実は何も言っていないけどね」
レオが冷静に答える。
「君の妹はとても冷静で理性的ね、ルナ」
アリスターは感銘を受けた表情で言う。
「最近は外見を理性的に保っているけど、内側ではまるで溶岩のように燃えているわ。彼女の目がそれを物語っているのよ」
ルナが説明する。
「いいだろう、戦おう。でもその後に妹を連れて出て行く」
すると突如、ヴァレンティナが突進してきた。
レオは一連の高速パンチとキックを受け、数発耐える間もなく地面に倒される。
「本当に出て行かなくちゃいけないみたいだな。弱すぎる」
ヴァレンティナが冷たく言い放つ。
「弱いだって?女の子?一発当てただけで!一撃で俺を倒せるわけないだろ」
レオは口から血を流しながらも、立ち上がろうとする。
見物している全員が、その様子に息を飲み見守る。
ヴァレンティナはレオのシャツの裾を掴んで持ち上げ、目を見つめながら言う。
「君には私たちの責任がわかっていないのね」
再びレオは地面に叩きつけられ、ヴァレンティナはアリーナの出口へ向かって振り返る。
「本当に理解できないの?挑戦してきて、くだらないことを言っておいて、それから何の説明もせずに去っていくなんて。女ってみんな同じね」
ジョヴァーナは心配そうに顔を曇らせながら呟く。
「あんな人の前で、軽率な言葉を吐くべきじゃないわ」
「ジョヴァーナ、彼を責められないよ。あれだけの情報を一気に受け取って…」
イザベラがフォローする。
ヴァレンティナの体からエネルギーが漲り始め、彼女はレオを鋭く睨みつける。
「ヴァレンティナ、もうやめて!」
ルナが叫ぶ。
「事態が深刻化しているわ。そんなにエネルギーを高める必要はない」
ジョヴァーナが落ち着いて言う。
「レオ、気をつけて!誰か止めなきゃ!」
アリスターが叫ぶ。
ヴァレンティナの攻撃は、あの時と同じ盾に阻まれた。
激突し、レオの横には黄色いエネルギーが、ヴァレンティナの横には緑色のそれが広がる。
「なんだ…これが彼の力なのか?」
ジョヴァーナが驚きの声を上げる。
「そうだ。これはランスロットの盾、“白き盾”の力だ。アヴァロンで湖の貴婦人からランスロットへ授けられたものだ」
デイヴィッドが知的に説明する。
全員は息を呑んで見つめる。ヴァレンティナの銅色の鎧で覆われた拳と、レオの盾が衝突している。
そこへ、もう一人現れる。
「あれは誰?」
アリスターが尋ねる。
「この組織でおそらく最強の人物、聖剣エクスカリバーの継承者よ。今世紀のアーサー王、スーザン・ヴィーア(Suzan Vier)ね」
ルナが答える。
「わあ、すごい…!」
「どうやらうまくやってるみたいね。ヴァレンティナ、見たでしょ?彼は本当に僕らの一員、“円卓の騎士”だってこと。そして君の盾はその証拠よ。しかし、彼が従うかどうかを決めるのは君じゃない。君も考えて、なぜこの力を得たのか。人々を助けるために使うのか、それとも去るのか?君が今いる世界は元の世界とは平行している。では、どこに属するのが一番自然か――同じ者たちの間じゃないか?」
スーザナが毅然と言い放つ。
「少しだけ呼吸したい」
レオは疲れた声で、盾が消えていくのに気づく。
「いいよ、今それをするべきだわ」
スーザナは理解ある声で返す。
全員が競技場に走り、ヴァレンティナは無言で立ち去る。
ルナはジョヴァーナと共に姉を追いかける。
「またね、アリスター」
ルナが手を振る。
「え?またね、ルナ」
アリスターは優しく返す。
「私も行くね、みんな。誰か、彼の面倒を見て」
スーザナが去りながら告げる。
「彼女は誰だったんだ?」
レオが呟く。
「僕の未来の妻だよ」
カルロスが確信を込めて答える。
「おめでとう…強そうだな」
「うん、そうだ」
カルロスは誇らしげに答える。
ニコールがカルロスの耳をつつきながら呆れるように言う。
「バカ、そんな嘘つかないでよ」
「でもいつか本当になるよ」
カルロスは自信に満ちて微笑む。
皆笑い声を上げる。
――後の時間、アルカンジョのどこかで、レオとアリスターは仲間から説明を受ける。
「君はここ、5号寮にいるよ」
ヴィニシウスが説明する。
「兄と一緒じゃないの?」
「いや、男子寮は女子寮とは別だからね」
「わかった、アリスターを案内するよ」
イザベラが申し出る。
「落ち込まないで、友よ。昼間中一緒にいられるし、寝る時間だけ別になるんだ。見て、君は5号室、俺は6号室、隣だってラッキーだよ」
カルロスが励まそうと笑顔を向ける。
「そう見えるね」
レオは普通の口調で答える。
「男って子どもみたいね。おやすみなさい」
イザベラが軽く茶化す。
「本当に寝た方がいいわ。長い一日だったし、特に君にとってはね」
チャンが穏やかに言う。
「じゃあおやすみ、みんな。レオ、今日はよくやったね」
ルーカスが笑顔を浮かべ、部屋を去る。
午後10時39分、皆それぞれの部屋にいるようだった。
レオは6号室のドアをノックし、「カルロス」と囁き続ける。
やがてドアが開き、カルロスがあくびしながら「どうしたの?」と聞く。
「ねえ、話を聞いてくれる?お願いだよ…」
レオは苦しげに言う。
「いいよ、どうした?」
カルロスは快く迎える。
「カルロス…なにが起きているのか自分でもわからない。普通の生活をしていたのに、突然ここでは“力と責任”を持つことになって…俺、すごく混乱してる」
「君にはみんなそれぞれの物語があるんだ。問題は、僕らがもっと大きな善のために選ばれた存在だってこと。感じたことない?胸の奥に…何かを成し遂げたいという衝動を?レオ、ここでは僕たちは存在しなくても、神にとっては、この世界を守る天使なんだよ」
「でもなんで俺が?なんで俺なんだ?」
「それは君自身が見つけ出すことだ」
カルロスは微笑む。
「ルナや他の人たちが、俺を“騎士”だって言うけど…それってどういう意味なんだ?」
「うん、説明するよ。何世紀も前に、“円卓の騎士”は王アーサーの命令で世界を守るために作られたんだ。闇の時代が世界を覆っていたからね。
その使命の中で、騎士たちは力を求めて未知の地を旅し、謎を解き、自分自身と向き合った。
名誉の掟と共に守るべきもの、それが見つかった“聖杯”だった。騎士たちはそれを力と統一の鍵としたんだ。
何年もかけて、聖杯の力は彼らの武器や体に封印された。各々がその“結束の印”を守る使命を背負っていたのさ」
「アーサー王の偉大な剣、エクスカリバーは“知恵”を封じ込め、私たちの美しいリーダー、スーザンが継承した」
「ランスロットの盾、“白き盾”は“愛”を封じ込めて、君が継承者だ」
「レオナルド・アヴリス…」
レオが言葉を補足する。
「風の元素を操るパーシヴァル・ガール人、武器を好まなかったから包容力はその“風”に封じられた。ルーカス・シモンズが継承者だ」
「イヴァンの獅子は“勇気”を封じた。ヴァレンティナ・レオノールが継いでいるよ」
カルロスが冗談まじりに言う。
「ゴーヴァンのアスカロンの槍は“決意”を封じて、ヴァレンティナの妹、ルナ・レオノールが継承者だ」
「ガラハッドの“希望”は君の妹が受け継いでいる。伝説によると、それはかつて誰も継承したことがないものだった」
「さらに続いて…ルーイ・ジングウ棒、コルド王の猿王の杖。“幸福”を封じて、私、カルロス・アンリが継承している」
「“再生”の力はジンガランの“優しさ”を封じて、ジオヴァーナが継いだ」
「静電気的“正義”はブールズが封じ、それをヴィニシウス・マシャードが受け継いだ。あの男の体はまさにエネルギー発生器だ」
「オラスの眼、レオ・デ・グランスは“平和”を封じ、ダヴィッド・ダリボルが継ぎ受けている」
「ベディヴィアの“旅路の笏”は“赦し”を封じて、ニコール・サイモンが継承。笏には元素の力が宿るとも言われる」
「コンスタンティノの“夢の鍵”は“夢”そのものを封じ、『夢の騎士』リン・チャンが受け継いでいる」
「すごい…これ、本当に現実なの?今まで神話だと思ってた」
レオは驚きを隠せない。
「もちろんリアルだよ。君自身が12人の伝説の騎士の力を持っている。実際、君は特別な騎士だ。ランスロットの盾は、本当にすごいんだ」
カルロスが熱狂的に語る。
「特別ってどういうこと?」
「うん、“特別”だ。伝説によると、ランスロットの盾もエクスカリバーも、同じ伝説の地、アヴァロンから来たものらしい」
「だからこそ君が必要なんだ。力を貸してほしい。実は最近アルカンジョ内部で事態が深刻になっている。“円卓”が発足して以来、初めて全12騎士が集結したんだ。これは第一世代から第五世代が揃った初めての機会なんだ」
カルロスは深刻な表情で語った。
「待って…さっき妹の話が出たけど。どうして彼女が騎士なの?」
カルロスが思い出す、アリスターが騎士と認定された経緯。
「君の妹?すごく面白いよ。実は彼女、ある“危険な席”に座ってしまってね。その席にはガラハッドの継承者だけが座れるとされていたんだ。それで私たちは、彼女が今世紀最も名誉ある戦士だと確信した」
「待って…座っただけでそれが証明されるの?誰でも座れる場所じゃないの?」
「いや、実際そうじゃないんだ。伝説では、ガラハッドの継承者でない者がその席に座ると、死ぬらしい」
「なんて危険なこと…!」
「大丈夫、ただの伝説だ。実際に起きるのは、その席が消えて、彼女が尻もちをつくくらいだけど。それで誰もそこに座らないんだ。とにかく、12騎士が集まったってことは、何かが起ころうとしているってことさ」
カルロスが力強く語る。
「何が起こるって?」
「まだはっきりはわからない。ただ、悪の勢力が急速に近づいている」
レオは深いため息をつく。
「でも大丈夫。僕たちは騎士だ。この世界を守るんだ!」
「怖くない?みんな平気で受け入れてるの?」
「これが僕たちの運命だし、誇りでもある。運命を受け入れ、理解すれば、すべてが楽になるんだ」
レオはカルロスの言葉に驚き、感銘を受けている。
彼が一番「おちゃらけてるように見えた」存在だったのに。
「でも教えてくれ、どうやって君たちはここへたどり着いた?」
「疑問を解くと…僕は5年前にアルカンジョに来たんだ。ここで僕には目的があり、素晴らしい仲間ができた」
「他のメンバーもだね。ルナとヴァレンティナはここで育ったみたいだ。彼女たちは騎士の家系出身かも。ニコールとチャンはこの場所で親友になった。6年前に来たんだ。チャンは中国の修行僧、ニコールはフランスの留学生だった。デイヴィッドはチェコ出身で知性派。イザベラはイギリス、ロンドンから来て…3年ちょっと経つ。とても強い子だよ。ヴィニシウスはスペインのバレンシア、ルーカスはギリシャのアテネ出身。そして君以外は、皆ここに来て2年だ。ジオヴァーナはイタリア、シエナ出身で、人を思いやる性格でヴァレンティナの親友。ここに7年いる。スーザナはというと…正直わからないけど、たぶんこの地で育ったんじゃないかな。登場は少ないけど、君と同じくブラジル人だ。そして僕はドイツ、ベルリン出身。これが僕ら21世紀の騎士たちだ」
「信じられない…君たちの家族は?」
「ほとんどいなかったよ。いたとしても理想とはほど遠かった」
カルロスは微笑む。
「でもこの場所を創設したのは誰?」
「ルイジムって人だ。みんなには“ライフ卿”と呼ばれるのが好きみたい。何世紀も前に、先代たちと一緒にこの場所を作った人物だ」
「ライフ卿って?」
「古代アーサー王伝説においてマーリンと呼ばれていた人物らしい」
「え?1000歳くらい?」
レオは半信半疑で言う。
「それ以上かもしれない。でも彼はほとんど姿を現さない。アルカンジョの教官たちと王位継承者スーザンだけが、聖なる部屋で彼を見ることができるんだ」
「そう…ありがとう、カルロス。僕はそろそろ寝るね。たくさんの質問してごめんね」
「気にしないよ。騎士から騎士へだ」
カルロスが微笑む。
レオは深く感謝している表情を浮かべた。
序文
この作品は、私の夢の一部として大切に書き直したものです。
その夢はずっと昔に始まり、長い間しまい込まれていましたが、今こうしてページの中で再び命を吹き込まれました。
漫画から脚本へ、そして脚本から小説へと形を変えていった物語です。
本作は、東洋のスタジオによるフィクション芸術への私の情熱、
高校時代の友人たち、
そして、意識ある自分自身への献身として捧げます。
古き友人たち、仲間たち、知人たち、そしてそれぞれのキャラクターたちへの敬意を込めて。
スーザン – Suzana
イザベラ – Isabela
ヴィニシウス – Vinícios P.M
ルーカス – Lucas .S.S
ダヴィ – Renan F
ペドロ – Pedro V
ロジャー – Roger N
カルロス – Carlos G
フジモト – Gustavo D
また、昔描いたイラストもそのまま残しています。