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アーツ・ホルダー  作者: 字理 四宵 
第四章 SSL
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SSL -5

言われたとおりに三度笛を吹くと、思っていたよりずっと大きな音が町中に鳴り響いた。群衆も、僕たちに気が付いたようだ。まず変化があったのが、喧嘩をしている当人たちだった。


「今のは・・・」

「SSLか?」


強面の二人がそろって手を止めて僕を見る。すかさず、ディランさんが一歩前に出る。


「ほらほら、喧嘩はそこまでだ。これ以上手間がかかるなら、連行することになるぞ」

「ぐ・・」

「仕方ねぇか・・・」

「ほら、立ち上がって握手しろ」

「チッ」


渋々ながらも、二人の男が握手を取り交わそうとした、その時。


「レイル君んんん」


ザクッ

黒い直線が地面に突き刺さり、和解に差し出した双方の手を、一本の槍が隔てる。


「大丈夫だった!?」


頭上から声が聞こえたと思ったら、ララベルさんだった。片手で槍につかまったまま、足は宙に浮いたような状態で体勢を保持している。驚いた周辺の様子を意に介することなく、僕の方を見ている。

僕は空を見上げた。ララベルさんは、屋根の上を走ってここまできて、屋根から飛び降りて槍を地面に突き立てたのか。ものすごい行動力だ。


「任務が始まって時間も大して経ってないのに、レイル君の担当するところから笛が聞こえたから、びっくりしたよ!」


明らかに周囲の人間の方が度肝を抜かれているのだが、言わないでおいた。


「ララベル、気合い入りすぎだろ・・・」


ディランさんが、半ば呆れたようにつぶやく。


「今回のは、ちょっとした練習みたいなもんだ。通常の三回笛だったし、こんなに急いで来なくても・・・」

「何言ってるの。何かあってからじゃ遅いでしょ!」

「そのために、俺がペアで組んでいるんだろ」


ディランさんと言い合っている間も、ララベルさんは片手で槍につかまったまま微動だにしない。自然な様子で、地面に刺さった槍につかまったまま足を浮かせている。取っ組み合いの喧嘩をしていた二人は、握手の対象が突如として槍になったのを見て、何か超常のものを見た気分になったのだろうか、こそこそと退散しようとした。


「そこの二人」


ララベルさんは視線を合わせないで、男二人を呼び止める。


「あっ、はい!」

「レイル君の勤務中に何か問題を起こしたら・・・」


そういって、ララベルさんは、槍を短く持った。


「こうなるわよ」


高速で槍を操ると、やじうまの持っているバスケットから葡萄の粒を二つ、空中に浮かせた。皆の視線が、頭上の葡萄に集まる。

腰を低く落とし、頭上の目測を取ると、一度だけ槍を走らせる。すると・・・葡萄の粒が、切っ先に並んで貫かれていた。酔っ払い二人は、それが何を意味するのかを即座に悟ったようで、もつれた足で逃げ出していった。


「ふん」


つまらなそうな顔で槍から葡萄を払うと、地面に落ちた葡萄を柄の部分でつぶす。群衆から、ひっという声が上がる。


「過保護すぎだろ・・・」


ディランさんが、つぶやく。僕も、そう思う。

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