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第六話 暴かれる真実(1)

      第六話 暴かれた真実

      1 新たな脅威


 1人の男がタンカーの甲板へと助け上げられた。ただし、その顔には紛れもなく仮面がつけられていたのも事実だ。それは悲惨な事故の結末として受け入れ難いことかもしれないが……

 そのうえ次に、意外な言葉さえも耳にする。強面こわもての船員が話しかけてきたのだ。

「ボス、社長が呼んでます」と。

――何! まさか、このタンカーは?――しかし仮面男は、何の疑問も抱かず、船員の後についていくだけだった。

 船内へ入り、鉄柵の通路を5階ほど下って辿り着いた所は、だだっ広いフロアのある船室だ。ここで案内人の船員は去った。が、代わって奥の方で後ろ向きに立っている男の姿を目にする。その男は、全面ガラス張りの壁を通して、ほぼ上下に吹き抜けた船の内部を見渡していた。たぶんその目には、タンカーの見事に広げられた中心部の空間で、多くのヘルメットを被った作業員や白衣姿の人々が忙しく働いている、まるで鉄工所と見紛う施設を映し出していたに違いない。

 そして、そんな光景をにんまりとした顔で眺めていた男が、背後の人影に気づいた様子で徐に振り向いた。

 その面構えは、やはり金光だ!

「大丈夫か? 厳鬼げんき」と即座に声をかけてきた。

「はいっ、どうにかぅ」それに対して仮面男は、決死の海から帰還したことを主張するため、少しむせぶ声で答える。

「ボイスチェンジャーが海水で壊れたか……。しかし、あのあずまの奴に、チクショウめ! ミサイルを落とされるとはな。それで、東はどうなった?」

「さあぁ、俺も必死だったんでっ」

「ううっ、まだ生きているかも知れんな。念入りに海を探させるか。今さらジタバタしても仕方ないが、どうせわしが生きていることもばれているかもしれんしな。あの時、わしらがトラックの運転席の下に作っていた隠し扉から逃げ出して、荷台のアルミコンテナ内に据えつけていた潜水艇に乗り移り、難を逃れたことまでは分からんじゃろうが」と金光は言った後、少し間を開けてから、哀愁とも取れる表情を浮かべて核心的な事柄すらも話し出した。

「それに、わしは本国に戻れと言う指令も出ているのでな。金光権郎と名乗り、早30年。潮時ということか」

「…………」その言葉を聞いても、仮面男はただ無言で返すのみ。

 なおも金光の方は、

「厳鬼、お前はどうする。日本人のお前は我が国に忠義を示す必要はないからな。ここからは、小さいながらも理想の国家を目指している、わしら共産原理主義国の仕事だ」と話を続けつつ、何やら怪しげなボードのスイッチも押した。

 すると、目の前に広がる船の内部空間の、数十メートル奥にある巨大扉が開くと同時に、「見ろ、あれを!」と金光が叫んだ途端、予想もしない物体が、現れでたではないか。

――何と、弾道ミサイルだ!――

 新たな弾道弾が、天に向かってそびえ立っていた。

「どうだ、予備のミサイルがあるとは、奴らも気づかないだろうて」

 それでも、仮面男は全く押し黙り声を出さない。

「わしは、最初からミサイルを永田町に直接落とせと言ったんだが、上の者が株価急落や経済危機になる云々言いくさって、許可を出さん。あいつらは無傷の日本を手に入れたいんだろうが、わしの考えじゃ、カジノなんぞで市場を牛耳ることから進めるという、そんな悠長な話ではらちが明かん。いつになったら日本の領土を植民地にできようか。そうだろう? 厳鬼」

 仮面男は、唯々金光の言葉をじっと聞いているだけだった。

「だがな、1機潰されてようやく尻に火がついたみたいだ。計画変更の通達が入ったぞ。これで国家中枢への攻撃……」と次いで金光が言った、その時! 新たな異変が起こった。突然、ミサイルとは逆側のタンカー後方から、爆音と銃声が聞こえてきたのだ! そのため、すぐに後ろを見返したところ……ガラスの壁を通して1人の強者が目に入った。

――桃夏だ!――浅黒い迷彩服に身を包んだ彼女が、いつの間にか忍び込み、子分相手に大立ち回りを演じていた。どうやらあの波止場から追跡してきたという訳か。

 これには、金光も驚きをあらわにした。

「あの女、また嗅ぎつけたか! ええい、東以上に厄介な奴め」と憎しみを込めたような歪んだ形相を見せて叫んだ。そして、「お前はここにいろ、ミサイルを発射させるんだ。いいか、絶対にわしらの後を追って戦闘に加わろうと考えるな。それより爆破目標地の再プログラムを指示して首都中心部にミサイルを落とすんだ。我が国の海軍歩兵の準備も整っているからな。混乱に乗じれば、すぐにでも日本を制圧できるという話だ。だから、厳鬼、頼んだぞ」と仮面男にまくし立てて、即座に数名の部下を連れて出て行った。

 男の方は一人残された。フロアの中央で佇んでいる。その隅には、コンピューター機器も据え付けられているのが見て取れた。すぐに技術者が現れ、作業の準備に執りかかっていた。



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