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第六話 暴かれた真実(2)

〈ぎやーうぉー〉桃夏の強拳が飛び、回し蹴りが炸裂し、後ろ蹴りが決まる。一気に数人を蹴散らしていた。次に――銃声音!――を鳴らし、何発もの弾丸を発射させ、物陰に潜む男たちの手足を撃ち抜く。さらに走り来る敵に手榴弾を見舞って、大爆音を響き渡らせた。

 恐ろしいほどのバトルソルジャーだ。一瞬で桃夏の回りは、呻く男たちで満たされた。

「金光、どこだ!」続いて桃夏は、鬼気迫る顔で叫んだ。

 が、その時――1発の銃声がした!?――どこからか彼女に向かって、弾が撃ち込まれたのだ!

――うっ、危ない!――桃夏は反射的に身を伏せた。そのお陰で……何とか、弾を回避する。

 しかし危機一髪だった。これほどの狙い撃ちをされるとは想定外のこと。ましてや彼女ほどの戦士を怯ませたのだから、近辺からでなく長距離の狙撃に違いない。そう思いつつ、彼女は弾の軌跡を見極め、すぐに細い鉄骨の柱に身を隠した。この時ばかりは息を殺して様子を窺う。

 すると、どこからともなく声が聞こえてきた。 

「動くな、今度は外さんぞ」と。

 ただちに彼女は、声のする方角へ目をやった。

 遥か頭上の、鋼鉄製の足場を格子状に組んだ渡り橋に、金光の姿を認める。しかも、その数メートル横には狙撃手までも引き連れ、桃夏にもう一度弾丸を見舞おうとしていた!

「銃を捨てろ」なおも金光が言った。

 その言葉に、彼女の方も拳銃で答えを返そうと思ったが……命中させるのに距離があり過ぎた。それに、奴らは真上に位置していたため、彼女の姿が丸見え、相手の高性能ライフルの方に分がある。となれば、仕方ない、反撃は無理だと判断し素直に銃を足元に投げた。

 金光はそれを見るなり、「ど、どうやってわしの居場所が分かった?」とすぐさま奴にとっては、貴重であろう情報を訊いてきた。簡単にアジトが割れて腑に落ちなかったみたいだ。

 それには、「お前の潜伏場所ぐらい、裏社会をたどればいくらでも分かるわ」と桃夏が吐き捨てる。

「むっ、どうせ金だな。金で情報を買いやがって!」

 どうやらじゃの道は蛇、奴の動向も、知らぬ間に噂となって闇の世界で広がっているということか。奴にすれば、裏を知り尽くしているにも拘らず、己の身に火の粉が降りかかろうとは思いも寄らなかっただろう。

「他に誰が、わしの居所を知っている?」そのうえ、まだ知るべきことがあるらしく、しつこく詰め寄ってきた。

「さて、どうかな? そうそう、警察には知らせてきたわ」と桃夏は揶揄やゆして答えた。

 そんな中、唐突に1人の子分が、金光に近づき耳元で囁く。それで状況が少し飲めたようだ。

「まったく、馬鹿な奴め。1人で乗りこんで来たみたいだな」

 確かに……その通りだ。残念ながら彼女は単独行動だった。ばれてしまえばしょうがない。

「サツが知ってるだと、はったりもいい加減にしろ。……それにしても、お前だけでこのわしをれると思ったか?」と金光は、安心しきった様子で桃夏をいましめた。

 なるほど、奴の言うように彼女の戦法は無茶だったかもしれない。誰の援護もなく単身で攻めに入ってはみたものの、結局スナイパーに狙撃される寸前となってしまったのだから……

 とはいえ、彼女に焦りはなかった。何故なら、

「ふふふ、それはそうねえ。1人で来るなんて、本当に無謀……」と言うが早いか、腰のホルダーからある小さな機器を取り出し、「だとすれば、私なら策を講じるわね。例えばこんな物を!」と奴らの目の前に、その物体を突き付けた。つまり桃夏の方も、当然奥の手を隠し持っていた訳だ!

 するとその途端、金光は不審な顔を見せる。

「それは……何だ?」と荒げた声で訊いてきた。察するところ、奴もその装置が、本当に危険な物だと感じたようだ。

 それなら答えてやろう。桃夏は悪党の動揺を気にも留めず、高らかに警告を発していた。

「よーく聞け、この装置のスイッチを押せば、船の機関部に設置したC4爆弾が噴き飛ぶぞ! それで船は沈没だ。お前ら全員、魚の餌になってもらうわ」いかにも、彼女はいざと言う時のために爆薬を仕掛けていたのだ!

「何だと! 止めろー! きさまー、せっかくの計画が」流石にその言葉を聞いては、奴も驚きうろたえるしかないと見える。そして、同じくスナイパーも慌てふためいて、次の指示を仰ごうというのか、金光の顔色を窺っている様子だったが、金光の方は狙撃を諦めたみたいで、手を振り静止の合図を示した。と言うのも、桃夏の指が既に装置のボタンにかかっていたため、弾が当たった拍子にスイッチが入る可能性が大きいと考えたに相違ない。やはり多大なリスクを無謀に犯すほど愚かではないのだろう。

 これで完全に主導権を奪われ、対応に苦慮する立場となった金光。

 対する桃夏の方は、そんなやからに容赦など微塵も感じていない、疾うに仕業を決意していた。

「では、金光さん、準備はよろしいですか」そう言うと、いきなり起爆装置を掲げ――そこに聞こえる「止めろー! 止めてくれ」とやかましく叫ぶ奴の声――その雑音を無視したうえで、彼女は否応なしにボタンを押した?……

――鈍い打撃音が鳴った!?――

 否、ところが桃夏は、何とか堪えた! 辛うじて踏み止まる。その故は、鈍い音を耳にした直後、突然展開された光景にスイッチを押すのも忘れるぐらい唖然として見入ってしまったせいだ。

 彼女の目の前で起きた一瞬の出来事とは……何と! 電光石火のごとく現れたかと思ったら、狙撃手を殴り倒すとともにライフルを奪い取り、金光に銃口を突きつけた、ある人物の出現だった!

 しかも、その男の顔には、仮面がある?

 まさしく登場してきたのは――厳鬼げんきだ!



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