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第4話 魔王誕生

森を吹き抜ける風が黄金の髪を揺らす。


馬のような魔物に騎乗するその少女の出立は

どこか気品すら感じた。


尖った耳。

透き通るような翡翠色の瞳。


エルフの少女ーーステラ。


「そろそろですか。」

「”神託”によればプリムスの村に”彼のお方”が。」


緊張と好奇心、高鳴る思いを胸に

自然と足を早める。


森をかけていたその時だった。


風に乗って異臭が鼻をついた。

焦げついた匂いと鉄の混じった匂い。


嫌な予感がした。

急いで馬を走らせる。


そして。


目の前の光景に息を呑んだ。


「そんな...。」


そこには村があった。

正確には、村だったものが。


何度も見た光景。

焼け焦げた家屋に血塗られた地面。


ステラは静かに目を伏せる。


「ごめんなさい。」


小さくそう呟く。


守れなかった。


また。


幾度も奪われ続ける終わりのない怒りと悲しみ。

そんな思いが胸を過る。


「...あれ?」


だが。


今回は何か違う。

村を見渡してもあるはずのものがなかった。


疑問を残しつつ村の中央に歩みを続ける。


「...っ!」


そこにはいくつもの土盛りが並んでいた。


墓だ。


即席ではあるが丁寧に作られている。


「誰かが...埋葬した?」

「でもいったい誰が...。」


死者を弔ったものがいる。

でも襲撃者ではないはず。


ーー生き残りが。

ーーいや、それとも...。


その時だった。


ゾワァ。


背筋を冷たいものが駆け抜けた。


「っ!?」


顔を上げる。


そう遠くない森の向こう。

空気そのものが震えている気がした。


魔力。


それも尋常ではないほどの。


「まさか...!」


ステラは馬を走らせた。

そして風を纏うように森をかける。


その異常な魔力の元へ。


♦︎


「いったい...何が起こったっていうんだ...。」


カニスと隣に立つ副官のスィミアは唖然と立ち尽くしていた。


つい先ほどまで部下たちとエルフ狩りをしていたはずだ。

だが、その部下たちは今は首と胴が分かれて地面に転がっている。


ーーあのガキは...いったい何をした?


そこには異様な青年が立っていた。


肩にかかるほどの白髪。

血塗られたような真紅の瞳。

手には漆黒の長剣。


そして。


空間を歪ませるほどの尋常ではない魔力。


「人族...なんすかね。」


「いや、あれは...。」


見た目こそ人族の特徴だ。


だが。


本能が否定している。


その異質な存在を、同族とは認められなかった。

それ以上に人類そのもの脅威とも感じられた。


「長年の勘が言ってやがる。」

「こいつは今ここで殺らなきゃ危険だ。」


背に背負っていた背丈ほどの大剣を抜いた。


その直後。


目の前にいたはずの"化け物"が消えた。


思考が加速する。


そして、背後に気配を感じ体勢を勢いよく後方に向ける。


「避けろスィミア!!」


背後に現れた化け物は二人を漆黒の長剣で薙ぎ払った。


「っ!!」


間一髪。


剣を盾に後方へ勢いよく飛んだおかげで攻撃の勢いを殺せた。


「スィミア!無事か!」


スィミアからの返事はなかった。


理由はすぐわかった。


化け物の足元には、上半身だけとなったスィミアが転がっていた。


「っ!!貴様!!」


剣を大きく振り上げ化け物へ切り掛かる。


何度も何度も。


だが、一向に届かない。


「ちょこまかとっ!」

「これならどうだ!」


【剣技:真空断裂斬】


そう叫ぶと見えない衝撃波が化け物に向かって放たれる。

だが、いとも容易く避けられてしまう。


後方の木々は薙ぎ倒される勢いだったがその化け物には当たらない。

幾多の戦いを経験した猛者であるカニスですら越えられぬ大きな壁。


「うぉぉぉおおお!」


渾身の一振り。


「っ!?」


だが届かない。


「っんぐぅ!?」


剣は弾き飛ばされ、

化け物の手はカニスの首元を鷲掴みにする。


「待て......。」

「俺は命令されただけだ......!」


だが、反応しない。


向けられるのは血塗られた自分が映る真紅の瞳。

その瞳には理性など残っていなかった。


『...死ね』


その時。


手からはドス黒い漆黒の炎が現れた。


ーー魔法!?

ーー魔封じは起動しているはず!

ーーいや、それ以前に人族が魔法を...!?


「うぁぁあああ!!!」


一瞬だった。


炎は瞬く間にカニスの全身に覆い尽くした。

まるで尽きることのない怒りの煉獄がカニスを包む。


そして、程なくしてカニスの体は焼け焦げ炭化した。


残された化け物はその場で立ち尽くす。


すると。


徐々に白髪が黒髪に。

瞳は真紅から青色に。

漆黒の長剣は霧のように消えていった。


そしてそこには一人の青年の姿があった。

意識がハッキリとし、辺りを見渡す。


そこには幾つもの人族の無惨な死体。


恐怖の眼をむけるエルフの村人たち。


そして、足元には炭化した大男の死体。


ーー俺がやったんだ。

ーー朧げだが覚えている。


抑え切れないほどの怒り。

赤く染まった世界。

ドス黒い炎。


そして。


全能感にも似た高揚感。

何もかもを焼き尽くせると錯覚するほどの。


どれも断片的な記憶で意識は朦朧としていた。


先ほどの襲われていたエルフの子供が目についた。


ーーあの子。そうか、助かったのか。


朦朧とする中、ゆっくりとその子供へ足を運ばせた。


だが。


エルフたちは後退する。


すぐにわかった。

恐ろしいのだろう。


あの異様な光景を見せられたんだ。

無理はない。


その時、背後から声が聞こえた。


「姫様!」


「近づいては危険です!」


振り向くと一人のエルフの少女がこちらに近寄ってきた。


「皆、恐れることはありません。」

「この方は我らエルフを人族からお救いくださったのです。」


他のエルフが恐れ身を引く中、

一歩一歩こちらへ歩み寄ってくる。


そして。


手を伸ばせば届く距離。

少女は姿勢を低くして傅いた。


「お待ちしておりました。」

「我らが魔族の王。」


『魔王様』


輝く翡翠色の瞳。

透き通るような黄金の髪。

美しいその少女から告げられた真実。


「俺が...。」

「魔...王...?」


そして。


この少女との出会いが、

やがて世界に大きな変革をもたらす物語の始まりだった。



お忙しい中お時間を割いて、本作品を見ていただきありがとうございます!


いかがだったでしょうか?


もし、いいなと思っていただけたら

ブックマークとページ下部にある☆☆☆☆☆の評価をおねがします!


作者のやる気にもつながります!

読者の方が満足できるお話を書けるように頑張って参ります!

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