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「この話は、少なくとも日本では一般に公開されているそのダンジョンのある土地を保有し、そのダンジョンの周辺に暮らしている方々全員へ提案しております」
「つまり、私以外にも話を持って行っている、と」
「はい」
胡散臭い、と思いつつ尋ねる。
「で、それで私にどのような利益が?」
「利益が出るかはあなた次第ですが、少なくとも補助金は出ます」
「投げやりですねえ」
そう言いつつ、私は考える。どうやら、この調子だとダンジョン探索そのものが下火になりそうだ。そうなれば、『氾濫』が起こる。『ジョブ』や『クラス』を持たない人しかいないこの世界でそうなれば、間違いなく人類は滅亡する。それは避けたい。となると、この提案に乗るのは『氾濫』を避ける手っ取り早い手段だ。
「……分かりました。経済産業省に確認を取ってからになりますが、やりましょう」
「ありがとうございます!」
小野田氏はほっとした様子で頭を下げた。
さて、やるか。