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寓話 人生の教訓を描いた短い物語  作者: トワイライト


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第18回(#86~#90)

#86 透明な壁


ある町に、不思議な壁があった。


その壁は透明で、


向こう側の景色を見ることができた。


しかし、


どれだけ押しても、


誰も通り抜けることはできなかった。


人々は言った。


「この壁は私たちを閉じ込めている」


「向こう側へ行くには、もっと強い力が必要だ」


そこで人々は、


壁を壊そうとした。


大きな石をぶつける。


道具を使う。


何日も何年も挑戦した。


しかし、


壁には傷一つつかなかった。


ある日、


一人の子どもが壁の前に座った。


そして、


じっと壁を眺めた。


しばらくすると、


子どもは小さな声で言った。


「この壁、本当にあるのかな?」


大人たちは笑った。


「見えているだろう」


子どもは壁に手を伸ばした。


すると、


手は何の抵抗もなく通り抜けた。


人々は驚いた。


今まで壊そうとしていたものは、


実は存在しない壁だったのだ。


ただ、


「通れない」と信じていた思い込みが、


自分たちを止めていた。


それから人々は、


何かに挑む前に、


まず本当に障害なのかを考えるようになった。


---


解釈


人は過去の経験や周りの意見によって、自分では気づかない壁を作ってしまうことがあります。


しかし、その壁は現実ではなく、自分の思い込みによって作られている場合があります。


大切なのは、困難に立ち向かう力だけでなく、本当に越えられない壁なのかを見極めることです。


この話は、「最大の障害は、時に自分の中にある思い込みである」という寓話です。



■■■■■■■■■■■■■■■■



#87 眠らない時計


ある町に、不思議な時計を作る職人がいた。


その時計は、


決して止まることがなかった。


朝も。


夜も。


誰も見ていない時も、


正確に時を刻み続けた。


町の人々は感心した。


「なんて素晴らしい時計だ」


「疲れることなく働き続けている」


職人は誇らしく思った。


しかし、


何年も経つと、


時計の針は少しずつ遅れ始めた。


職人は修理した。


さらに強い部品を入れた。


もっと長く動けるように改良した。


しかし、


時計の調子は戻らなかった。


ある日、


別の職人が時計を見て言った。


「この時計には休む時間が必要だ」


最初の職人は驚いた。


「時計が休む必要などあるのか?」


もう一人の職人は答えた。


「動き続けることだけが、良いことではない」


「休むことで、また正確に動けるようになる」


職人は初めて、


時計を止めた。


しばらく休ませた後、


再び動かしてみると、


時計は以前より正確に時を刻み始めた。


職人は気づいた。


止まることは、


失敗ではなかった。


長く動き続けるために必要な時間だったのだ。


---


解釈


人は休むことを、前進していない時間だと考えてしまうことがあります。


しかし、休息や立ち止まる時間は、成長や継続のために必要なものです。


常に動き続けることだけが努力ではありません。


この話は、「止まる時間があるからこそ、長く進み続けられる」という寓話です。



■■■■■■■■■■■■■■■■



#88 消えた地図


ある旅人が、一枚の古い地図を持っていた。


その地図には、


まだ誰も知らない場所が記されていた。


旅人はその場所を目指して、


何年も歩き続けた。


山を越え。


川を渡り。


険しい道も進んだ。


しかし、


どれだけ進んでも、


地図に書かれた場所にはたどり着けなかった。


旅人は疲れ果てた。


「この地図は間違っているのかもしれない」


そう思った。


ある日、


旅人は老人に出会った。


老人は地図を見ると、


静かに言った。


「この地図は古すぎる」


「今の道とは違っている」


旅人は驚いた。


「では、この地図は役に立たないのですか?」


老人は首を振った。


「そんなことはない」


「この地図があったから、君はここまで歩いてきた」


旅人は地図を見つめた。


確かに、


目的地は見つからなかった。


しかし、


その旅の中で多くの景色を見た。


多くの人と出会った。


知らなかった自分の強さも知った。


旅人は地図を折りたたんだ。


そして、


新しい道を自分で探し始めた。


---


解釈


人は計画や目標通りに進まないと、失敗したと感じることがあります。


しかし、途中で得た経験や成長は、目的を達成できなくても価値があります。


計画は大切ですが、状況に合わせて変化する柔軟さも必要です。


この話は、「目的地だけでなく、そこへ向かう過程にも意味がある」という寓話です。



■■■■■■■■■■■■■■■■



#89 音のない鐘


ある村に、大きな鐘があった。


その鐘は、


昔から村の中心に置かれていた。


朝を知らせる鐘。


祭りを知らせる鐘。


危険を知らせる鐘。


村人たちは、


その音を頼りに暮らしていた。


ある日、


長い年月によって鐘は古くなり、


音が出なくなった。


村人たちは言った。


「もう役に立たない」


「新しい鐘に取り替えよう」


しかし、


一人の老人だけは反対した。


「この鐘は、まだ大切な役割を持っている」


村人たちは不思議に思った。


「音が出ないのに、何の役に立つのですか?」


老人は鐘に触れながら答えた。


「この鐘は、音だけを届けていたのではない」


「ここで過ごした時間や、人々の記憶も残している」


村人たちは、


初めて鐘をゆっくり見た。


傷。


古びた表面。


長い年月の跡。


そこには、


先祖たちが聞いた音。


家族と過ごした時間。


村の歴史が刻まれていた。


村人たちは鐘を修理した。


やがて、


再び鐘の音が村に響いた。


しかし、


以前とは違った。


人々は音だけではなく、


その鐘に込められた時間も感じるようになった。


---


解釈


人は、役に立つかどうかだけで価値を判断してしまうことがあります。


しかし、物や人の価値は、機能だけで決まるものではありません。


そこに積み重なった経験や思い出にも、大きな意味があります。


この話は、「目に見える役割を失っても、存在の価値は失われない」という寓話です。



■■■■■■■■■■■■■■■■



#90 鏡のない部屋


ある王国に、不思議な部屋があった。


その部屋には、


一枚の鏡も置かれていなかった。


王は言った。


「自分の姿を確認できない部屋など、不便ではないか」


そこで王は、


部屋に大きな鏡を置くことにした。


人々は喜んだ。


毎日、


自分の服装を見る者。


髪型を気にする者。


顔の表情を確認する者。


多くの人が鏡の前に立った。


しかし、


しばらくすると不思議なことが起きた。


人々は、


鏡を見る時間ばかりが増え、


周りを見ることが少なくなった。


隣にいる人の表情。


困っている人の姿。


美しい景色。


それらに気づかなくなっていた。


ある日、


王は鏡を外した。


人々は最初、不満を言った。


しかし、


少しずつ変化が起きた。


人々は互いの顔を見るようになった。


会話が増えた。


助け合うことが増えた。


王は言った。


「自分を見ることは大切だ」


「しかし、自分ばかり見ていると、周りにある大切なものを見失うこともある」


それから王国では、


鏡を見る時間と、


周りを見る時間の両方を大切にするようになった。


---


解釈


自分自身を見つめることは、成長するために必要です。


しかし、自分のことばかり考えていると、周囲の変化や大切な人の存在を見落としてしまうことがあります。


大切なのは、自分を見る視点と、周りを見る視点のバランスです。


この話は、「自分を知ることと、他者を見ることの両方が大切である」という寓話です。


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