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レベル0の無能悪役貴族のノブレスオブリージュ~転生したらチートもなく死亡フラグしかなかったので、知識チートで全てをへし折る!~  作者: 御峰。


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第17話 水源確保作戦

 異世界の工事は凄まじい。


 レベルやスキルのおかげで個人の身体能力がすごく、中でも大工系統のスキル持ちは、すごい勢いで石を積んだり、高いところに昇ったりする。


 滑って落ちたら危ないから安全装置は絶対に必要だと思うんだけど、どうやらスキルがあればそういうのはいらないらしい。


 スキル……おそるべし! というか、俺もスキル欲しい! 魔法とか使いたいし、ザボイルみたいにドガン! って強烈な一撃とか叩き込んでみたい!


 はあ……レベル0だし、ないものねだりしても仕方がないので、俺は今日も……ひたすら資金を増やして戦力アップを図っていくのみである!


 ということで工事が始まって一か月経つ頃には、まさかの石水道橋がほぼ完成しそうになっていた。


「セバス? 肝心な水源だけど、心当たりがあるって言ってたけど、そろそろ必要じゃないか?」


 実は水路事業で一番大事なのは、絶え間なく湧き出る水源にある。


 ゲームでもどこからともなく無限に湧き出る水源は開発できたけど……実際どうするんだろうか?


「かしこまりました。では本日のお昼は水源までご案内いたします。せっかくですのでピクニックの準備をされるとよろしいかと思います」


 ピクニック……? 何か嫌な予感がする……。






 どういうことでしょう~異世界の七不思議でしょうか~。






 と冗談はさておき、セバスに連れてこられた場所は、都アデリアの北にある森の中だ。ここは先日、超巨大怪獣が現れた森でもある。通称“アデリア森”である。


 やけに護衛がいるなと思ったら、まさか森の中に入るとはな。


 やがてやってきた場所は、それはもう美しい小さな泉があった。


 そして、俺達の到着と合わせて、泉の中から全身が青い少女っぽい姿の不思議な存在が泉の中から現れた。


 泉の上に浮かぶ青色の少女……というか、精霊か。


「は、はわわ……こんなところに……人族がこんなにたくさん……」


 ん……? どこか……既視感のようなものが……?


「初めまして。隣の都を治めている領主の代理、セシルです」


「は、はいぃ……ウンディーネです……」


 やはりウンディーネだったか。でも俺が知っているウンディーネとはあまりにも違うというか、ゲームのウンディーネはみんな成体というか、ボンキュッボンだったからな。こんな少女の姿のウンディーネは見たことがない。


「実は都で水道を作ったんですが、そこに水を絶え間なく流してもらうことは可能ですか?」


「え、えっと……たぶん……できると……思います……」


 おお! ここら辺一帯の水が尽きない限り、彼女の力で水を送ってもらえれば、尽きない源泉になるよな。


「ぜひお願いしたいんですが、ウンディーネさんは何か欲しいものがあったりしますか? 人族は基本的に取引をしているので、ウンディーネさんに水を送ってもらう代わりに、何かできることが精一杯させていただきます」


「えっと……でしたら……!」


 彼女は意外にも泉から出てきて、俺に近付く――――と見せかけて、俺の隣にいたアリスの前に立った。


 ま、まさか……! 水をやる代わりにアリスを寄越せなんて!?


「そ、その……中身が……ほしいです……」


 そう言いながら彼女が指差したのは、アリスが手に持っていたバスケットだ。


 中を開いてみると、そこにはピクニックのために持ってきた紅茶の葉っぱやお菓子が入っていた。


「アリス。彼女に好きなだけお菓子をあげて」


「は、はい!」


 あ! 既視感ってこれだ!


 アリスとウンディーネが一緒にバスケットの中を覗き込んで「これが食べたいです」と「どうぞ!」言う仕草がめちゃくちゃ似てる。ていうか……姉妹って言っても信じるかもしれない。


「なあ。アリス」


「はい?」


「姉妹に精霊がいたりしないか?」


「ほえ? いませんよ……?」


 首をかしげるアリスと、一緒に聞きながらデザートのゼリーを食べているウンディーネも一緒に首を傾げた。


 やっぱ似てるよな。


「そうか。ウンディーネさんはデザートが欲しかったんだ」


「でざーと……?」


「ほら、これはご飯で、これは飲み物で、これはデザート」


「ふえぇ……よくわからないです……」


「ん~そうなるとウンディーネさんが何が食べたくて食べたくないか選ぶの難しいな……」


 ふと、頭に母の顔が過ぎった。


「あ。ウンディーネさん。ここってウンディーネさんのお家ですか?」


 彼女は首を横に振った。


 そもそも精霊に家って概念ってないか。


「じゃあ、うちの屋敷に泉を作りますので、そこで住んでみませんか? そのデザートもうちのお母様と料理長が作ってくれたものなんです。きっとウンディーネさんの気に入るデザートをいろいろ試行錯誤しながら見つけていけると思うんです」


「でも……私が泳げる場所が……」


 ほおほお。ウンディーネって泳ぐのか。


「セバス。ウンディーネさんが泳いだ水って飲めるのか?」


「可能だと思います。そもそもウンディーネ様は水の精霊。その体は水そのものです。伝承によればウンディーネ様が泳いだ後の水はきれいになるとも言われております」


「それなら大丈夫か。――――これからうちの屋敷にも水道を繋ぐから、ウンディーネさんが好きなように水道を通して行き来してくださればいいかなと思います。この泉を繋ぐのは少し難しいのでここに戻るのは難しいかもしれません。それとウンディーネさんの安全は可能な限り徹底させますが、やはり夜とか襲撃されかねないので、寝床だけはこちらで用意する場所で泊まっていただければ幸いです」


 目を大きく見開いてパチパチさせるウンディーネだが、食べる手は止めない。


 こいつ、食いしん坊かもしれないな。


 一枚の銀貨を取り出した。


「人族はこういう貨幣と呼ばれているもので食べ物と交換してるんです。ウンディーネさんが頑張って水路を維持してくだされば、それに対するお給料も支払いしますので、屋敷だけじゃなくて好きな食べ物を買って好きなだけ食べてください!」


「食べ物!」


「はい~食べ物です~。あ、貨幣が食べられませんからね」


 可愛らしい水精霊なのに、涎を垂らしている姿が若干面白い。


「どうですか? やっていただけますか?」


「やります! これすごく美味しいです!」


「それはうちの料理長の自信作ですね。せっかくだからここでピクニックをしようか」


 泉の周辺には不思議と魔獣は現れることがなく、俺達はのんびりと美味しい物を食べながら時間を過ごした。




 その日の夜。


「セバス~そういや、ウンディーネさんの好物がよくわかってたね?」


「好物でございますか?」


「あれ? あのゼリーってセバスが用意してくれたものじゃ?」


「いえ。私は何もしておりません。そもそもウンディーネ様が……食べ物に釣られるとは思いもしませんでした」


「へ……? じゃあ……どういう予定でウンディーネさんを紹介してくれたの?」


「とくにございませんでした。セシル様なら何とかするだろうと」


 おいおい。うちの優秀過ぎる執事が、まさか何も考えてなかったのかよ。


「ですが、もし最悪なケースで話を聞かないのするなら……」


「……なら?」


「……これ以上、お聞きになられますか?」


「やめとくよ! 怖いから!」


 うちの優秀過ぎる執事は、本当に優秀過ぎるな。

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