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エリミネアー世界の敵を排除するー  作者: AtoRei
序章「産まれない事が救いだった」

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第8話「終わりの先で」―邂逅―



「……それ、本物だ」


低く、呟く。

その声には、わずかな興味と――

理解が混じっていた。


だが。


次の瞬間、空気が変わる。


「……なぜ、だ」


握る力が強くなる。

首の肉が(きし)む。

骨が悲鳴を上げる。


「……なぜ、抗う」


   呼吸が潰れる。

   それでも、目だけは()らさない。


「……分からないのか」


男の顔が歪む。

怒り。

それは初めての、明確な感情だった。


「……この世界は、残酷(ざんこく)だ」


言葉が、押し(つぶ)すように落ちる。


「産まれた時点で、終わっている」


力が、さらに込められる。


   腕が動く。

   掴まれた腕を引き()がそうとする。


「苦しむだけだ」


骨が軋む音が大きくなる。


   指に力を込める。

   爪が食い込み、血が(にじ)む。


だが――動かない。

びくともしない。


「……だから」


一瞬だけ、声が柔らかくなる。


(ゆが)んだ慈悲(じひ)


「終わらせてやる」


   足が暴れる。

   蹴る。

   届かない。


   呼吸が奪われる。

   視界が滲む。


剣を見る。

まだ光が残っている。


「……そんなものに」


吐き捨てるように。


  首の形が歪む。

  手から剣が滑り落ちる。


「……だから、俺が終わらせてやる」


ぐしゃり、と音がした。


  カイルが最後に聞いた声は、ひどく優しかった。



少女は走っていた。

リィナの手を強く引きながら。


息が切れる。

肺の奥が焼けるように痛い。

視界が滲み、足元が何度も揺らぐ。


それでも、止まれない。


やがて、崩れかけた空き家が見えた。


「……ここに隠れて」


リィナを中へ押し込む。

肩を掴み、目を合わせる。


「絶対に出ないで」


「やだ……」


小さな手が服に縋りつく。


「……お願い」


その手を、無理やり振りほどく。


――行かなきゃ、間に合わなくなる。


カイルがまだ生きているうちに。



息が乱れている。

呼吸が浅い。

血の匂いが、さっきよりも濃くなっている。


胸の奥が、嫌な音を立てる。


そして――


いた。


カイルが倒れている。

不自然なほど静かに。


「……」


その奥に、怪物が立っていた。

こちらを見ている。

目が合う。


すべての毛穴が粟立つ。

身体が、動かない。


逃げなきゃいけないのに。

わかっているのに。


終わる。


そう思った、その瞬間――


閃光が走った。


空気が裂け、衝撃が遅れて押し寄せる。


「下がれ!!」


知らない声。


黒い影が割り込む。


大剣が振り下ろされ、肉が弾ける。

怪物の身体がぐらりとよろめいた。


だが、倒れない。


黒い戦闘服の女性は着地と同時に構え直す。

銀の長い髪が揺れ、マントが(ひるがえ)る。


呼吸を整えながら、間合いを測る。

視線が、男の肩へ向く。


傷が――塞がっていない。


「……お前、『戦士』だな」


怪物が、先に口を開く。

確信している声音だった。


「……まあ、いいか」


「戦士」は動けない。

深入りすれば、自分が死ぬとわかっている。


「……美味い食事もできたし、見逃してやるよ」


そう言葉を残して、【エリミネア】は闇へと姿を消した。



静寂(せいじゃく)が落ちる。


「戦士」は小さく息を吐いた。


胸の奥に溜まっていた緊張が、わずかにほどける。


「……なんとか生き残ったな」


少女を見る。


返事はない。

頷くこともできない。


少女は、何もかもを奪われた。


――違う。


「……リィナ」


かすれた声が漏れる。

すぐに身体が動いた。


「……リィナ!!」


叫び声とともに走り出す。

しかし、下半身に力が入らない。


「来い」


「戦士」はそう告げると、少女を背負う。


そして、二人は急いで空き家に向かった。



扉を押し開ける。

内部は暗く、埃が舞う。


「リィナ!!」


声を張り上げる。


床に残る足跡。

まだ新しい。


「リィナ!!」


もう一度。


返事はない。


さらに奥を探す。


いない。

そこにいるはずの小さな影は、どこにもない。


「……」


汗がどっと(あふ)れ出る。


何かあるはずだと。

何か残っているはずだと。


外へ出る。


「……リィナ」

声が虚しく風の中を通り抜けた。



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― 新着の感想 ―
カイルが最期まで見せた不屈の意志と、それすらも「慈悲」として踏みにじる怪物の対比に震えました。 新たな登場人物への安堵も束の間、リィナまでいなくなってしまうなんて……。大切なものを不器用に、けれど必死…
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