第43話 攪乱
「龍よ、お主は何故十二支になりたいと思った? 動物の大将という役割に縛られることは、わかっているだろう?」
「クク、吾輩の興が乗っただけだ」
「……そうかい。大将になる以上は、他の動物と協力し、天界の問題ごとを解決してもらうからね」
「ああ。わかっているぞ」
「では1つ頼まれてくれるか。お主が私と対等の存在だから頼めることなのだ」
「ほう、聞こうではないか?」
「今後長い時間をかけ、いずれ天界を害する者が現れる。私はその者から逃れるため、君たちに迷惑をかけてしまうかもしれない。すなわち君たちの信用を、一気に失ってしまうほどの行動を取る」
「信仰なくして神力なし。貴様は神ではなくなってしまうのではないのか?」
「……うむ。そのための『信仰の双璧』だ。お主にお願いしたいことは、いかなる状況だろうと、神の存在を、尊厳を、危ぶまないことだ」
「……理解はした。だが、吾輩が戌ほどに、貴様を思うことができるとでも?」
「できるさ。君は私と同格の、龍神なのだから……」
何だ、この光景は。今は三神モクレンと、カエルとナメクジと交戦中のはずだ。目の前で起きているはずのことと、今見えているものが一致しない。
「精霊さん、精霊さん! 何をぼうっとしてるんすか!」
「す、すみません……」
申弥さんに声をかけられてようやく、俺の見ていた光景が薄れていく。未だ降り続ける雨と、右腕に伝わる巳乃さんの冷たさが、俺の意識をハッキリと引き戻した。
「巳乃さん。体調は、大丈夫ですか?」
「君こそ大丈夫かい? 顔色が悪いけど。この場は辰くんがどうにかしてくれるから心配はいらないよ?」
顔色が悪いのは彼の方だ。雨に打たれ続けている状況で体温が下がるのは当たり前。
早く巳乃さんを校舎内に連れて行かなければ。
「あんたが言えることじゃないっすよ。ほら、さっさと室内に戻りましょう」
「わあ」
「おも……ヘビさんいつもの大きさに戻ってくださいよ」
「むり〜」
そう考えていたのは申弥さんも同じで、彼は俺から巳乃さんを引き剥がして持ち上げる。
そして俺を見下ろして、彼は笑った。それはいつものように嫌な予感を起こさせるものではない。
雨天に似つかわしくない、親が子を見守るがごとくの、微笑ましげなもののように見えた。
「精霊さん、この場をお任せしてもいいっすか?」
「……はい。巳乃さんをお願いします!」
申弥さんは辰幻さんを一瞥すると、お決まりの呪文を唱えて、巳乃さんと一緒に姿を消した。
雷と共に現れた、存在感を放つ大きな背中。申弥さんは安堵から気が抜けて笑ったのかもしれない。
そう思わせるほどに、この場で圧倒的なのは辰幻さんだった。硬直しているカエルとナメクジ。精霊のモクレンですら、その形相をさらに険しくしていた。
「元十二支……龍」
「何故貴様が実体を持っている。十干は封印されたか? それとも貴様らが十干の代理をするというわけか?」
「答える義理はない」
「ク、肯定にしか聞こえんがな。では、吾輩の実験に付き合う気はないか?」
対峙する2人の雰囲気は、辰幻さんの言葉によって様変わりする。実験、その言葉が引き金になったように、モクレンが緊張したのが俺にまで伝わった。
「夏露!」
「ヒィッ! か、蛞式呪法……粘這湿解!」
「ほう? 龍式呪法、逆鱗天下・封鱗」
ナメクジの呪いだろうか、モクレンとカエルを守るように彼から出た粘液のようなものは、辰幻さんによって吸収される。
彼の手元にある水晶が龍の形へと姿を変え、全てをその口で飲み込んだのだ。
「クク、なかなか悪くない呪いだな。数世紀研鑽すれば、十二支に匹敵するぞ」
「ヒィッ……! やはり格が違います! やばいですよ三神様!」
「……ヘビに睨まれて竦むくらいなら、龍なんて話にならないよな……」
龍は空想上の生き物。陸上最強と謳われる虎と並んで描かれた、強き生き物だ。ナメクジとカエルは彼を前に、完全に戦意喪失した。
しかしモクレンは、この状況下でも黙って腕を組み、目を瞑っていた。
ドレンは、元十二支に対抗する動物を選定することが、俺以外の精霊の使命だと言っていた。
モクレンもそうならば、彼は2匹に失望している? わからない。
俺は十二支のことを理解できないことに、焦燥を感じていた。しかし、モクレンの挙動がわからないことは、俺にとってそれ以上に精神的なダメージを与えられていたのだ。
同じ神の分身、兄弟。そのはずなのに、俺だけ敵対しなければならないのだから。
「六神ドレンといい、あなたといい、一体何なんですか。どういう意図で元十二支に集中攻撃するんですか!」
「与えられた使命のまま動いているだけだ。兄貴だってそうだろう? だから周りが見えない」
「は……」
大木が俺の方に切り倒されて、落ちてくる。避けられない、そう思った。
「五行相生、土生金」
しかし辰幻さんが一瞬で俺を引き寄せ、大木を地面から現れた鋭い鱗のようなもので切り刻む。
大木がただの木材になる頃、すでにモクレンたちの姿がなくて、俺は自分が、モクレンたちが逃げるための駒として使われていたことに気づいたのだ。
「くそ、やられた……辰幻さん、すみません。俺を庇ったせいで彼らを逃してしまって」
「逃がしてやったのだ。いずれ会うことには変わらぬからな」
本当かと疑問を言いそうになって、やめた。彼は心が読める。
「何かいいたげな顔だな?」
(心読めるのに……)
「貴様が御守りを持っている故、心は読めんぞ」
「お、御守り!? いや、でも俺、心読めるのにって思ってましたよ……」
「ク、貴様の表情が読みやすいのだ」
「うっ……」
「貴様の持つ御守りは、記憶に介入すると、防御反応を起こす。随分と優れた呪物だな。吾輩の読心さえ遮断するほどだ」
「呪物……!? 俺そんなもの持ってませんけど!? な、何のことですか!?」
「クク、それはだな……」
まずい、辰幻さんが何のことを言っているのかわからない。 それに、このままだと彼が一方的に呪物の話を始めてしまう。
「お、御守りのことは一旦おいといてください……辰幻さん、聞きたいことがあります」
「ほう? 言ってみるがいい」
「『信仰』の双璧ってなんですか……?」
呪物よりも、俺は先ほど見た辰幻さんと神様の会話の、気になる単語について聞いていた。
「……記憶を思い出したか? いかなるときも神への信仰心を忘れるなと誓わされた向かい干支だが……ふむ。そうだな。吾輩の代わりに貴様に課してやろう」
「な、何をですか……?」
「一神セレン。選抜が終わるまでに、十二支の神への信頼を取り戻して見せよ」
「信頼を……取り戻す……?」
「我が三合がうち2匹は、すでに信仰心を失っているがな」
辰の三合は子と申。なるほど、2人とも神様のことを「邪神」と呼んでいた。
「ああ……それは、本当のあなたの望み、ということですか?」
「いかようにも解釈するがよい」
「そ、そうですか……」
「吾輩は戻って実験の続きをする。一神セレン、貴様の目的は達成した。吾輩の当番は終わりでいいだろう。明日はウマのところへ向かうがよい」
「わ、わかりました。次は健午さんですね」
そうだ。今日は本来辰幻さんが当番で、代わって巳乃さんだった。巳乃さんは申弥さんがついているから大丈夫だろうけど、心配だ。
「……ん? 辰幻さん、何を……」
辰幻さんがパチッと指を鳴らすと、俺はどこかの教室にいた。当たり前のように鼬雲さんのまじないのようなことをする。
神様と同格とか言われていたし、辰幻さんって何者なんだろう。
そんなことをぼんやりと考えていると、視界に見覚えのある人物が入った。
どこから持ってきたかもわからない奇抜なまだら模様のコートを彼は羽織っていた。
「おや、おかえり精霊くん。無事でよかったよ」
「巳乃さん! 厚着してますね……体調はどうですか?」
「もう寒くはないよ。日の当たらないところはよくないけど。ね、サルくん」
巳乃さんが声をかければ、カーテンに隠れていた申弥さんが出てきた。
「あー、トラさんのように口調が変わるだけならまだしも、恒温動物の姿で変温動物の性質のままとは……せめて呪いの内容も平等にしろって話っすね」
「申弥さん……なぜそんな遠いところに」
「……締められんの嫌なんで」
彼がボソボソと言っていた最後の言葉は聞こえなかった。
しかし、確かに、寅琳さんはむしろあの関西風の話し方がいい方向に働いて、親しみやすさを感じるかもしれない。
一方の巳乃さんは、雨が降っただけで動けなくなってしまった。申弥さんの言うとおり呪いの差がある。
神様が何を考えているのか、日に日に疑問が増していくばかりだ。
「せっかくの火の五行も、自分から出すのは難しいし」
「解呪する方法はないんですか……?」
「神の呪いだからねえ。僕たちじゃ、解呪条件を見つけることは難しい。いろいろ試して、偶然解呪条件を満たすことを狙うしかないね」
辰幻さんが水晶に閉じ込められていたときが、そうだったんだろうか。
あのときは、俺が辰幻さんに食べられそうになっていたとき、空間が割れて元の次元に戻れた。
俺は元十二支担当の精霊。関係がないってこともなさそうだ。
「巳乃さん。解呪条件は、俺が関わっている可能性が高いと思います。俺と一緒に、いろんな行動を試してみましょう」
俺が彼の前に手を出すと、パアとでも効果音がつきそうなくらい彼は嬉しそうに笑った。
しかしなぜだろう、申弥さんのときと違って、身に伝わるこの嫌な予感は。
「さっきも思ったけど、君って体温高いね。神様の温かさにも似てる。雨に濡れて動けなくなってたとき、こうやって抱えてもらったら温かかったっけ」
その予感は的中する。彼は俺の腕に巻き付くつもりだったのだろう。
しかし今は人間ではない。巻き付くための長い尾は、長い手足へと変わってしまっている。
「ぐえええ、ちょっ、いっ、今はヘビの姿じゃないんですから無理ですって! し、締めないで!」
ヘビが獲物を締め殺すその力が人間になっても残っているのだろうか、ギュッと抱きしめるその腕の力は凄まじく、俺は内臓が潰されるかと思った。
「ふうん。じゃあ精霊さん、このくだらねえ呪いは何なんすかね?」
「申弥さん!? な、何をしてるんですか、いててててて!」
なぜか申弥さんがかけていたメガネを教室の窓から投げた。待て、色んなことが同時に起こりすぎている。
巳乃さんの抱擁から抜け出せるわけもなく、意識が飛びかけたところで俺はようやく解放されたのだった。
そして、もう一度申弥さんを見た時、彼の双眸はしっかり2つの枠に囲まれて存在していた。
「うえっ!? メガネが戻ってる!?」
「サルくん……君、メガネをかけていなきゃダメな呪いにかかって……んふっ」
「笑うな! あの邪神はどういう意図でこんなくだらない呪いをかけたんだ!」
(邪神……)
その言葉は、辰幻さんの願いに関わる。神様への信頼を取り戻す。どうやって。というか、何、このお願い。
十二支のメンバーに飽きたからと選抜を始める神様の信頼を、どうやって取り戻せばいいというのだ。
「いや……メガネを侮らない方がいいですよ。メガネをかけると、劇的に世界が変わりますから」
「度は入ってねえっすよ!」
「そ、そうですか……」
なんとなくメガネの利点を伝えようとしたら伊達メガネだった。本当にあの神は何がしたいんだ?
メガネザル……ってことか? いや、日本のサルといえば当たり前にニホンザルが想像される。
「サルくんの呪いは支障ないから置いておくとして。それで? 辰くんは何か言ってたかい?」
「今日で、当番は終わったことにしてほしいと……明日は健午さんのところへ行けとおっしゃってたので」
「十二支には興味がないみたいっすからね。さっさと終わりたいんでしょう。ちゃんと十二支のことについては教えてもらいました?」
「えっと……ほとんど意味がわからないですね……五志……双璧……御守り……」
当たり前のように飛び交う専門用語は、前より理解したとはいえ、まだまだ完全習得には程遠い。覚えれば覚えるほど、次から次へと新しい単語が現れる。
「よし、精霊くん。僕が教えてあげよう。師匠はきっと僕を立たせるために土台を作ってくれたんだね!」
「盲目〜」
「サルくん、呪われたいのかい?」
「用事を思い出したんで帰りまーす」
「あ、申弥さん……消えちゃった……」
本当に帰っちゃった。もはや鼬雲さんのまじないは、彼のまじないなのではないかと思うくらい使用頻度が高い。
やはり自分の好きな場所に行けるというのは、便利なものだ。
「じゃ、精霊くん。何が知りたい?」
なんだか、振り出しに戻ってしまったような……いや。さっきとは違うはず。
本心かはわからないけど、巳乃さんと辰幻さんの願いは聞けた。巳乃さんにかかっている呪いのこともわかった。
「巳乃さん。神様のこと、どう思っていますか?」
「神様のこと? ああ、聞きたいのは信仰の双璧かい?」
気にかかるのは辰幻さんの願い。巳乃さんが神様のことをどう思っているか。
聞いてみれば、信仰の双璧という言葉が返ってくるから、彼の察しの良さを感じた。
「辰幻さんと戌慈さんの、向かい干支ペアですよね。いかなるときも神様への信仰心を失ってはならない……とか」
「まあ正直、僕は別に双璧なんてそこまで意味のあるものじゃないと思うよ。なんせ僕たち、まともに仕事してないし」
堂々と言うことではない。ああでも、そうか。あとひとつ、双璧の名称が埋まっていなかった。
「先導、呪い、万能、和、信仰……あとひとつって、巳乃さんと亥寧さんのはずですが、どのような役割を?」
「僕は攪乱の双璧だよ」
「か、かくらん?」
「イノシシくんは天性の気質で無自覚に場を攪乱する。僕は意図的に、正しい時にかき乱す」
(いやだな……)
「悪い状況を停滞させない、というのが僕たちの役目さ。ふふ……吉と出るか凶と出るかは、運次第だけど」
「な、なるほど……あ。だから巳乃さん、俺に妙な関わり方をしてたんですか?」
「いや? それは単純に君の存在が気になっただけ」
「あ、そうですか……」
違かった。俺を誘拐したり、屋上から落としたり、だいぶ妙な行動をしていたのに。亥寧さんと同様に、彼も天性の気質で攪乱するのではないかと思ってしまった。
「向かい干支は相性が悪いとも言えるんだ。何せ正反対だから。何世紀も一緒に過ごしてようやく仲が良くなってきたけど、昔は酷かったんだよ」
「そ、そうなんですか?」
「うん。例えば、会合で必ず意見が食い違う子午。何か距離感のある丑未。引っ掻き合う寅申。周りに怯える卯酉。互いに眼中にない辰戌」
巳乃さんはスラスラと昔の向かい干支の関係を話す。俺が困惑する姿を見て、どこか楽しげであった。
「ん? んん……!?」
「そして……イノシシくんの鼻で持ち上げられ弄ばれる僕さ!」
「あの……何でそうなったんですか?」
「僕が地面をニョロニョロしてるのを見て、気にかけてくれたんだろうね。そこまでは良かった。だけど僕を鼻に持ち上げたまま、彼は僕の存在を忘れ、無邪気に走り回っていたよ……」
「わ、わあ……」
容易に想像できてしまう。とはいえ、今の様子とだいぶ異なる、李卯さんと酉奈さんの、周りに怯えるとは。
「……あの、互いに周りに怯え合う卯酉って何ですか?」
「彼らは臆病だったからね。昔の十二支の仲の悪さを思い出すと、僕も怖かったからわかるなあ。ふふ、懐かしいよ」
巳乃さんは、俺の知らない昔の十二支の姿を知っている。だから何となく興味が湧いて、聞いてしまった。
「1番十二支で変わったのって、誰なんですか?」
「そうだねえ……みんな変わったけど、1番はやっぱりネズミくんかな」
返ってきた巳乃さんの答えを、意外だとは思いつつ、納得できるような気もした。
「十二支になったばかりの彼は、冷酷無比で傍若無人だったからねえ。僕も苦手だったよ。見かねた神様が罰を与えるほどだし」
「え。ば、罰?」
「そう。彼は唯一、固有のまじないを使えない。彼は十二支になってから今もずっと、解呪方法が見つけられず呪いにかけられたままなんだよ」
道理で、猫口さんと戦っていたときも、子音さんにまじないを使う様子が見受けられなかったんだ。
呪われて、今も解呪できていないという恐ろしさと、子音さんの神様への態度の理由がわかった。
「そうなると……子音さんは、神様のことは嫌いですよね……」
辰幻さんの願いは、他の十二支とは違う。選抜で1位を目指す、という願いならば、人間から人気を得るために策を立てればいい。
しかし、彼の願いは、まず神様と十二支のことを知らなければ叶えられない。やはり、重要なのは記憶だ。
「いや? そうでもないんじゃないかな。イヌくんほど信頼はしていないけど、十二支を変えるって言い出したのは何か理由があると僕も思う。ネズミくんだってそうだろう。僕たちをこき使っているし」
「そ、そうなんですか?」
「神様が無茶振りするのは今に始まったことじゃないし。どうだい? 聞きたいことは聞けたかい?」
辰幻さんは、子音さんと申弥さんは神様への信頼を失っていると言っていた。しかし、そうでもないのかもしれない。
昔から一緒であるとはいえ、完全に相手のことを理解することなどできないはず。それは人間にも言えることだから。
「あの、色々話していただいてありがとうございます。皆さん、ここまで詳しくは話していなかったので」
「どういたしまして? まあ、神様の信頼を取り戻すって言うなら、君の行動が大事だよ。君は神の分身だからね」
「そうですよね……え?」
「ああ、やっぱりそうなんだね」
あれ、なぜ巳乃さんが辰幻さんの願いを知っている? そういえば彼らの関係性も謎だ。
巳乃さんは辰幻さんのことを師匠と呼び、戌慈さんが神様に向けるような、崇拝ともとれるような感情を向けている気がする。
「俺と辰幻さんの会話、聞いていたんですか……?」
「……秘密。でもそうかあ。師匠の間違いは弟子が正さないとね?」
彼は再び、俺の手を取った。また締められるかもと一瞬思った。
しかし巳乃さんの両手が優しく俺の手を包み込んで、まるで神様に祈るように、彼はこう告げた。
「ねえセレンくん。辰、龍堂辰幻が、十二支に戻りたいと心から思うようにしてくれないかい?」
「それは……あなたの本当の願いってことですか……?」
俺の困惑が伝わっているのか、巳乃さんはくすりと笑い、あざとく首を傾げた。
「さあ? ヘビは二枚舌だからね。僕の言ったことは全て真実とは限らない。なーんて」
「……攪乱しようとしてません?」
「ふふ」
巳乃さんがミステリアスなことには変わらない。だけど、この当番で知れたことはたくさんある。
そして考えるのだ。十二支会合で元十二支が語ったのは、大半が本心じゃないのでは、ということ。
元十二支たちの当番が……ようやく折り返し地点に到達した、という事実を。




